『アドラー心理学の「幸せ」が1時間で分かる本』(中野明)
コーチングスクールで学んだアドラ―心理学。コーチング手法を学ぼうと思って学びに行ったら、たまたまアドラーベースであったという偶然の出会いから始まった、アドラー心理学。今では、アドラーの考え方に触れたこと自体がとても大きな価値だったと思っています。そのエッセンスが1時間で分かると表された本書。私の場合は、内容をよく考えながら読み進めたこともあり、3時間くらいかかりましたが、要点はわかりやすくまとめられています。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇最大の特徴は、「目的論」
人が特定の困難な状況にある場合でも、それは目標を持つその人が選択した結果。
・目的論:目的を根拠として現在の行動を説明する(生きるために食事をする)
・原因論(決定論)特定の原因を根拠にして結果を説明する(お腹が空いたので食事をする)
〇「劣等感」が人間の成長の原動力
他人と比較したとき、誰にでも劣っている能力や性質が必ず存在する(劣等生)。自分がもつ劣等性に負い目や恥を感じると、否定的な感情が生じる。このネガティブ感情が「劣等感」。劣等感を克服するために人間は集団を形成した。
〇独自の生きる態度「ライフスタイル」は変えられる
我々が直せるのは、彼の具体的目標だけ。目標が変われば、精神的な習慣や態度も変わるだろう。古い習慣や態度は不要になり、彼の新しい目標に適した新しいものが古いものに取って代わるだろう。人が持つ不適切な目的や目標に気づかせ、それを適切なものに変えるのがアドラー心理学。
〇人生の3つの課題
①共同体生活(交友あるいは社会との関係)
②仕事
③愛(パートナーとの愛や結婚)
〇人が「全体」に貢献しているときに抱く感情「共同体感覚」
常に共同体感覚を感じるような生き方、すなわち他者への貢献を前提にした生き方が幸福に至るための最大の鍵。
〇「人間が持つすべての悩みは対人関係にある」
良好な対人関係を築いて悩みを解消するには、まず自分自身が変わらなければならない。
〇「劣等コンプレックス」
自分の劣等生を過剰に意識すると、人は病的な状態に陥ることがある(劣等コンプレックス)。これに対し、不適切な方向で優越性を過度に追及する状態は「優越コンプレックス」と呼ばれる。
〇「課題の分離」
課題には2種類ある。自分でコントロールできる課題と、自分ではコントロールできない課題。コントロールできないのに、イライラしても、クヨクヨしても仕方ない。自分の課題と他者の課題を分離して考える(課題の分離)。
〇信頼と信用は別物
・信頼:担保や裏付けなしに、心から信じる
・信用:担保や裏付けをもとに信じる。
〇アドラーの思想と現実(より精緻で実践的な幸福論)を結び付ける3つの理論
②ポジティブの「持続的幸福論」
③チクセントミハイの「フロー体験論」
①生理的欲求
②安全の欲求
③所属と愛の欲求
④承認の欲求
⑤自己実現の欲求
⇒マズローは、自己実現者が追い求める課題を「Being(存在)価値」、略して「B価値」(=人間の本質的な価値)と呼んだ。
〇ポジティブの「持続的幸福論」
持続的幸福を増大する5要素
①ポジティブ思考
②エンゲージメント
③ポジティブな関係性
④意味・意義
⑤達成
⇒ポジティブ心理学では、上記の5要素を増大することで、刹那的な幸福や気分に左右される人生の満足度ではなく、人の持続的幸福を増大させることができると考える。
・「ロサダ比」‥ネガティブ感情を一つ抱いたら、3つのポジティブ感情を抱くようにする。そうすると、人はポジティブな状態を維持できる(3対1の法則)。理想は6対1。13対1を超えると人は制御が利かなくなる。
〇チクセントミハイの「フロー体験論」
・フロー体験とは、ある人が特定の行為に投入しているとき、その人が感じるトータルな感覚を指す。
・フロー体験を経験するための3条件
①目標
②迅速なフィードバック
③スキル(技能)とチャレンジのバランス
⇒スキルとチャレンジのバランスのとれるぎりぎりのところが、その人が置くべき短期的な目標。
〇目標に繋がる3つの円
①価値
②貢献
③強み
⇒スキルとチャレンジがぎりぎりでバランスする「フロー・チャンネル」上にある目標を右肩上がりで達成し続けることで、潜在能力は継続して開発され、その能力が他者への貢献に用いられる。
本書では、アドラー心理学にとどまらず、その考え方に、マズローやフロー体験論をミックスさせ、スキルとチャレンジのバランスを取りながら成長を続けていくという融合的な考え方が面白いところだと思いました。そして、さっそく、チクセントミハイのフロー体験に関する本を取り寄せました。広がりを感じます。