『知性を磨く』(田坂広志)(◯)<3回目>
あらためて読み直しても、やはりいい本でした!
本書から『人は誰もが、「多重人格」』へという流れへ。本書もYouTube動画にすべく、整理してみました。2015年に本書について著者の講演をお聞きし、直接お話しできたことが今でも思い返されます。在り方の素晴らしい方はこういう雰囲気の方なのかと、非言語領域で体感させていただいたのが、pricelessな体験でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯全体構成(全25講話)
・第1話〜第9話:知性とは何か?
・第10話〜第20話:スーパージェネラリスト
・第21話〜第25話:多重人格のマネジメント
◯知性と知能は異なる(第1話)
・知能:「答えのある問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力
・知性:「答えのない問い」に対して、その問いを、問い続ける能力
⇨答えのない問いは、日々の生活の中、日々の仕事の中にも無数に存在する。
◯「割り切り」の問題(第3話)
・割り切りの奥にある「楽になりたい」という心の問題。割り切りとは心の弱さである。問題を単純化し、二分法的に考え、心が楽になる選択肢を選び、その選択肢を正当化する理屈を見出す。そうすると、深く考えることができなくなり、「答えのない問い」を問う知性の力が衰える。
◯割り切りをしない迅速な意思決定(第4〜6話)
・精神の弱さに流されない迅速な意思決定とは、腹を決める心の姿勢。割り切りは心の姿勢が楽になるが、腹決めは心が楽にならない。精神エネルギーが必要であり、それこそが知性の根底にある力(第4話)
・精神エネルギーは、歳を重ねるに従い、高まっていく(第5話)
・精神エネルギーは、歳を重ねると衰えていくと思っているのは、固定観念と修業不足である。ここでいう修業とは、自分の能力を少し超えたレベルの仕事に集中擦るという時間を定期的に、継続的に、数年間というオーダーで持つこと(第6話)
◯知性の本質は、知識ではなく知恵(第7話)
・知識とは、「言葉で表せるもの」であり、書物から学べるもの。
・知恵とは、「言葉で表せないもの」であり、経験からしか学べないもの。
・知性と呼ばれる能力の核心とは、経験を通してしか身につかない、人間としての極めて高度な能力。知性の本質は、経験を通して獲得される知恵に他ならない。
◯経験(第8話)
・学歴社会とは、知能の優秀さと、知識の豊富さによって評価される社会。だから、高学歴なのに知性を感じさせない人物がいる。
・知性を磨くために必要なことは、①「答えのない問い」を問う力を身につけること、②「知識と知恵の錯覚」に陥らないこと。何かを語るとき、「これは書物で学んだ知識か、経験から掴んだ知恵か」を自問しながら語ること。
◯スーパージェネラリスト(第9〜12話)
・20世紀において個別の分野の「専門の知性」だけで解決できる問題は、そのほとんどが解決してきた。残されている問題は、個別分野の専門の知性だけでは解決できない「学際的問題」。個別分野の「専門の知性」をその垣根を超えて統合する「統合の知性」が必要。そのためには、様々な専門分野を、その境界を超えて水平的に統合する「水平統合の知性」を持った人材が必要(第9話)
・一方で、著者がイメージするスーパージェネラリストは「垂直統合の知性」を持ったスーパージェネラリスト(第10話)
・それは7つのレベルの思考(思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力)を切り替えられる人材(第11〜12話)
◯中途半端な思考(第13話)
・3つの問題
①「7つのレベルの思考」に粗密があり、アンバランス
②「7つのレベルの思考」のそれぞれが深まっていない
③「7つのレベルの思考」が、互いにシナジーを生み出していない。
・上向過程と下向過程
・「上向過程の思考」とは、下位レベルの思考を、上位レベルの思考でチェックすること
・「下向過程の思考」とは、上位レベルの思考を、下位レベルの思考でチェックすること
・「7つのレベルの思考」を行うとき、「上向過程の思考」と「下向過程の思考」を交えながら「思考の往復運動」を行う必要がある。
◯「思想」レベルの知性を、いかに磨くべきか(第14話)
・思想というものを、単なる教養ではなく、「未来を予見する方法」として学ぶこと。この世界が、森羅万象が、どのようにして変化・発展し、進歩・進化していくかの法則学ぶ。
・未来の具体的変化は、予測できないが、未来の対局的変化を予見することはできる。
・ヘーゲルの弁証法にある「事物の螺旋的発展の法則」。事物の変化・発展、進歩・進化はあたかも螺旋階段を登るようにして起こる。そして複雑系。
◯「ビジョン」レベルの知性を、いかに磨くべきか(第15話)
・ビジョンとは、未来に対する客観的思考であり、主観的願望や意志目標ではない。
・「思想」レベルの思考と「ビジョン」レベルの思考の往復運動。学んだ「思想」に基づき、「ビジョン」を考え、考えた「ビジョン」を思想」でチェックするプロセスが大切。
◯「志」レベルの知性を、いかに磨くべきか(第16話)
・「ビジョン」として描いた「これから何が起こるのか」のいくつかのシナリオの中から、個人の意志として、もしくは企業の意志として「このシナリオの実現を目指そう」「この未来の実現を目指そう」という思考のこと。
・野心とは、己一代で何かを成し遂げようとの願望のこと
・志とは、己一代では成し遂げ得ぬほどの素晴らしき何かを、次の世代に託する祈りのこと
・志レベルでの知性を磨いていくために、我々は、自身の心の奥深くにある「エゴ」(自我)を見つめることから始めなければならない。
◯「戦略」レベルの知性を、いかに磨くべきか(第17話)
・戦略とは、戦いに勝つための策略であることであり、戦いを略(はぶ)くこと。
・どのような戦略にも、そこには「かけがえのない人生」が懸かっている。
・戦略的反射神経。経営環境の刻々の変化を感じ取り、その変化に応じて、瞬時に修正していく能力のこと。論理的能力ではなく、直感的感覚の能力。
◯「戦術」レベルの知性を、いかに磨くべきか(第18話)
・重要なのは、想像力(イマジネーション)。
・戦術とは固有名詞で語るべき世界。そこが戦略と戦術の違い。
・もう一つ必要なのは「反省力」。仔細に振り返り、思考の中で徹底的に追体験すること。そして、そこから改善策を学ぶ力。
・ある戦略のもとで、戦術を決定するためには、まず具体的な固有名詞を想定し、可能な限り、会計情報と周辺情報を入手した上で、その戦術を実行したときのシミュレーションを徹底的に行い、戦術の最善策を検討する。また、一つの戦術を実効した後は、その経緯を仔細に振り返り、徹底的な追体験を行い、戦術の改善策、もしくは新たな戦術を検討する。
◯「技術」レベルの知性を、いかに学ぶべきか(第19話)
・技術の基本は、知識ではなく知恵。技術の本質は、言葉では表せない知恵であり、それは、決して言葉で表せる知識ではない。それゆえ、技術とは、決して書物で学べるものではなく、経験を通じてしか学べないものである。
・経験が技術になっていないのは、反省の技法を身につけていないから。
・知恵の習得方法の本質は、知恵を掴むための知恵。師匠と呼ぶべき人物と巡り合って、その人物からプロフェッショナルの知恵を様々な形で掴む反省の技法を身につけていたか否か。
◯「人間力」のレベルでの知性を、いかに磨くべきか(第20話)
・自分の心の動き、相手の心の動き、集団の心の動きを感じ取る修業を積む。
・エゴは捨て去ることはできない。内観によりただ静かに見つめること。
3回目も深く入れ、7つの知性の垂直統合について、内省しながら読むことができました。その際に、上下の階層の知性との整合性をチェックすることの大切さを改めて学びました。水平統合は領域の広さから構えてしまいますが、垂直統合はどれだけ自分を深めているかということでもあり、より自分に向き合えると思います。