『世界はシステムで動く』(ドネラ・H・メドウズ、訳:小田理一郎)(◯)
システム思考は、起きていることの部分ではなく、起こっていることの全体像(複雑に繋がりあったシステム)を捉え、分析をするというもの。このシステム思考は、様々な課題解決につながる思考だと思います。冒頭の訳者の前書きも大変参考になる内容です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「システム」の例(訳者の前書きより)
・かつて奄美大島ではハブに噛まれる人がいて、「問題だ」となった。人々は、「ハブをやっつけるには・・そうだ、マングースだ!」と考え、マングースを連れてきて島に放ちました。ところがマングースは、ハブと命懸けで戦う代わりに、他のもっと弱い動物を餌にしました。そうして、ハブは減らず、マングースは増え、天然記念物のアマミノクロウサギが絶滅の危機に瀕することになってしまった。
・この実話は、自然や社会のシステムはこのように様々なものが複雑につながり合っているのに、その一部だけを取り出して考えると、期待した効果が生まれないばかりか、新たな問題を生み出すことがあるという一例。
◯「システム」とは
・何かを達成するように一貫性を持って組織されている、相互につながっている一連の構成要素。
・「システム」とは3種類のものから成り立っている。
①要素
②相互の繋がり
③機能または目的
・システムか単なるモノの集まりかの見分け方
①部分がどれだか分かりますか?
②部分は互いに影響を与えていますか?
③部分が合わさることで、各部分だけのときとは異なる結果を生み出していますか?
④その結果は、さまざまな状況下でも持続しますか?
◯ストックとフロー
・ストックが変化するのには時間がかかる。フローの移動には時間がかかるから。これはとても重要なポイントであり、「システムはなぜそのように挙動するか」を理解する上での鍵を握っている。
・ストックはたいていゆっくりと変化し、システムにおいて、時間的遅れ、タイムラグ、バッファー、安定器、勢いの源として機能しうる。ストックの反応は、急激な変化に対しても、ゆっくりと満ちたりゆっくりと空になったりするだけ。大きなストックは特にそう。
◯フィードバック・ループ
・ストックが飛躍的に増えたり、急激に減ったり、周りで何が起ころうともある範囲内に保たれているとき、そこにはコントロール・メカニズムが作用しているように思える。
・「フィードバック・ループが存在している」という最初の手がかりは、長期間にわたって一貫した挙動パターンが見られること。
①安定化のループ(バランス型フィードバック):水準を安定させるもの
②自己強化型フィードバック:増幅型、自己増殖型、雪だるま式のもので好循環、悪循環をもたらす。
→ストックが2倍の大きさになるのに必要な時間(倍増期間)=だいたい「70÷成長率(%)」
本書を読んでいると、名著『学習する組織』(ピーター・M・センゲ)を思い出します。なぜこの結果が生じたのか?表面的ではなく、何がどう繋がっていて、この結果が生まれているのか?繋がりを広げて見える化していくと、本当に解決すべき点が見えてきます。「原因→結果」という単純図式ではなく、繋がりをフロー図で捉えて仕組みを理解するという発想。ビジネスでもプライベートでも取り入れていきたい発想です。
全体にちょっと難しく感じましたが、本書末尾には、用語集やシステム原則のまとめなど、本書を理解する上で役立つ情報が掲載されており、本文と末尾、そして現実の事例のイメージを積み重ねていけば、だんだんとこの複雑系のイメージが湧いてくると思います。