MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

一倉定の社長学シリーズ⑥<内部体勢の確立>

一倉定の社長学シリーズ⑥』<内部体勢の確立>(◯)

 著者(1918−1999)は、経営指導歴35年、我が国の経営コンサルタントの第一人者で、大中小約5,000社を指導。本書は、著者の社長学シリーズ(10冊)の第六弾「内部体勢の確立」がテーマ。昭和57年の作品です。

 大切なことは、「人間というものは、どういう時に、どういう考え方と行動をとるものなのか」ということを知ること。本書は、「顧客の要求を満たす」ことに焦点を合わせて、「人間の集団と個人をどう指導して成果を高めていくか」という要請に解答を出すことを狙いとして書かれています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯成果は顧客によって得られる

・正しい組織に関する正しい基本認識とは、「お客さまに正しいサービスを行うために、我々はどんな体勢をとらなければならないか。どんな行動を取ったら良いか」ということ。

・社長が絶えずお客様のところへ行き、我が社のサービスの悪いところ、行き届かないところを教えてもらい、それを直せば良い。

・組織というものは、一旦これが生まれると、「組織自体の存続」のみが最重要な命題となってしまうという恐ろしいもの。

 

◯伝統的組織論の誤り

・職務分掌規定の考え方には、2つの大きな誤りがある。1つは、部門別の仕事を規定化しようとしていること。こんなことはできるはずがないのにやろうとするから、混乱が生まれる。

・もう一つは、一つひとつのセクションについて、そのセクションだけの仕事しか考えていないこと。会社の中の仕事は、必ず他の部門との関係がある。この関係を忘れてしまっているところにある。

・仕事というものは、たくさんの異種作業によるひとつの「流れ」。この流れを円滑にするものは、個々の作業を一つひとつの作業にまで細分化してしまうと、これは細分化の行き過ぎ。仕事をうまく行うためには、細分化できない最小単位がある。

・仕事をうまく処理するコツは、部門や個人の職務を決めることではなくて、部門や個人に関係なく、「仕事」そのもののやり方を標準化すること。

 

◯正しい指導

・自らの正しい行動がなければ、社員に正しい姿勢と正しい行動を要求することはできない。社員は文字通り、100%社長の姿勢と行動を見習うものであることを、肝に銘じなければならない。

・大切なことは、問題を解決することではなくて、問題が起こらないようにすること。

・管理職がいつまでも成長しないから社長は外に出られないのではなくて、社長が社内にいるから管理職が成長しないのだ。管理職の成長を阻害しているのは、「穴熊社長」その人なのである。

 

◯新組織論

・良い組織を定義づけてみると、それは、優れた業績をあげられる組織という以外にはない。そして、優れた業績をあげられる組織の実態は、2つしかない。

①優れた顧客サービスができる組織。

②競合他社と戦って勝てる組織。

・限りある戦力で勝つためには、重要戦略に集中的な戦力投入もやむを得ない。当然手薄なところもでれば犠牲を強いられることもある。角部隊長の顔を全部立てることなどできない。その上、各部隊の緊密な連携が絶対的に必要であり、機を見てふられる総大将の采配には、敏速に応じなければならない。

 

◯働く人間の管理

・お客様のところへいけば行くほど、お客様サービスの大切さの認識が深くなり、社長の顧客サービスの方針が痛いほど感ぜられて、社長の方針を積極的に推進するようになる。これこそ本当の教育。つまり教師はお客様なのである。

 

 本書は、一冊13,000円(税別)しますが、発行元の日本経営合理化協会に登録(無料)すれば、同協会のホームページで一冊11,000円(税別)で購入することができます。高額な書籍ですが、非常に参考になるので、10冊読破に向けて、現在4冊目が終了するあたりを読んでいます。著者が気になる方は、まずは復刻版三部作から入っても良いと思います(こちらは、各1,980円)。