『問いの立て方』(宮野公樹)
著者は、京都大学学際融合教育研究推進センター准教授。冒頭、「いい問いの立て方」について3つの観点が紹介されています。①「いい」という言葉の意味。「良い」か「善い」か。②「問い」とは何か。問題や質問など調べれば答えがわかる問いか、課題やテーマ・目標などの答えのない問いか。③いい問いの「立て方」という何かしらの方法論があるのか。いい問いと見つけようと思って見つけられるような問いが、果たして「いい問い」なのかという観点です。ここまでだけでも禅問答的な展開が予想されますが、いい問いとは、「そもそもなぜその問いがあるのか」という問い、問いを問う問い。物事の大本に迫る形式であり、この形式こそが、いい問いにつながる。まさに問いの本質的なところを考えるための一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯いい問いとは何か?
・本質的な問いであり、本質的とはそれがそれであるところの理由、物事の根源まで踏まえて考えているかどうか。
・自分すなわち世界の存在を考えるまでに至り、その終点を始点と捉えた後、絶えず我が身を振り返る態度とともにある自分の在り方、生き様が本文、言うなら究極的な「いい問い」。
◯本質的であるには
・前提、すなわち大本を探っていく方向でも、あるいは、何のためにそれを問うのか?という先を見つめた方向でもどちらでも構わない。
・原因論的に現在は過去の結果としてあるのか、あるいは、目的論的に理想や希望があって今があるのか、どちらでも考え詰めればたどり着く先は間違いなく自己の、同意にてこの世の「存在」。
・両方とも方向が違うだけで、「なぜそう考えるのか」という問いの形式は共通している。
◯「いい問い」にする方法
・「個別↔︎全体」「可視↔︎不可視」のマトリックスと、「過去・現在・未来」の時間軸で考える。
①過去
1)その問いを持ったきっかけは何か?
2)なぜその問いが気になったのか?
3)その問いの時代性、歴史性は何か?
4)なぜその問いがあるのか?
②現在
1)その問いは、本当の問いか?
2)その問いは、自分にとって本物か?
3)全人類も持ち得る問いか?
4)類似の問いはないか?
③未来
1)どうなりたいのか?
2)どうありたいのか?
3)それは何をしていることになるのか?
4)この世に責任が持てるのか?
◯いい問いの見つけ方
・いい問いとは本分とする考えゆえ、探索したり発掘したりするのではなく「持ってしまうもの」という考え方がしっくりくる。
・そもそもいい問いの建て方という何かしらの方法論があるのか?いい問いを見つけようと思って見つけられるような問いが、果たして「いい問い」であるのか?
・本書では、いい問いを得る術として「持ってしまうもの」「持ってしまったもの」「持たざるを得なかったもの」といった消極的なアプローチをとる。
ビジネスにおいて、「問い」はとても重要。イシュー違いでイチからやり直しなんてことも日常頻繁に生じているのを見ます。問いを言葉にしてやりとしていますが、その背景にある意図は何か。そこに焦点を当て続けることで、未来をどう描いているのか?今をどう見つめているのか?という問いを発した方の本質に迫ること。会社であれば、問いを発する経営者、上司の意図をきちんと捉えること。逆に自分が経営者や上司の立場であれば、意図をしっかりと伝えることが重要なことだと思います。