『原始仏典 長部教典II(第3巻)』(監修:中村元)(◯)
20冊以上に渡る原始仏典シリーズの3冊目(第24〜34経)。ブッダの教えを仏典結集という形で多数の経典としてまとめられた原始仏典。本書は、長部経典という長めの経典が集められています。ひとつの経典がブッダと関わる人たちの物語になっており、その物語の中で教えが表現されており、教科書的な書物に比べて、想像以上に楽しみながら学べると感じました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯信仰の喜び(自歓喜経)
・善き徳行
①4つの念ずる事柄(四念処)
②4つの努力(四正勤)
③4つの不思議な力(四神足)
④5つの能力(五根)
⑤5つの具体的な力(五力)
⑥7つのさとり(七覚支)
⑦八種よりなるすぐれた道(八正道)
・十二処
眼と色形、耳と音声、鼻と香、舌と味、皮膚と触られるもの、心と諸々の存在
・入胎
①知覚せず母胎に入り、知覚せず母胎に止まり、知覚せず母胎から出る
②知覚しつつ母胎に入り、知覚せず母胎に止まり、知覚せず母胎から出る
③知覚しつつ母胎に入り、知覚しつつ母胎に止まり、知覚せず母胎から出る
④知覚しつつ母胎に入り、知覚しつつ母胎に止まり、知覚しつつ母胎から出る
・読心術
①外的な特徴によって読心する
②もっぱら人間たち、人間ならざる鬼霊たち、天の神々の声を聞いて読心する
③省察、考察の思惟から拡散してくる音を聞いて読心する
④精神統一した心によって、他の心を熟知し、理解する
・七聖
①2つの障りから解脱した人
②智慧に関して解脱した人
③身体に関して証得した人
④見解によって到達した人
⑤信によって解脱した人
⑥教えに随順して行う人
⑦信に随順して行う人
・七覚支
①正念
②教えを正しく選ぶ
③精進
④喜び
⑤軽やかさ
⑥心の安定
⑦心の平静(こだわりを捨てること)
・実践の進展
①実践の進展が困難で理解が遅いもの
②実践の進展が困難で理解が速いもの
③実践の進展が容易で理解が遅いもの
④実践の進展が容易で理解が速いもの
・正しい話し方
虚偽などの言葉を使わず、中傷したり、二枚舌を使わず、議論に勝とうとしないで、常に智慧を具え、正しい時に含蓄のある話をする。
◯シンガーラへの教え(善生経より)
・4つの行為の汚れ
①生き物を殺すこと
②与えられないものを取ること
③欲望に関する邪な行い
④虚言
・財を散ずる6つの門戸
①酒類など怠惰の原因に熱中すること
②時ならぬのに街路を遊歩することに熱中すること
③祭礼舞踏など見せ物の集会に熱中すること
④賭博という遊惰の原因に熱中すること
⑤悪友に熱中すること
⑥怠惰にふけること
・人を破滅に導く6つのこと
①太陽が昇った後でも寝床にあり
②他人の妻になれ近づき
③闘争にふけり
④無益のことに熱中し
⑤また悪友と交わり
⑥また非常に物惜しみし強欲なこと
・敵であって友に似たもの
①何ものでも取っていく人
②言葉だけの人
③甘言を語る人
④遊蕩の仲間
・親友(心のこもった友)
①助けてくれる友
②苦しいときにも楽しいときにも一様である友
③ためを思って話してくれる友
④同情してくれる友
ここでは長くてかけませんでしたが、この3巻にはコンテンツになりそうなおもしろい経典がいくつか見つかりました。人の寿命が8万年まで伸びて10年まで縮まる循環に関する経典、そして、1つのもの・2つのもの・3つのもの・・・10個のものまで、様々な考え方や人の行動などを分類していく経典。経典がいわゆるお経のようなものではなく、すべてが物語になり、話口調であるところがとっつきやすいと感じるポイントではないかと思います。仏教に関するイメージがどんどん変わっていきます。