『2025年人は「買い物」をしなくなる』(望月智之)(◯)
著者は、デジタル消費トレンドの第一人者で米国・中国にも精通された方です。「買い物をしなくなる?そんなことないでしょ」って、まず思ってしまうタイトルですが、購買自体がなくなるということではなく、買い物に付随する「面倒なこと」がなくなっていくということです。買い物に行くこと、商品を選ぶこと、レジに並ぶこと、支払いを済ませること、商品を持ち帰ること、これらはどんどんなくなっていく。そういう商品者の「面倒」を取り除く方向にある購買の今と近未来を描いた作品です。「常識」と思っていることを疑い、自分の頭で未来を考えるきっかけにもなると思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯米国小売
・UBSが2019年に発表したレポートでは、ECの更なる発展により、2026までに米国内で75,000店もの小売店が閉店すると予測されている。
・リアル店舗がなくなっても「買う場所」がなくなるわけではない。むしろ「どこでも買える」時代になる。
・リアル店舗の品揃えの良さに価値はなくなる。
・新たな役割を見つけて生き残る店舗は、「体験型の店舗」。飲食店は残りやすい。
・(例)NIKE House of Innovation 000
◯AIと口コミ
・選ぶのが面倒な人たちは、AIと口コミに信頼を寄せている。
・CMに起用されるタレントによるイメージ戦略は消費者に見透かされている。実際に自分が使って良い商品を紹介しているYouTuberなどのインフルエンサーの影響が大きくなっている。
◯サブスク
・買い物プロセス(店舗への移動、決済、商品の放送、受け渡しなど)の省略から生まれたサービス。
・サブスクの存在理由の一つは、「所有するにはお金がかかるものを手頃な価格で借りられること」
・(例:音楽)Spotify、AWA(アワ)、Amazon Music Unlimited、Apple Music、Line MUSIC
・(例:その他)Netflix、Hulu(フールー)、Amazon Prime、自動車貸し出し、洋服レンタル
・メルカリもサブスク的存在。売却を前提に買っている。「買っているのに所有しない」という不思議な現象。
◯買うプロセス省略でも残る楽しみは「開封の儀」
・現在は多くのハイブランドも、「Unboxing(アンボクシング)」=「届く瞬間、箱を開ける瞬間のユーザー体験」を最も重視している。
⇨Apple製品でもここは「確かに!」と感じるところ
◯若者は「ググらない」
・デジタルネイティブ世代は、インターネットブラウザから探すのではなく、スマホのアプリから探している。
・ググってたくさん引っかかっても、情報が多すぎてわからないし、取捨が面倒臭い。
・これからはこの「ググらない世代」が購買力を持つようになる。今の10代が働き始める頃には、少なくとも買い物では「ググる」はもはや死語になっているかもしれない。
◯「棚の獲得競争」からスマホの「時間獲得競争」へ
・日経MJが年2回発表している「ヒット商品番付」を参照すると、今やメーカーが出しているヒット商品の7〜8割は、時短に関連している。
(例)Amazon Go、Bingo Box、カーブサイド・ピックアップ、ラッキン・コーヒーなど
◯あらゆるデバイスが商品棚になる
・リアル店舗の棚の一等地に商品が並んでいることよりも、オンライン上の棚の一等地に並んでいることが重要になった。この変化が企業にもたらす2つの問題。
①リアル店舗なら営業マンを多く雇い、小売店に営業することで棚を確保できたが、ネット上ではECモールの支配する AIで棚は動いていて、お金をかけても自由にコントロールできない。
②デジタル上の棚で、自社の商品が一等地にどれくらい並んでいるかを可視化できないこと。
ここ数年でいえば、サブスクの流行りが印象的です。私もいくつか利用していますが、購買頻度の高いものについては、これは本当に便利。お金を支払っている感覚が薄まっていくという「行動経済学」「心理学」の面に気を付けておけば、問題ないと思います。サブスクは解約もしやすいので、進化するサブスクを渡り歩いてもOK!購入している商品の重複を省き、定期的にサブスク断捨離しつつ、買い物の便利さを手に入れることは、単に「楽」ということではなく、人生において貴重な「時間」を手に入れることになります。