『自由な心になれる般若心経エッセイ』(加藤朝胤 監修)〈教養〉
先週日曜日に般若心経の写経を体験し、二百六十余文字の漢字を一つひとつ丁寧に書きながら、心が落ち着くのを感じました。
その時には、般若心経にある言葉の意味はまったく分からず、「書いている内容が分かれば、もっと感じることがたくさんあるのではないか」という素朴な思いから、この本を読むことにしました。
般若心経の解説本ではなく、般若心経に沿いながら現代の生活においてイメージしやすいエッセイ本です。
(解説より)
〇般若心経は、3分ほどの短いお経の中に、お釈迦様の悟りの神髄(教えの基本)が書かれている。大きくは、2つ。
①「空」‥世の中は移り変わっていく
②「六波羅蜜」(ろくはらみつ)‥修行の方法
〇さらに、般若心経では、「縁起の法」が説かれている
この世には、奇跡はなく、原因があって縁が働いて物事は起こる。
(般若心経‥本書より)
〇波羅蜜多(はらみったじ)
幸せの定義を「〇〇があること」と考えるとどんどん欲張りになり、しがみつく。
心配がない、迷いがない、つらくない、怒っていない‥。「〇〇がないこと」は本当に幸せなこと。
〇照見(しょうけん)
まっすぐに見つめるということは、自分の欲に焦点を置かない在り方。何かに集中して取り組んでいるとき、自分の欲が薄くなり、心が静まっていく。その瞬間の心の在り方を忘れないでいたい。
〇空不異色(くうふいしき)
二十歳を過ぎたら、顔だちよりも顔つき。その人の持つ感情が「表情」として、顔つきをどんどん変えていく。時折、鏡をじっと見る。私はちゃんと生きているだろうか。
〇亦無無明尽(やくむむみょうじん)
世界が変わり続けていく中で、あなた一人だけ迷いのない状態でいられるわけがない。迷いのない人生なんてものはないと思えば、迷いのある人生をもっと愛することができる。
〇無智亦無得 以無所得故(むちやくむとく いむしょとくこ)
本当によく生きるためには学ぶことだけでなく、実際に実践してみることだ。智慧を得てから実践するのではなく、実践しながら智慧を学ぶのだ。わからないままに自分を信じながら、ひたむきに生きていくことだ。
〇故説般若波羅蜜多故呪(こせつはんにゃはらみったしゅ)
資本主義は命令の世界。般若心経は不と無ばかりの否定形の世界。「ない」の言葉は自分を律する厳しさを持つが、周りへの優しい目線であり、母の言葉である。あることよりもないことの潔い美しさ。どんどん捨てていけた人だけが大切なことに気づける。
〇羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦
(ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい)
訳:行こう、行こう、さぁ行こう。皆で一緒に行こう!
めでたい時に祝ってくれる友達がいること、喜びを分かち合える人がいること、守りたい人がいること、なんてありがたいことか。
「ある」ことよりも「ない」ことに着目してみる、目の前のことよりも、もっと広く広く考える。そして、広く俯瞰してみてみることにより心を落ち着かせる。
なかなか、できないことかもしれないけれど、写経体験で、わずかな時間ながら没頭できた瞬間は、いろいろなことを忘れて無心に近づいた気がする。
あっという間に時間が過ぎてしまう感覚にある日常から、たまには少し離れて落ち着く大切さを学びました。