MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

仏典のことば(田上太秀)

『仏典のことば』(田上太秀)

 本書は、仏教の基本教理を表す12の言葉を通して、無限の広がりを持つ釈尊の教えを平易に説く、仏教入門書です。仏典を学ぶというと難しそうなイメージがありますが、本書のように、重要な言葉から入るのもありかと思います。

 全体を通して、三法印(3つの命題)貫かれています。三法印とは、

①すべての形作られたものは無常である

②すべての形作られたものは苦しみである

③すべてのものは私(私のもの)でないものである

 

(印象に残ったところ・・本書より)

諸行無常

・「諸行無常」とは「世間無常」とも言い換えられる。世間無常とは、自立自存して永遠に存在し続けられるものは世間には何一つないということ。

・「天地の動きを見て無常と思い、山川の景色を見て無常と思い、万物の盛んな躍動を見て無常と思い、そしてものへ妄執の心を持たなければ、早いうちに最高の安らぎの境地に達せられる」(『四十二章経』第十六章)

・すべてのものに執着してはならない。妄執してはならない。これは私のものであるとか、いつまでもこのままであってほしいとか考えてはならない。ものを見るときは、それがどんなに美しく、生き生きとしていても、それがいつまでも相続しないのだと自覚していなければならない。

釈尊はものの本質を見つめて、それをどのように受け止めるべきかを教えた。貪っているときは、自分の好みや考えや思い込みや、世間の評価などで、ものを捉えていることが多い。ものを逆さまに見たり考えたりしていることが多い。

 

◯衆縁和合(永遠不滅のものはない)

・あらゆるものが無常だから、世間のものは私の思うようにならない。願い通りにはならないものばかりである。すなわち、「私のもの」は世間には一つも存在していない」。

・ものは原因から発生、誕生するが、その発生、誕生を促し、活動させ、発展させるための条件がなければ、ものの発生・誕生もない。世間にあるすべてのものは、ものとものとが直接にあるいは間接に関わりが依存して、相乗・複合・融合して条件となって一つのものを形成し、そして破壊しているという道理を「縁起」という。

・「衆縁和合」という言葉は、ものはみな(衆)さまざまな原因と条件(縁)が和合して生じ、そして滅しているという。仏教本来を意味を最もよく表している。

・『大般涅槃経』は、ものが生じたり滅したりする働きは数え切れないほどの原因と条件が関わっているのだから、「私が・・・した」「私が・・・する」とかの「私」主導の考え方や生き方は、衆縁和合の現実では成り立たないことを教えている。

 

 12の言葉のうち2つを見るだけでも仏教思想の学びになり、自分を振り返る機会にもなると思います。仏教思想は、心が穏やかになるというか、普段自分の思考が偏っており、それが是正されるような気づきがあります。私は、宗教的というよりも学問として読んでおり、読書習慣の中にローテーションで組み込むことにしています。