MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

一倉定の社長学シリーズ①<経営戦略>(一倉定)

一倉定の社長学シリーズ①<経営戦略>』(一倉定

 著者(1918−1999)は、経営指導歴35年、我が国の経営コンサルタントの第一人者で、大中小約5,000社を指導。本書は、著者の社長学シリーズの第一弾「経営戦略」がテーマ。机上の戦略論的なものではなく、赤字で倒産してしまいそうな会社にどのようにコンサルタントとして指導してきたのか。めちゃくちゃ実践的な内容です。知識・論理が優先してしまいがちな方には、グサッと刺さる部分が多いと思います。これぞ社長が考えるべき、そして、行動すべきこと、という箇所が続出です。なので、線引きがいっぱいになりました(私は、高額本でも構わず線引き・書き込みをして参考書のように使っています)。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯経営戦略とは

・事業は永久に存続しなければならないという至上命題を背負っている。

・事業構造について

①どんな市場、またはどんな市場の組み合わせにするか

②どんな商品構成、どんなグレードとするか

③どんな得意先構成とするか

④どんな店舗展開をするか

⑤どんな供給体制(内外作区分、仕入体制)とするか

⑥未来事業の推進体勢をどうするか

⑦人員構成をどうするか

・活動、相互関連などは、必ず客観情勢の変化への対応がその基本認識でなければならない。社内の都合を優先したならば、お客様の要求を十分に満たすことができなくなり、企業は衰亡していく。

 

◯基本資料

・著者が企業のお手伝いをする際に作成を依頼する3つの資料

①売上年計

②得意先別売上ABC分析

③商品別売上高ABC分析

 

◯商品構成

・常に売れ行き最低の商品を切って、新商品を加えるという、スクラップアンドビルドが顧客要求に対する道。商品構成をどのようなものにするかということは、企業が決めるのではなく、顧客が決めるもの。

 

◯得意先構成

・「95%の原理」。売上の下位5%に全取引社数のうち何社あるか?そこにどれだけの営業労力を投入してしまっているか。その5%を削減し、浮いた営業工数は現在の得意先に対し、さらに優れたサービスを行う。

・この切り捨てに社員は反対するが、社員の意見など聞いていたら、会社の業績は上げられないというのはこういうこと。得意先のスクラップ化のための策は、訪問禁止。次は、現金決済と配送中止(取りに来てもらう)。

 

◯内部管理は簡素化すべし

・内部管理は、行動化すればするほど費用が急激に増大する。その割に効果は少ないことを認識すべき。

・多くのお客様が、それぞれ自分の都合だけで、ああせよ、こうせよという要求をしてくる。こちらは一社。それらの会社の要求を満たすためには我が社の事情など全く考えられない。ムリとムダとムラが発生する。混乱が生まれる。お客様の要求を満たすために混乱することこそ正しい。ムリ・ムダ・ムラを防ぐというようなマネジメントの教えなど一切通用しない。このことを知らずに、我が社の都合だけを考えていたら、お客様はすべて我が社を見捨ててしまう。

 

◯環境整備

・環境整備こそ、すべての活動の原点。環境整備は、これを行なった人々の心に革命をもたらす。いかなる社員教育も、どんな道徳教育も、足元にも及ばない。

 

◯業績不振会社の特徴

①環境整備ができていない

②事業所の建物が身分不相応に立派で広く、事務員が大勢いる

③事務所の机の配列が、学校式になっている

④張り紙が多い(その多くは社員の姿勢や心得についてのもの)

⑤流行りものの正真運動をやっている

 

◯優秀会社に共通している考え方「経済的価値の創造原理」

①怠慢追放

②成果はお客様から得られる

③スクラップ・アンド・ビルド

④集中

⑤動機づけ

 

◯市場の地位はどうか?

・業界の占有率がある程度以下の会社「限界生産者」。占有率で言えば「10%以下」、ランクで言えば上から「1/3以下」。

・不景気になると末端の販売会社は在庫を圧縮する。この時限界生産者からの仕入れを中止する。

・消費者は、有名会社の商品、馴染みの深いブランドを安心して買う(限界生産者は知名度が低い)。

・何らかの経済変動があると真っ先に影響を受けるのは、常に限界生産者の商品。

ランチェスターの法則を当てはめると、「企業の危険度は、企業規模の2倍に逆比例する」

 

ABC分析の検討

・一社または一商品で、総売り上げに対する比率が高過ぎれば危険。ナンバーワンであっても総売上に対する比率は30%以下が安全。

・下位5%の部分は、得意先数の約50%、商品アイテム数の50%が平均的。これらは、そのほとんどが限界的。この部分を切り捨て、ここにかけていた努力を、もっと良い活動に投入すること。

・下位5%の中にも、まだ取引歴が浅くて将来に希望が持てる、まだ小さいが魅力的な会社で成長力があるというような会社が混じっている場合がある。こういう会社は切り捨てずに将来に期待することも大切。

・上位の会社ほど生産が間に合わなかったり、在庫が切れたりしてお客様に迷惑をかけたり、売り損ないをするもの。思い切った在庫増大を行うと、売り上げはたちまち上昇するケースにしばしば出会う。

・商品別売上高ABC分析表は、得意先が問屋または小売店の場合には、売れ筋情報として提供すると、意外なほど喜ばれる。

 

 本書は、一冊13,000円(税別)しますが、発行元の日本経営合理化協会に登録(無料)すれば、同協会のホームページで一冊11,000円(税別)で購入することができます。高額な書籍ですが、私は、復刻版三部作を読んでから、どうしても読んでみたくなり、まずは第一巻を購入してみました。本書の内容も非常に良かったので、第二巻〜第四巻を購入・取り寄せ中です。