MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

読書について(ショーペンハウアー)

『読書について』(ショーペンハウアー)(◯)

 アバタローさんのYouTubeを見て、再読しました。表現はキツイですが、主張がはっきりつ伝わってくる、やはり良書です。アバタローさんは、最近、YouTubeでよく見ている、良書解説の優れたYouTuberさんです。読書についての要点を聞いた上で読むと、めちゃくちゃ読みやすい。全体像を頭に入れた上で読むというのは、読書の効率化につながり、インプット力も増すと思います。そうすると、実践力も高まる要素になると思います。本書は、①自分の頭で考える、②著述と文体について、③読書についての3章立てですが、今回は、その中から、①自分の頭で考えるを取り上げたいと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯自分の頭で考える

・いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。なぜなら、ひとつの真実を他の真実と突き合わせて、自分が知っていることをあらゆる方面から総合的に判断してはじめて、知識を完全に自分のものにし、意のままにできるからだ。自分が知っていることなら、じっくり考えることができる。だから私たちは学ぶべきだ。だが、とことん考え抜いてはじめて真に知ることができる。

・重圧を与え続けると、バネの弾力がなくなるように、多読に走ると、精神のしなやかさが奪われる。自分の考えを持ちたくなければ、その絶対確実な方法は、一分でも空き時間ができたら、すぐさま本を手に取ることだ。これを実践すると、生まれながら凡庸で単純な多くの人間は、博識が仇となってますます精神のひらめきを失い、またあれこれ書き散らすと、ことごとく失敗する羽目になる。

・真実と生命は、もともと自分の根っこにある思想にだけ宿る。私たちが本当に完全に理解できるのは、自分の考えだけだからだ。本から読み取った他人の考えは、他人様の食べ残し、見知らぬ客人の脱ぎ捨てた古着のようなものだ。

・創造的な精神に導かれる者、すなわち自ら自発的に正しく考える者は、正しき道を見出す羅針盤を持っている。だから読書は、自分の思索の泉がこんこんと湧き出てこない場合のみ行うべき。

・さんざん苦労して、時間をかけて自分の頭で考え、総合的に判断して真理と洞察にたどり着いたのに、ある本を見たら、それが完璧な形でさらりと書かれていた。そんなこともあるかもしれない。だが自分の頭で考えて手に入れた真理と洞察には、100倍の値打ちがある。というのも、自分の頭で考えてたどり着いた心理や洞察は、私たちの思想体系全体に組み込まれ、全体を構成するのに不可欠な部分、生き生きした構成要素となり、見事に緊密に全体と結びつき、そのあらゆる原因・結果とともに理解され、私たちの嗜好方法全体の色合いや色調、特徴を帯びるからだ。

・自分で考える人は、まず自説を立てて、あとから権威筋・文献で学ぶわけだが、それは自説を強化し補強するために過ぎない。しかし博覧強記の愛書家は文献から出発し、本から拾い集めた他人の意見を用いて、全体を構成する。それは異質な素材を寄せ集めて作られた自動人形のようなものだ。

・本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。絶えず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れ込んでくる。これは、一分の隙もなく完璧な体系とまではいかなくとも理路整然たる全体像を展開させようとする。自分の頭で考える人にとって、マイナスにしかならない。なぜなら他人の考えはどれをとっても、違う精神から出発し、違う体系に属し、違う色合いを帯びているので、決して思想・知識・洞察・確信が自然に融合して一つにまとまっていくことはなく、むしろ頭の中にバベルの塔のような言葉の混乱をそっと引き起こすからだ。他人の考えがぎっしり詰め込まれた精神は、明晰な洞察力をことごとく失い、今にも全面崩壊しそうだ。

・人生を読書に費やし、本から知識を汲み取った人は、たくさんの旅行案内書を眺めて、その土地に詳しくなった人のような者だ。こうした人は雑多な情報を提供できるが、結局のところ、土地の実情についての知識はバラバラで、明確でも綿密でもない。これに対して、人生を考えることに費やした人は、その土地に実際に住んでいたことがある人のような者だ。そういう人だけがそもそも語るべきポイントを心得、関連ある事柄に通じ、真に我が家にいるように精通している。

 

 ここで紹介した「自分の頭で考える」ということと「読書について」ということは密接に関連しています。読書の目的は何か?目的をを意識するだけでも、書籍に振り回されることなく、 他人様の知識をありがたく活用させていただくことができると思います。


【15分解説】読書について|ショウペンハウエル ~世界的名著に学ぶ最高の読書術~

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