MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

幸せな劣等感 アドラー心理学実践編(向後千春)

『幸せな劣等感 アドラー心理学実践編』(向後千春)

 著者はアドラー心理学を専門分野とする早稲田大学教授。他の心理学と比べて、説明がシンプルで理解しやすく、自分がどのように考え、行動すればいいのかという見通しを立ててくれる。「生きることの心理学」ともいえるアドラー心理学。本書はアドラー心理学の実践に重点を置いたアドラー心理学入門書です。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇自己受容

・現在の自分のイメージ(自己概念)⇒なりたい自分のイメージ(自己理想)

・そのギャップ(劣等感)を埋める日々の成長(優越の追求)。勇気があれば「創造と貢献」ができ、勇気がくじかれれば「他社との比較」に徹してしまう。

・優越コンプレックスでは、「私はあなたよりも優れている」と言い続けることによって自分の課題を回避する。劣等コンプレックス「私はあなたよりも劣っている」と言い続けることによって、自分の課題に取り組むことを回避しようとする。

・優越コンプレックスと劣等コンプレックスは、内容は反対なのですが、「自分の課題を回避する」という、同じような目的のために使われる。

 

〇自尊心

①随伴的な自尊心

・他者との比較によって自尊心を獲得する

・他者からの評価による

②本来の自尊心

・自己理想に照らしてみて、自分の活動に意味を見いだす。

 

〇不完全である勇気

 「自己理想」とは、理想的な自分のイメージだから、永遠に到達できない。それに対して「自己概念」は、現在の自分についてのイメージなので、常に自己理想よりも劣っており、これが劣等感を引き起こす。劣等感は誰もが持っているものなので、それ自体は問題ではない。ポイントは、劣等感を覚えたときに「自分はまだまだ未熟だ。でもそこそこやっている」という感覚を受け入れること。

 

〇ライフスタイル

・ライフスタイルは性格よりも意味が広く、その人の「人生の描き方」

・どんな人でも自己理想を究極のゴールとして、そのイメージに少しずつでも近づくことができるように毎日の行動を決めていく。このような個人の特有な行動パターンをライフスタイルという。

 

〇最優先目標によるライフスタイルの4分類

①安楽でいたいタイプ

②コントロールしたいタイプ

③喜ばせたいタイプ

④優越でありたいタイプ

 

〇4つの誤ったゴール(ドライカース)

①注目を得ようとする

②権力争いをする

③復習する

④無能であることを示す

 

〇協力

 相手ができていることや強いところに注目する必要がある。重要なことは、ある側面だけの技能の差を誰かと比較しないこと。相手の強いところと、自分の強いところを組み合わせるとどうなるのかということをイメージしてみる。それが「協力」。成功する人は協力のできる人。まわりの人たちと協力できるかどうかが、自分がそこに居場所を見つけて、所属を感じることができるかどうかを決定づける。

 

〇他者信頼の自分の枠組みを見出す

①方法

 5人くらい思い浮かべ、それぞれの人に付いて思う浮かぶ特徴的な行動パターンや性格などをポジティブなものも、ネガティブなものも、できるだけたくさん書き出す。

②解釈

 複数の人にまたがって何回か繰り返して表れる語句があれば、それが「周りの人を見る個人的な枠組み」の中心的な軸。似ている語句や反対の語句があれば、それらをまとめ、そのまとめられたものも「枠組み」の中心的な軸となる。

 同じことを友人や同僚に試してもらい、その「枠組み」を自分のものと比べてみると、お互いの「枠組み」がまったく違ったものだということが分かる。

 

〇勇気をくじかれた人(Discouraged person)

 人生の無益な面での優越の追求とは、「他人の人たちに勝とうとする」こと。自分を飾り立てたり、ごまかしたりすることによって他人に勝とうとする。あるいは、他人を貶めたり、馬鹿にすることで自分を優位にしようとする。その結果、周囲と良い関係を持つことができない。そうして、ますます人生の有益な面での成功を期待することができなくなってしまい、さらに「勇気をくじかれた人」となってしまう。

 

〇自分を勇気づけるトレーニング

①自分自身を受け入れ、自分の居場所を見つけるための勇気づけ

・自分のできているところに注目する。今まで成し遂げてきた仕事やプロジェクト、作品を思い返してみる。今取りかかっている仕事も、すでにできている部分を見直してみる。そうすると、自分が成長していることを認識できる。

・他の人と比べない。問題なのは勝ち負けを決めることによって、共同体感覚で共有される評価の軸を一つに限定してしまうこと。評価軸を一つにしてしまうと、その軸に乗らない人は、居場所がなくなってしまう。

②周りの人たちを信頼し、協力するための勇気づけ

・周りの人達はすべて善意でやっていると信じること

・あくまでも自分の意見として伝えること

 

〇「自己受容⇒所属⇒信頼⇒貢献⇒自己受容」のサイクル

・自己受容するためには、不完全である勇気を持つこと

・所属をするためには、不完全である勇気を持ちつつ、自分の強みを見つけること

・信頼関係をつくるためには、自分のマイナス感情が起こる仕組みを知り、相手の私的感覚を尊重しつつ、お互いの共通感覚を見出していくこと

・貢献するためには、自分自身を勇気づけて人生の有益な面での行動を積み重ねていくこと

 

 「アドラーの幸福の三原則」。①自己受容、②他者信頼、③貢献感。貢献意欲はあるのに、自分が好きじゃない、人が信頼できない。。。私もアドラー心理学を学ぶ前は、完全にこの状況に陥っていましたが、①昨日のプチハッピーを探す、②自分のいいところを探す、③周りの人のいいところを探す、これを半年以上続けている今、かなり「幸福の三原則」が上昇してきている実感があります。習慣化の力、恐るべしです。

幸せな劣等感: アドラー心理学〈実践編〉 (小学館新書)

幸せな劣等感: アドラー心理学〈実践編〉 (小学館新書)

 

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