『いつでも100%の力を発揮できる心の整え方』(東篤志)(◯)
著者は、帯にもあるようにスポーツクライミングの楢崎選手、野口選手をサポートされているスポーツメンタルコーチ。ともにコーチングを学んだ同期で、都内・神奈川県内に整骨院、パーソナルトレーニングジムを6店舗経営される経営者でもあります。本書は、実力を100%発揮するための心の整え方について、実務を通して効果が高かった方法について事例やワークも交えながらまとめた一冊で、とてもわかりやすくポイントがまとまっています。こんなふうに一流選手がパフォーマンスを発揮されているのかという一流の裏側を垣間見れるのも興味深い内容となっています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯心を整えられる人
・本番で結果が出せる人、出せない人の違いは、心の状態。心を整えるための方法を知りさえすれば、誰でも「持てる力を100%出し切れる」。
・「自分のことをいろいろな角度から俯瞰して、客観的に見られるようになった。そのおかげで、本番でミスをしても、そのことにとらわれなくなって、焦りや怒りや不安といった感情が起きにくくなった。ようするに、終わった「過去」に振り回されないで、「今」に集中できるようになった」(楢崎選手)
・自分の心が強いと考えている人は2割。8割は自分は心が弱いと思っており、「どうせ自分は弱い人間だ。本番で力が出なくても仕方ない」と、質の高いパフォーマンスをすることや、自分の可能性を信じることを、なかば諦めてしまっている。
・本番前にいう言葉。「未来にも過去にも引っ張られず、今を感じよう」
・試合前や練習、練習方法を考えたりするプランニングの段階では、未来を描いてワクワクしたり、「必ず過去の最高パフォーマンスをする」という感情を出して自分を高ぶらせることも大切。「自分の機嫌を自分で取る」ことも重要。
・避けたい状況は、「心が過度に緊張する⇨筋肉が硬直する⇨体の動きが悪くなる⇨満足のいくパフォーマンスができない」
◯心を整える13のルール
①無意識の脳のクセ「意味づけ」から自由になる
⇨「まずい」「ピンチ」は意味づけただけ。そこには事実があるだけ。
②過去・結果・常識・他人にとらわれない
③アイコントロールで集中力を一瞬で高める
⇨視覚情報は83%。何か特定の対象に視線を凝らして集中力を取り戻す。
④あえて結果にフォーカスしない
⇨パフォーマンス目標は、自分のコントロールできるものに設定する。
⑤想定外を想定内に変えておく
⑥言葉の使い方を少し変えて、脳をだます
⇨否定形ではなく肯定形の言葉を使う。「ミスするな」ではなく「成功させよう」。
⑦心を整える呼吸・表情・姿勢
⇨呼吸をただ感じる。
⑧目的と目標の違いを知る
⇨目的は「的」。目標は的へたどり着くための「標」のこと。
⑨1日1回のメンタルリハーサルを習慣にする
⇨本番の舞台を鮮明にイメージする。
⑩原因をあえて探らず未来志向に徹底する
⇨自分がどうなりたいのか、どうありたいのか?
⑪焦りも不安も一瞬で消えるタイムトリップ
⇨俯瞰・客観視→どうしたいのか・どうありたいのか→現在に戻り、今どんな心で何をやるのか?
⑫失敗のとらえ方を変えると、未来が変わる
⇨失敗した自分を受け入れ、振り返りをする。気づきをもとにどうしたらいいか仮説を立て、行動へ移す。
⑬自己開示ワークで、チームの本番発揮力が変わる。
⇨チーム内でのコミュニケーションを高める。
◯自分会議でもっと本番に強くなる
・自分会議とは、その言葉が示す通り、「自分と対話」をするための会議
・「世の中には多くの悩みを抱える人がいるが、実は悩んでいる人自身がすでに自分の中にその答えを持っている」(アドラー)
・「価値観」とは人生において自分が最も大切にしている考えや想い。「ビジョン」とはこうなりたいと願う自分の姿、理想像や未来像。この価値観とビジョンを統合したものが自分軸。自分軸がはっきりして自分の本当に望むことが明確になると、それ以外の雑念や他人や環境にとらわれることがなくなる。
・自分会議の5つのワーク
①価値観出し
1)テーマを決める
2)プラス・マイナスの出来事を3つずつ書き出す
3)2)で1位のものについて、何が良かった?何が嫌だった?を深掘りする
4)気付く
5)どう行動するか考える
1)尊敬する人物を決める
2)尊敬する人の魅力や長所を書き出す
3)尊敬する理由を考え、短いフレーズで表現する
4)どうなりたいかを考える
5)どう行動するかを考える
③脳内スキャン
1)頭に浮かんでくることをアトランダムに書き出す
2)書き出した内容を俯瞰する
3)気づきを得る
4)どう行動するかを考える
④課題発掘
1)テーマを決める
2)理想の姿を書き出す
3)現状の姿を書き出す
4)理想と現状のギャップから課題を探る
5)課題解決のための行動を考える
⑤葛藤ワーク
1)対立する2つの選択肢を決める
2)メリットを5つ書き出し、点数を10点満点でつける
3)デメリットを5つ書き出し、点数を10点満点でつける
4)点数を集計する
5)気づきを得る
6)決断する
今回著者から献本いただいたのですが、お友達であることを差引いて考えても良い本でした。自分の持っている実力を100%発揮するということは、充実した人生を送るためにも重要な観点であり、毎日使えるスキルでもあります。アドラー心理学や平本式など、すでに自分が学んだことを活かしながら取り組むことができるんだという身近さも親近感が持てました。