『科学的に幸せになれる脳磨き』(岩崎一郎)
著者は脳科学者・医学博士。25年以上にわたり、ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所など、米国を中心に世界最先端の医学脳科学研究に携わってこられた方です。「島皮質」という脳の部位(大脳のひだの奥深く)の機能を活性化させると、脳全体をバランスが良く協調的に働かせることができるようです。そのための取り組みが「脳磨き」。本書では、脳を磨く6つの観点が紹介されています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯脳磨きの6つのポイント
①感謝の気持ちを持つ
②前向きになる
③気の合う仲間や家族と過ごす
④利他の心を持つ
⑤マインドフルネスを行う
⑥Awe(オウ)体験をする
◯感謝の気持ちを持つ
・恩恵的感謝(Doingの感謝)と普遍的感謝(Being)の感謝。恩恵的感謝だけをしていると、エゴが強くなり、次第に気持ちが暗くなり、長期的には鬱傾向を強くする。恩恵的感謝も含む普遍的感謝は成長意欲が増大し、困難に立ち向かう勇気が持てる。
・感謝の最も大きなメリットは、意欲が湧くこと
・感謝の習慣は、まずはお店のレジで「ありがとうございます」ということから始める。
◯前向きになる
・気持ちが前向きだと、脳は活性化され、脳全体が働きやすくなる。
・「良いことがある→前向きな気持ちになる」というパターンが多いが、脳の特性から考えると逆で、「前向きな気持ちでいるからこそ脳が活性化し、それゆえに身の回りに良いことが起きる」
・一方で、ネガティブな感情が大切になる面もある。課題を見つけやすく、混乱している上挙を教えてくれるなど、ネガティブな感情は命を救う。
◯気の合う仲間や家族と過ごす
・一緒にいる人に対して、条件をつけずに、ただただいてくれること、存在してくれることを喜び、感謝する。それが互いの成長エネルギーになる。
・結果を出したかったら、成長に目を向ける。失敗は、「失敗」と捉えずに、その中に必ずある成長に目を向ける。それが人を成長させる。「体験→振り返り→次の行動」という「成長サイクル」を繰り返していけば、人は成長ができることができる。
◯利他の心を持つ
・利他とおせっかいの違いは、利他は「セルフレスである(に近い)」(=私心がない)こと。
・共感力を高め、利他の脳回路を鍛えるというのは、他者がどのような考えや感情を持ち、近未来にどんな行動をするのかという「未来予測」の脳回路を鍛えているのと同じこと。
・脳回路というのは直線的に働くのではなく、未来予測をして修正をこまめに加えながら、脳回路が働く。「脳磨き」で脳回路が鍛えられていくと、相当に大きなことの未来予測ができるようになると想像される。
◯マインドフルネスを行う
・マインドフルネスとは、今この瞬間に、余計な判断を加えずに、自分の人生がかかっているかのように真剣に意識して注意を向けること。
・マインドフルネスの習慣化は、記憶力のアップ、睡眠の質の向上、免疫力の高まりなどにつながる他、万能役ではないが腰痛や頭痛の痛みを軽減させる効果もある。
・マインドフルネスを続けると、自然に感情が安定するようになり、生きるのがワクワク楽しくなる。
◯Awe(オウ)体験をする
・大自然や大宇宙の悠久さや広大さを前に、自分の存在の小ささを感じる体験を、脳科学では、Awe(オウ)体験という。この体験をしているとき、その人の脳はとても活性化していることが多い。
・Awe体験をすると自分の自我(エゴ)を少なくし、謙虚な気持ちを起こすことがわかっている。大自然の凄さに圧倒され、自分が悠久の時の流れの中では、小さな点にしか思えず、謙虚になる。
脳を磨く6つの観点は、多くの自己啓発本に記載されている内容と通じるものがあります。この点を感覚的ではなく、脳科学の研究者が書かれていることで、より学術的な裏付けがあり論理的に理解できるようになっていくと思います。本書は、学術的背景を詳細に記載されているわけではなく、あくまで一般読者向けに要点がわかるように記載されているので、本書で興味が湧けば、より専門的な書籍に進んでいくのが良いと思います。