『ロシアの論理』(武田善憲)
グローバル・パースペクティブDay2で学んだロシア。これまでロシアについてきちんと学ぶ機会がありませんでしたが、授業に合わせて読みました。2010年(メドヴェージェフ大統領時代)に発行された本書は、90年代の混乱からプーチン大統領の指導のもとのロシアの復活まで、独特のゲームのルールに着目して書かれています。
■ひとことまとめ
明文化されていない「ゲームのルール」をコントロールする
(印象に残ったところ‥本書より)
〇プーチン大統領の時代(第1期・第2期:2000~2008年)
ロシアが自らの国益を最大化するためのゲームのルールを模索し、その一部が確立し始めた時期。
〇政治のルール
ロシア政治に関与するアクターに課せられた不文律は、政治的野心を抱かず、ただ実務的に実務をこなすということ。プーチン大統領が行ったことは、ある意味単純で、最終決定者を明確にし、それをゲームのルールとして浸透させること。
〇政治・エネルギーのルール
ビジネス関係者たちは「正しく納税せよ」という基本ルールに従うのみならず、事実上まったく明文化されていない国家権力側の意図を読みながら経済活動を進めていく必要がある。「資源は国家のもの」というルールを理解することは、ロシアの現実を正しく認識するうえで最も有効な方法のひとつ。
〇ロシア国家統一のルール
「優先的国家プロジェクト」(教育、保健、住宅、農業、人口という社会問題への取り組み)と「宗教(ロシア正教)」
〇大統領権威の圧倒的な優位という状況を導いた要因
・ロシア人の伝統的なメンタリティが、権威に対する服従という政治的・社会的構造を生みやすい
・プーチン大統領が一つのスタンダードを確立した「国民との対話」の能力
・経済の好調により、人々が生活上の不満を政治に求めなくなった
〇政治が総体として機能不全である理由
・社会主義の時代の究極的に大きな政府を引きずっている
・政策に落とし込む作業は政府ではなく大統領府が担当しており、個別の省庁には多くが期待されていない
・政府は事実上スケーブゴードにされてきた
〇経済成長
・GDP:1870億ドル(1999年)→1兆6710億ドル(2008年)
・最も重要なのは、天然資源の価格によって簡単に経済状態が上下する構造から脱却し、より持続可能な経済モデルを構築することであった
・プーチン大統領の社会経済分野に対する基本的考え方
①エリツィン時代から継承している問題を解決するまでは、国家が新しい産業や経済の改革のために多額の資金を投入すべきではない
②経済の復興に向けた事業が進められている間は、国家が引き続き存在感を示し、積極的に介入してもよい
③戦略的な発展に関するすべての決定は国家によって行われるべきである(石油・ガス・原子力・国防産業等は、国家の問題として扱われ大統領レベルの決断にかかってくる)
④段階的に目標を定めて進めるべきものであり、それぞれの段階における達成目標がクリアされて次に進めていく
⑤同時に多くの問題を追求しない
本書ではほかにも外交政策や国民生活について記載されています。1991年ソビエト連邦が崩壊し、90年代後半には財政危機に見舞われたロシア。プーチン大統領が登場する前までは苦難の時代だったのでしょうが、そこから現在までの復活劇はすさまじいですね。プーチン大統領の手腕はもう少し掘り下げてみたく、プーチン大統領の書籍を追加購入しました。