『なぜリーダーは「失敗」を認められないのか』(リチャード•S•テドロー)(◯)
たまたま書棚で目に入り、気になったので、久しぶりに読み返しました。相変わらずの良書だなぁと思いつつ、訳者の土方奈美さんの日本語訳が素晴らしい(土方奈美さんは、私が唯一訳者で追いかけている方です)。本書は、リーダーの失敗に着目して、8つの代表的な事例と事例から導き出される要点をまとめた一冊。どの事例でも気になったものから読めばオッケー。とっつきやすさと、事例を通じて考えさせられる内容です。ビジネスはもちろんビジネス以外でも「リーダー」と呼ばれる立場の方には、一度は読んでいただきたい一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯コカコーラがついた”真っ赤な嘘”
・2009年1月30日、コカ・コーラ・カンパニーは主力製品の名称から”クラシック”の文字をとった。先立つことほぼ四半世紀、コカ・コーラは主力製品の製法を変えたが、結局はとんでもない大失敗に終わった。単に製法を変更しただけではなく、そのやり方が完全に間違っていた。1985年4月にオールド・コークを廃止し、ニュー・コークを発売したとき、コカ・コーラはこの決断が失敗するはずがないとことあるごとに断言していた。
・「オールド・コークが復活する可能性を尋ねたところ、広報マンはキッパリと『未来永劫あり得ない』」と言い切った。だが”未来永劫”はわずか79日で終わった。コカ・コーラは元の味を、少し変えただけで名前を変えて再投入した。それがコカ・コーラ・クラシック。
・経営陣は、コカ・コーラの伝統にどれほど深い意味があるかを否認した。また、ペプシコーラの攻勢に悩まされていることを否認した。何より問題だったのは、率直に真実を語ることの重要性を否認したことだろう。自らの犯した否認の結果、コカ・コーラの経営陣は嘘を塗り重ね、それを次々と暴かれる羽目になった。
・ニュー・コークが導入されることになったのは、それまでのオールド・コークが何年も前からペプシコーラにシェアを奪われたため。
・問題は経営陣が何をしたかだけではなく、それをどのようにしたかだった。コカ・コーラを飲むためならビルマのジャングルで銃弾に倒れるのも厭わないというような人々から許可も得ず、アメリカの象徴的なブランドを打ち切っただけではない。ほぼ全てのアメリカ人を愚弄するような嘘を並べ立てる羽目に、自らを追い込んだ。
・コカ・コーラの経営陣が、ここから学んだことは何か?それはブランドは消費者のものでもある、ということ。会社が好きにしてもいいものではない。率直に真実を語ることの重要性と、手の込んだ嘘の弊害は、絶対に否定できないということ。
本書の事例を読むと、一度の判断ミスということではなく、自分のストーリーに合わない時に目を背けようとして、それがいく層にも重なって行って、結果、大きな損失を招く事態に陥ってしまいます。本書では、上記の他、ヘンリー・フォード、タイヤ業界、A&P、シアーズ、IBM、ドットコムバブルなどが紹介されています。