『未来に選ばれる会社』(森摂+オルタナ編集部)
「企業の理念と社会的価値」の授業の参考図書として読んでみました。
企業が永続的になるには営利だけを追求するのではない。顧客のすぐ後ろには社会があり、「社会満足度」を高めることが企業の寿命を左右する。本書は、企業がCSRをスムーズに導入するための手引として書かれた内容です。CSRは、決して、余剰利益を使ってお付き合いでするものではなく、企業経営と表裏一体であるべきとの考えを持って書かれています。
■ひとことまとめ
コアバリューを軸に、ES⇒CS⇒SSへ発展させて企業価値を高める。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇CSRへの問い
①CSRとは何か?
社会の様々な要請に対する対応力であり、社会的課題を解決する力。
②CSRはなぜ必要か?
企業の価値を高め、未来の顧客を創造し、より永続的に存続させるため。
③どうすれば自社で展開できるか?
徹底的にステークホルダーと対話することに尽きる。
④何のためのCSRか?
企業価値を高めるため。
〇ES⇒SS⇒CSR
①ES(従業員満足度)
社員の士気が高まり生産性が上がる。
②CS(社会的満足)
自社のファンを増やし未来の顧客を創造する。
③SS
直接の顧客だけでなく、広く地域から支持されることで、次の受注に繋がる可能性がある。
〇広義のコンプライアンス
法令遵守はあくまで狭義のコンプライアンス。コンプライアンスの語源は、相手のことを慮り、相手のニーズをくみ取り、それに対応すること。企業などの組織が社会のニーズや要請をくみ取りそれに対応していくことが広義のコンプライアンス。
〇ソーシャルブランドの構造
企業のコアバリューには創業来のソーシャルな部分がある。ソーシャルな部分を活かす3つの領域(ECG))で解決すべき社会的課題を決め、事業展開する。
①Ecological、②Social、③Governance
キーワードは、「ソーシャル・グッド」「社会を良くする気持ち」「共感」。
①製品イノベーション型
②オープン・ソーシャル・イノベーション(相乗り)型
③イングレディエント(混ぜ込み)型
④キャンペーン/イベント型
⑤サポートバイイング(買い支え)型
⑥インフラ提供型
⑦ソーシャル・ミッション型
①ソーシャル・ミッションとCSR部署のゴール
②社会的課題の収集と優先順位
③外部他者との協働の検証
④自社ビジネスとしての検証
⑧引き算の広報戦略
・短くて覚えやすい名前
・記憶に残りやすいストーリー
・網羅的な幕の内弁当型より、1つに絞るうな重型メッセージ
〇引き算の広報5つのポイント
①ネーミング(4文字以下が望ましい)
②言える化(誰にでも説明できる明快さ)
③デザイン化(感性で人を動かす)
④差異化(横並びの活動では伝わらない)
本書では、このあと、19社のCSR実践例が紹介されています。
いずれの事例を読んでいても、「計画的に狙って取り組んでいる」という印象は受けず、「自分たちの事業を通じて販売のその先にある貢献感」とでもいうような、何かに役立ちたい気持ちを感じました。その貢献感が社員の意欲・愛社精神や社会からの認知・評価に繋がっていくのだろうという気がします。当社・顧客・社会の循環がうまく回り、利益が確保できるような仕組みに繋がると、自ずと長寿企業に向かって基盤が構築されていくのでしょう。
未来に選ばれる会社:CSRから始まるソーシャル・ブランディング | 森 摂, オルタナ編集部 | 本 | Amazon.co.jp