MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

僕らはそれに抵抗できない(アダム・オルター)

『僕らはそれに抵抗できない』(アダム・オルター)(◯)

 「依存症ビジネス」の作られ方について解き明かした一冊。これは興味深い内容でした。

 マーケティング、プロモーション、広告・・・消費者を対象とする様々なビジネスの裏側に「依存症」とも言える脳の仕組みに働きかける施策があります。スティーブ・ジョブズは自分の子供に当時爆発的に売れていたiPadを触らせなかったそうです。なぜなら、のめり込んでしまうから。仕組みやポイントをちょっと押さえておくだけで、注意して行動し、何かに「飛びつく」行動を抑止できるようになると思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯依存症になる6つの切り口

①目標

・人に行動を促したいなら、太刀打ちできない大きな目標ではなく、具体的でチャレンジしやすい小さな目標を与える方が有効。進歩している実感に励まされるし、ゴールラインが見えている方が前に進みやすい。

・仕事用メールの70%は受信から6秒以内に読まれている。メールのために中断した作業に集中力が戻るまで25分かかると言われている。仮に1日の中で均等な感覚で25通のメールを開くとしたら、理論上、生産性を最大限に発揮する時間はゼロということになる。解決策は、新着メールの通機能をオフにして、メールチェックの頻度を下げること。

 

②フィードバック

・「勝ちたい、当たりたい」という動機によって認知が歪む。ゲームやギャンブルの多くは「当たりに近づいている」「あともうちょっと」というメッセージをほのめかし、プレイヤーの希望を煽る設計になっている。

・当たり自体が大事なのではなく。直前のハズレから変化が起きて当たりになったという体験が、人の気持ちを湧き立たせる。

 

③進歩の実感

・「エナジーシステム」というゲーム制作の手法。ゲームを始めて5分経つと、キャラクターのエナジーポイントが尽きて、それ以上遊べなくなる。そして、例えば4時間後にメールが来て、ゲームを再開できると知らせてくる。この待ち時間を短くするためなら、人は1ドル払う。あるいは、ゲームが再開した時点でエナジーポイントを増やしておくためなら、すんなり財布を開く。ゲームデザイナーはそのことに気がついている。ゲーム再開をただ待つのか、それともお金を払ってさっさと再開するか、選ばせている。

・マイクロフィードバックがこまめに入るミッションの方が再チャレンジする回数が50%多い。それを踏まえてゲームを修正していくので、ゲームは次第に最大限の依存性を持つようになってくる。公開後にずっとゲームの修正を続けて、人が選ぶものを手当たり次第に取り入れている。

 

④難易度のエスカレート

・順風満帆な生活は表面的には魅力的に思えるが、その魅力はすぐに色褪せる。人間は誰でもある程度の範囲で、敗北や困難や試練を必要としている。それが一切ない状態では、成功のスリルや喜びも、勝ちを重ねるたびに薄くなる。だから貴重な自由時間を費やしてわざわざ難しいクロスワードパズルを解いたり、危険な山に登ったりする。ずっと成功すると分かりきって過ごすよりも、試練に伴う苦労を味わうことの方が、はるかに魅力的。

 

クリフハンガー

・ラストがわからないストーリーを聞かされるくらいなら、何も聞かされない方がマシ。

・完了していないオーダーはウェイーターの意識に引っかかっている。けれを料理を届けてしまえばクリフハンガーは終わるので、意識が解放され、また新しいオーダーによる新しいクリフハンガーに集中する。

・被験者は予測が立たないことに心を掴まれる。ランダムな報酬に対し、被験者の脳が示す快の反応は大きくなり、実験が終わるまでずっと変わらず喜びを示し続けてる。

 

⑥社会的相互作用

・誰でも多少は、他人にどう思われているか気にせずにはいられない。しかもフィードバックのタイミングや内容がランダムだともう気になって仕方なくなる。人生の先が見えないように、facebookとインスタグラムでは、予測の立たない刺激がエンドレスで続いている。インスタグラムは、まさにそうしたランダムなフィードバックの泉。

・「忘れないでください。ピクルスになった脳は、2度とキュウリには戻りません」。全快したから一度くらいゲームをやっても大丈夫だろうという思い込み。リスタート入居者の脳はもうピクルスになってしまったので、脳の中に潜む依存症が常に再燃の機会をうかがっている。

 

◯依存症に立ち向かう3つの解決策

①予防はできるだけ早期に取り組む

②行動アーキテクチャで立ち直る

・依存症的な行動を克服するために必要なのは、何か別なものと入れ替えること。

・「合図」→「儀式」→「報酬」の「儀式」(行動)部分を変える。

ゲーミフィケーション

・つまらない作業をゲームに変える。

 

 本書を読んでいると、過去を振り返り、自分にも当てはまっていたことがたくさんあります。いや、現在ですらあります。よくよく注意しておかないと、時間もお金も流失してしまうことになるので、怖いものだと思います。