1713年に刊行された家庭医学の古典書的良書。主催しているオンラインサロンの勉強会用に改めて読み直してみましたが、やはり良書。食事、運動、休養などの日常の行動に加え、「氣」に関する話も多いのが特徴です。多くの教えの中には、現代までに科学的によって別の方向性が出ているものもあるかと思います。しかしながら、それを超えて、今でも大切にされている考え方には、生きる知恵のようなものを感じ、多くの学びが得られる一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯養生の四大要
①「内欲」を少なくし
②「外邪」の侵入を防ぎ
③ 時々は「体」を動かし
④「睡眠時間」は少なくする
2.長くやりすぎないこと
・長く歩き、長く座り、長く立ち、長く横になり、長く語ってはいけない。
・長く運動し続けること、気楽にぶらぶらしていること。
◯欲を少なくする「十一少」
①食を少なくする
②飲むものを少なくする
③五味の偏りを少なくする
④色欲を少なくする
⑤言葉数を少なくする
⑥やることを少なくする
⑦怒りを少なくする
⑧憂いを少なくする
⑨悲しみを少なくする
⑩悩みを少なくする
⑪横になるのを少なくする
◯摂生の7養
①言葉を少なくして「体氣」を養うこと
⇨体氣=身体活動の根本となる気力
②色欲を戒めて「精氣」を養うこと
⇨精氣=生命の源泉である元気、精力
③食べ物の味を薄くして「血氣」を養うこと
⇨血氣=生命維持を発展させる力
④唾液を飲み込んで「臓氣」を養うこと
⇨臓氣=五臓に収まり、それぞれの経絡の活動を支えている氣
⑤怒りをこらえて「肝氣」を養うこと
⇨肝氣=自律神経、ホルモン系の調整機能、地の貯蔵、精神機能など
⑥飲食の節度を守って「胃氣」を養うこと
⇨胃氣=脾(ひ)の昇清と胃の降濁を含めた、脾胃の整理機能
⑦心配事を少なくして「少氣」を養うこと
⇨少氣=初々しく元気なエネルギーで新陳代謝が活発になる
◯氣は一箇所に停滞させない
・氣は、体全体に満遍なく行き渡らせること。怒り、悲しみ、憂、思念があると、胸の一箇所に氣が集まってきて、そこに停滞する。「七情」(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)が過度に変化して滞ってしまうと病気の原因になる。
◯心穏やかに言葉少なく
・心に波風を立てず、氣を和ませ、言葉を控えめにして、物静かに過ごす。そうすれば、自ずと徳が養われ、体も養われる。「養生の道」は、ただ一筋である。多言を弄すれば心は騒ぎ、氣が荒ぶれば徳は損なわれ、健康も損なわれる。害悪の道もまた、一筋なのである。
・言葉遣いに注意し、無用な言葉は口にせず、言葉数を少なくすること。口数が多いと、例外なく氣が減り、のぼせてしまう。元気がおびただしく損なわれる。言葉を慎むことは、徳を養うことに繋がり、体を養生する道でもある。
◯呼吸の仕方
・「いつも鼻から氣良い空気を吸い入れ、口から濁った空気を吐き出すのだ。入る量を多くし、出す量は少なくする。出すときは、口を細めに開いて少し吐くようにすること」(『千金方』)
・普段の呼吸の要領は、ゆるやかに空気を吸って、丹田まで深く入るようにする。急いでやってはいけない。
・「調息の法」というものがある。呼吸を整えて、静かにしていると、息が次第に微かで小さくなる。それを長く続けると、鼻の中の息遣いが感じられなくなる。そのとき、へその上あたりで、微かに息が往き来していることがわかる。そうやっていると、「神氣」(精神)が安定してくる。これが「氣を養う術」である。呼吸は、人の体の中にある氣が出入りする道路だ。荒々しくしてはならない。
◯心身一体の養生術
・「養生の術」は何を置いても「心法」(精神修養法)をよく謹んで実践しないと、きちんと行えない。心を静め、騒ぐことなく、怒りはこらえ、欲を少なくし、いつも楽しんで憂うることなどないようにする。それが養生の術であ理、「心を守る道」だ。
・心法を守らずして養生の術は行えない。したがって、「心を養う工夫」と「体を養う工夫」は、別々の二つの術ではなく、一つの術なのである。
◯十分食べたと感じたときは食べ過ぎ
・飲食物を目の前にすると、いっぱい食べたいという気持ちに駆られ、ついたくさん食べてしまうことに気づかないのが人の常。酒、食事、茶、湯のいずれにおいても、これぐらいはと思う分量より少ない、七、八分にし、まだ足りないと感じるあたりでやめておくことだ。食べた後で必ず腹いっぱいになったと感じるはず。食事時に充分に食べたと思うときは、食後に満腹を超えた状態になり、病気になるのである。
ここでご紹介したのは、ほんの導入部分。個別具体的な方法が満載なので、まだ読んだことがない方は、是非一度は手に取ってみて欲しい本です。特に、健康に関する最新情報を得ている方ほど、こうした昔の本を読んで、相通じるところを発見したら、そのポイントはまさに変わらぬ要点。気づき・学びもさらに高まると思います。