MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

2030年すべてが「加速」する世界に備えよ(ピーター・ディアマンディス&スティーブンコトラー)

『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』(ピーター・ディアマンディス&スティーブンコトラー)(◎)

 これは強烈な一冊でした!まず、イーロン・マスクの盟友が2030年を語るというところが惹きつけられますが、この内容が「えっ、えっ、そうなの!」「えっ、それだけじゃないの?」の連発で、たたみかけるように未来が語られます。それが過去からの推移とともに解説されているので、歴史の大きな流れが掴みやすいという特徴もあります。2030年に達成されるのか時間軸はわかりませんが、本書を読めば人類が向かっている方向性はよくわかると思います。翻訳のわかりやすく、超オススメ本です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯第1章「コンバージェンス」の時代がやってくる

・「ウーバーの目標は、2020年には空飛ぶ車の性能を世に知らしめ、2023年にはダラスとロサンゼルスで空のライドシェアを完全に事業化すること。最終的に、車を保有し、使用することを経済的に見合わない行為にしたいと考えている」(最高製品責任者ジェフ・ホールデン、当時)

・「すでにミレニアル世代の10% 以上が車を所有するよりライドシェアを選択しているが、そんなもんでは終わらない。自動運転車の方がコストは1/4〜1/5になり、車の所有は不要になるだけでなく、割高になる。おそらく10年以内に、人間が車を運転することは特別な許可が必要になるでしょう」(同上)

・2023年には1,000ドルクラスの普通のノートPCが、人間の脳と同じレベルのコンピューティング能力を持つようになる。その25年後には、同じクラスのノートPCが地球上の全人類の脳を合わせたのと同じ能力を持つようになる。

・「収穫加速の法則」に従って計算すると、これからの1世紀で、農業の誕生からインターネットの誕生までを二度繰り返すくらいの変化が起こる。

・「ハイパーループ」コンセプト(イーロン・マスク):磁気浮上技術を使い、筒状の真空チューブ内で乗客を乗せたポッド(車両)を最大時速約1,200キロで走行させる、高速交通ネットワーク。商業用ジェット機を上回る速さ。「ハイパーループは2023年の認可取得を目指している。2025年までに複数のプロジェクトの建設を進め、乗客を乗せた試験走行も実施する計画」(ハイパーループ共同創業者ジョシュ・ジーゲル)

・飛行機のエコノミークラス並みの価格で「地球上どこでも1時間以内にいける」ロケットサービスの実現(イーロン・マスク)。ニューヨーク〜上海間が39分、ロンドン〜ドバイは29分、香港〜シンガポール間が22分。テクノロジー自体は3年以内に形になる。しかし安全性を確認するまでにはもう少し時間がかかる。航空業界は極めて安全性が高い。飛行機に乗っている方が自宅にいる以上に安全。

・交通革命は都市の外観や雰囲気を変える。「地元」のデート相手の規模が変わり、「地元」の学区の人口構成も変わる。

・インターネットによって消滅した雇用が「1」だとすれば、新たに生み出された雇用は「2.6」であることが明らかになった。これからの10年で、同じような機会が何十という産業で生まれるだろう。

アバターには2つのタイプがある。一つはデジタルバージョンで20年ほど前から使われてきた。もう一つは、ロボット。VRゴーグルと触感スーツを身につければ五感は全てロボットにテレポートできる。そうすれば自宅を一切離れることなく、歩き回ったり、握手をしたり、好きなことができる。2018年に全日本航空ANA)がロボットアバターの開発を加速させるため、「ANAアバターXプライズ」に1,000万ドルを拠出した。それは、アバターが航空産業に破壊的変化をもたらす可能性が高いことをANAが理解し、備えをしようと考えたからだ。

・個人による車の所有は、一世紀以上にわたって我が世の春を謳歌してきた。ライドシェア・モデルという初めての真の脅威が出現したのは、この10年。それも10年も続かないだろう。まもなく自動運転車に駆逐される見込みで、その自動運転車は空飛ぶ車に、空飛ぶ車はハイパーループや地球上のどこへでも運んでくれるロケットサービスに駆逐されようとしている。その上アバターもある。何より重要なポイントは、その全てがこれからの10年で起きようとしているということ。

 

 ここでまとめたものだけで、まだ第1章だけ(全体の1割ちょっと)。とても書ききれません。それだけ内容の濃い、すごい本です! 一度書店で手に取ってみられることをお勧めします。

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