『ネットワーク・エフェクト』(アンドリュー・チェン)(◯)
読書会の課題図書として読みました。これは良書です。「ネットワーク効果」とは一般的に、「多くの人が使えば使うほど製品の価値が高まる」こと。電話、クレジットカード、ウーバー、エアビーアンドビー、ドロップボックス、スラック、ユーチューブ、インスタ、Twitter、メルカリなどのすべてはネットワーク効果。これらネットワークビジネスのフレームワーク、勘所などを多くの事例とともに紹介したのが本書。トップの一人勝ちということでもなく、発展すれば、維持をする工夫も大切。ネットワークビジネスの要点がよくまとまった一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯フレームワーク:コールドスタート理論
①コールドスタート問題
・新しいネットワークのほとんどは破綻する。コールドスタート問題を解消するには、望ましいユーザーとコンテンツを同時に集めなければならない。だが、それをサービス開始直後に実現するのは押す簡単ではない。
②転換点
・ネットワークを広げていくと、ある時点から追い風が吹くようになる。ネットワークごとの拡大ペースがどんどん速まり、市場を広げやすくなる。ネットワークを一つ立ち上げるたびに近接ネットワークの立ち上げが楽になって拡大の勢いが増す。最初の小さな勝利が鍵になる。
③脱出速度
・ネットワーク効果を強化し、成長を持続させるために猛烈に働く必要がある。
・ユーザー獲得効果
ネットワークが広がるほど、口コミと紹介によるバイラル成長によって、低コストで効率よくユーザーを獲得できるようになる。
・エンゲージメント効果
ネットワークが広がると、ユーザー間の交流が促進される。
・経済効果
ネットワークが広がると、収益を得やすくなり、コンバージョン率も高まる。
④天井
・製品の成長はやがて天井にぶつかり、停滞する時期がやってくる。市場が飽和状態に近づき顧客獲得コストが高騰したり、バイラル成長が鈍化したりすることが要因。クリック率低下の法則も影響している。スパムや荒らしの横行、過密状態、想定される利用法からの逸脱といった問題も生じる。
⑤参入障壁
・ネットワーク効果を駆使して競合他社から自社を守れるようになる。ネットワークと製品が成熟した段階。ブランド、独自技術、パートナーシップなども参入障壁になるが、テック業界ではネットワーク効果が特に重要。
◯1/10/100の法則
・全ユーザーのうちわずか1%のユーザーがグループ、あるいはグループ内のスレッドを立ち上げる。
・全ユーザーのうち10%のユーザーが背極的に活動し、スレッドを立ち上げたり、進行中のスレッドに返信したりする。
・全ユーザーの100%がこうした活動の恩恵を受ける。
◯過密化
・youtubeが直面した問題は、動画が数百万本規模になり、見たい動画を見つけられなくなったこと。
・動画が多すぎるというのは「過密化」の代表例。ネットワーク効果を弱らせ、やがて製品をダメにしてしまう深刻な問題。
・youtubeの過密化対策は、手作業でトップに掲載する動画を選ぶところから、人気順などで動画を表示する機能の実装、アルゴリズムでおすすめ動画をフィードに表示するように進化した。
・youtubeが過密化対策のために初めは手動で掲載動画を選んでいたように、どの製品も簡単にできるところから始める。つまり、運営側がトップに掲載するコンテンツを選別したり、ユーザーが自分でコンテンツを選んで並べる機能を提供したりするようなこと。
「コールドスタート理論」のフレームワークでネットワークビジネスを見ると、業界がどういうステージにあるのか、どんな工夫がなされているのか、気づきも多くなると思います。ネットワークビジネスはますますいろいろな領域で登場してくると思われますので、要注目の理論かと思います。