MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

現代の経営(下)(P.F.ドラッカー)<4回目>

『現代の経営(下)』(P.F.ドラッカー)(◯)<4回目>

 後半です。後半は、マネジメントの組織構造、人と仕事のマネジメント、経営管理者であることの意味、マネジメントの責任の4部構成となっています。1954年、ドラッカー44歳の時に書かれた本書。半世紀を超える名著です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯組織の構造を選ぶ

・組織はそれ自体が目的ではなく、事業の活動と成果という2つの目的のための手段である。

・組織の分析は組織の構造から入ってはならない。事業そのものの分析から入ることが必要である。すなわち、組織の構造を検討するにあたって最初に問うべきは、我々の事業の目的は何か、何でなければならないかである。

・いかなる組織の構造が必要かを知る3つの方法

①活動分析

②意思決定分析

 意思決定を分類する4つの基準。

1)意思決定の息の長さ(時間的要因)

2)意思決定が、他の部門、他の領域、あるいは事業全体に与える影響の大きさ(影響度)

3)行動規範、倫理的価値観、社会的信念、政治的信条など、意思決定に含まれる価値的な要因の大きさ(室的要因)

4)意思決定が反復して起こるか、それとも特異ではないにしても稀にしかおこならないかである(反復度)

③関係分析

 

◯組織の構造をつくる

①組織の構造は、成果にのためのものでなければならない。

②組織の構造は、必要とされるマネジメントの階層の数を最小限にし、命令系統を最短にするものでなければならない。

③組織の構造は、明日のトップマネジメントの育成と評価を可能にするものでなければならない。

 

◯2つの組織原理

①組織の構造は可能な限り、連邦型の組織によって活動をまとめるべき。事業活動をそれぞれ自らの市場と製品を持つ独立採算的な事業ごとに組織する。

②連邦型の組織を適用できない場合に限って、機能別の組織を使うべき。

 

◯中小企業の抱える問題

・中小の企業にとって最も重要な原則は、行動のための意思決定に追われて、計画したり、考えたり、分析したりすることをおろそかにしてはならないことである。

・中小のトップマネジメントは、年に1週間は、計画や反省のための会議に時間を割く必要がある。しかも、そのような会議は社外で開き、マネジメントの上層部が全員参加することが必要。

・そして、来るべき5年間において必要とされることに焦点を合わせ、あらゆる領域について目標を設定しなければならない。それらの領域における過去1年間の成果を評価しなければならない。さらにはそれらの領域について、トップマネジメントの誰が責任を持つかを決定しなければならない。

 

◯本社スタッフの仕事

 本社スタッフの仕事は3つに限定すべきである。

現業経営管理者がサービス機能に携わる専門家に期待できることが何かを明らかにすること

現業経営管理者が選んだサービス機能の専門家を訓練すること

③調査すること

 

◯人と仕事のマネジメントにおける3つの要素

①資源としての人の特質とは何か。

 「人的資源」の「人的」という言葉を中心に据えるか「資源」という言葉を中心に据えるかによって大きく異なる。

②社会的機関としての企業が、働く人に対し要求すべきものは何か。

 働く人が、人、個人、市民として企業に対し、要求すべきものは何かを考える必要がある。

③企業が社会における富の創出機関であるとともに、働く人の生計の資の供給源でもあるという二つの現実から出てくる経済的な問題。

 2つの異質のシステムを調和させる必要がある。そこには、コストとしての賃金と所得としての賃金の対立がある。

 

◯集団と個人

・人はいかに働くか、どれだけ働くかを自ら決める。生産の量と質を決める。他の資源とは異なり、生産のプロセスに能動的に参画する。

・仕事のための組織においては、集団と個人の調和が重要な意味を持つ。個人の強み、主体性、責任、卓越性が集団全体の強みと仕事ぶりの源泉となるよう仕事を組織する必要がある。

・仕事は挑戦的でなければならない。平均的労働者のための平均的作業量を定めることほど人的資源の本性に反することはない。

 

◯働く人に対する企業の要求

①企業の目標に進んで貢献すること

 要求が大きいほど、人は正当な①日の労働さえ困難な領域において要求に応えることが可能となる。なぜならば、要求が大きければ大きいほど、大きなものを生み出すのが人の特性だからである。人がものを生み出す力は、主としてその要求の水準によって決まる。

②変化を進んで受け入れること

 変化は、彼らの安定を明確かつ目に見える形で強化するものでない限り、抵抗を受ける。そもそも人は、脆弱にして制約を受けたはかない存在。

 

◯最高の仕事のための人間組

・我々は今や一つではなく二つの原理を持つ。①機械の仕事のための原理は機械化、②人の仕事のための原理は統合化。この2つの原理のいずれもが、仕事の体系的な分析とその要素動作への分解からスタートする。次に、仕事の論理による要素動作の配列と統合がくる。

・技術の変化は、人が機械の付属物として行っていた仕事を完全に機械の仕事にする。しかし機械に任せることのできない仕事、特に新しい技術を適用し、それを支援するための仕事は、統合の原理によってのみ組織することができる。

 

◯ 統合の原理

・いくつかの原理に従うならば、仕事はより生産的となり、人の仕事としてより適切となる。

①仕事の分析と組織について科学的管理法を適用すること

②仕事そのものの改善のための最短の近道として、仕事の要素動作を改善すること

③それらの要素動作を体系的に、かつ仕事の論理に従って配列すること

・要素動作を一つの全体に統合すること

①仕事はそれぞれひとまとまりの段階として独立させること

②仕事のスピードとリズムは、仕事をしている者自身の働き方に従って決めること

③仕事はある程度の挑戦すなわち技能や判断を要する要素を含むものにすること

 

◯仕事で責任を持たせる方法

①人の正しい配置

②仕事の高い基準

③自己管理に必要な情報

④マネジメント視点を持たせる機会

 

◯企業利益への反感

・従業員の目に企業の目的が利益の追求と映る限り、自らの利益と企業の利益の間に対立を確信せざるを得ない。しかし、企業の目的が顧客の創造にあるとするならば、対立の代わりに調和がもたらされる。売上がなければそもそも仕事がないからである。

 

◯専門職が成果をあげるための5つの条件

①専門職は、あくまで専門家でなければならない。同時に事業に対し貢献しなければならない。

②専門職は、専門職としての昇進の機会を持たなければならない。

③専門職は、事業に貢献する者として、その優れた仕事や貢献について報酬面でのインセンティブを与えなければならない。

④専門職は、本当の専門家としての仕事を持たなければならない。

⑤専門職は、社内だけでなく、専門家の世界においても一流として認められなければならない。

 

◯専門管理者に特有の課題

①部分の総計を超える総体、すなわち投入された資源の総計を超えるものを生み出さなければならない。

⇨自らの資源、特に人的資源の強みを引き出して成果をあげさせるとともに、それらの資源の弱みを意味のないものにしなければならない。

⇨企業の3つの機能(事業のマネジメント、経営管理者のマネジメント、人と仕事のマネジメント)をバランスさせ調和させなければならない。

②あらゆる意思決定と行動において、当面するニーズと長期のニーズを調和させなければならない。

 

経営管理者の基本的な5つの活動

①目標を設定する

②組織する

③動機付けを行い、コミュニケーションを行う

④評価測定する

⑤部下を育成する

 

経営管理者に必要な道具

・聞き、読み、話し、書く能力、数字で表す能力

・自らの考えを他の人に理解してもらう能力とともに、他の人が求めていることを知る能力を必要とする。

 

◯問題の理解

①「決定要因」を発見すること

「何もしなければ何が起こるか」「何ができたか」

②問題解決のための必要条件を明らかにすること

③問題の解決策に制限を課すべき原則を明らかにすること。守るべき原則は何か。

⇨予め原則を明らかにしておくことは、正しい意思決定が、しばしば原則そのものの変更を要求することがあることからも必要である。何を、変えなければならないのかを検討しないならば、一方において現奥を維持しようとしつつ、かつそれを変更しようとすることにもなりかねない。原則とは、いわば、その枠内で意思決定を行うべき価値体系である。

 

◯問題の分析

・問題の分析によって問題の種類を知ることが必要。

・問題の種類を知ることによってのみ、意思決定を効果的に実行するために、誰が何を行うべきかを明らかにすることができる。

・問題の種類を知るための分類基準

①時間的要因、②影響度、③質的要因、④反復度

 

◯真摯さ

・仕事ができればできるほど、真摯さを求められる。

 

 まとめといってもどうしても文字数が増えてしまいます。半世紀を超えてもこれだけたくさんの示唆を与えてくださるドラッカーさんは偉大です。この名著シリーズ、全部で15冊あります。少なくとも一度は読んでいますが、この際全部読み返してまとめたくなる良書シリーズでもあります。

ドラッカー名著集3 現代の経営[下]

ドラッカー名著集3 現代の経営[下]

 

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