『経済学入門(ミクロ編)』(ディモシー・テイラー)
スタンフォード大学で最優秀講義賞を獲得した授業を再現した本書。池上彰さん監訳で日本語訳も分かりやすいと思います。マクロ編を読み、その流れでミクロ編も読んでみました。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇経済学における最も基本的な問い
①何を社会は生み出すべきか?
②どうやってそれを生み出すのか?
③生み出されたものを誰が消費するのか?
〇経済学を理解するための4つの考え方
①ものごとにはトレードオフがある
②利己的な行動が社会の秩序をつくる
③あらゆるコストは機会費用である
④価格を決めるのは生産者ではなく市場である
〇家計と市場の循環
①財市場:商品やサービスの対価
②労働市場:賃金及び福利厚生
③資本市場:利子や配当
〇需要と供給
・需要の変化が起きるとき
①社会全体で所得水準が上がったとき
②人口が増えたとき
③流行や好みが変化したとき
④代替品の価格が変化したとき
・供給の変化が起きるとき
①技術が進歩したとき
②天候などの自然環境が変化したとき
③投入物の価格が変化したとき
〇価格統制
上限価格規制の代表例は家賃規制。価格統制が選ばれる理由は政策コストが見えにくいため。
〇価格弾力性
・需要(供給)の弾力性が1より小さい‥需要(供給)量の変化<価格の変化
・需要(供給)の弾力性が1より大きい‥需要(供給)量の変化>価格の変化
・需要(供給)の弾力性が1‥需要(供給)量の変化=価格の変化
〇労働市場
労働市場が抱える4つの問題
〇資本市場
・資本市場の動きを理解するする鍵は、時間差(現在価値)
・3つの資金調達方法
①内部留保の活用、②銀行融資と債券発行、③株式発行
〇個人投資
8つの投資対象
①普通預金、②MMF(市場金利連動型投資信託)、③定期預金、④社債、⑤株式(優良株)、⑥株式(成長株)、⑦不動産、⑧貴金属
〇完全競争と独占
4つの競争形態
①完全競争:価格受容性あり
②独占:生産費用にいくらか上乗せして価格設定可能
③独占的競争(独占より完全競争に近い):差別化された商品で競い合う
④寡占(独占的競争よりも独占に近い):激しい競争または暗黙の結託
・競争の程度を測る簡単な目安:4社集中度
・さらに精緻な指標として、「ハーフィンダール・ハーシュマン指数」(HHI)
→数値が低いほど完全競争に近く、高いほど独占に近い
・米国の反トラスト法の禁止行為
①再販売価格維持
生産者が小売業者に対して一定の販売価格を提示し、それより低い価格で販売することを禁止
②排他的取引
生産者が小売業者に対して、競合業者からの購入を禁止する行為
③抱き合わせ販売
④略奪的価格設定
他社の参入を困難にするような低い価格設定を行い、独占的市場をつくったうえで価格を大幅に引き上げて高い利益を得る
〇規制と規制緩和
・総括原価方式(サービス提供にかかる費用をもとに価格を決定する仕組み)
コストがどれだけかかっても一定の利益が保証されるので、コスト削減や業務効率化が促進されない
・料金上限方式(一定の価格を定め、数年間料金が変わらないという取り決めを行う)
・「規制の虜」:規制をする立場の人が規制される側に思い入れを抱き、都合のいいように使われてしまう。
〇公共財
公衆衛生対策、道路、科学研究、教育など
・非競合性
だれが使っても、サービスが減らない性質
・非排除性
対価を払わない人がいたとしても、便益を取り上げることができない性質
経済学は、①幅広い、②小難しい、③実感が湧かない、④無機質・・・と
とっつきにくさ満載な分野です。しかし、経営に原理原則があるように、世の中の動きにも原理原則があり、経済の原理原則は経営環境の理解に繋がるというメリットがあるだけに、何とか基礎レベルを突破したいものですね。そんな分野において、本書は、入門書としてとっつきやすい内容だと思います。