MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

空海の思想について(梅原猛)

空海の思想について』(梅原猛

 高野山大学のレポートの参考書籍として読みました。今回特に参考にしたのは、「即身成仏」に関するところ。死んで成仏するのではなく、生きたまま現世で成仏できることを説いたもので、真言密教の中心的な考え方です。本書は、100ページ強と短いのですが内容は濃く、基本書で背景知識を得てから読まないと要点だけでは??となってしまいそうな感じでした。わかっている人向けの書籍という感じです。私は??の方がまだ強く、基本に立ち返ろうという思いに至りました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

空海の思想形成

密教は、他の仏教が釈迦仏の教えであるとするのに対し、大毘盧舎那如来、すなわち大日如来の教えであるという。大日如来とは何か。空海はいう「大日如来法身仏である。法身仏とは、釈迦如来のように歴史的実在性をもった仏ではなく、宇宙の初めから存在している永遠不滅の仏性である」。

・釈迦の説いた仏教は衆生を化するための方便の教えであり、真実のことを言っていない。しかし、大毘盧舎那仏の説法は違う。それは、他人を顧慮していない。本当の自らの悟りの境地を言っている。この毘盧遮那仏の仏教は毘盧舎那から七人の祖師を経て、空海のもとに伝わったわけであるが、空海によれば、釈迦仏教の方は、その教えが低いばかりか、その伝統が絶えている。釈迦仏の伝統は絶え、その道統は乱れている。今正い由来を辿れることのできるのは、毘盧遮那仏の教え、密教のみである。この密教はいかに伝わったか。毘盧舎那→金剛薩埵→龍樹→龍智→金剛智→不空→恵果→空海

 

◯即身成仏

・身とは何か。身とは六大であると空海は言う。六大とは何か。六大とは地水火風空の五大に心を加えたものである。

・五大はいわば、物質的存在である。地水火風空の五つの原理で、あらゆる物質はできていると考える。しかし、物質的原理のみで、ものは存在しているのではない。物質的原理に、必ず精神的原理が加わっている。この精神的原理が、心と言われ、識と言われ、また覚と言われ、智と言われるものである。密教によれば、あらゆるものは、物質的原理、すなわち五大と、心すなわち識から成り立っている。その六つの存在、六大は互いに混じり合って、あらゆるものを構成している。

曼荼羅には、大曼荼羅、三昧耶曼荼羅、法曼荼羅、羯磨曼荼羅の四種ある。これら四種の曼荼羅はすべて同じような世界の本質を、少し角度を変えて表現したに過ぎない。世界におけるすべての存在は六大から成り立ち、すべての者はすべてのものをその内面に宿し、しかも、その世界そのものの中心に大日如来がいて、そしてそれを多くの仏菩薩が取り囲んでいるとすれば、我々は、我々自身の中にすべての世界を宿し、我々は自己の中に大日如来をはじめとして、様々な仏菩薩を引き入れることができる。

 

 即身成仏は、これだけで1冊の書籍になり、高野山大学では1講座、つまり1年かけて学ぶ内容となっています。感覚的な部分もあり、頭で理解するだけではすっと流れてしまいそうです。ひとまず、空海の世界に触れるという入門段階では外せないテーマです。

空海の思想について (講談社学術文庫)

空海の思想について (講談社学術文庫)

  • 作者:梅原 猛
  • 発売日: 1980/01/08
  • メディア: 文庫
 

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