『マイケル・ポーターの競争戦略』(ジョアン・マグレッタ)<2回目>(〇)
経営戦略の入門書として、『ストーリーで学ぶ戦略思考』(荒木博行)を読むと次に、ポーターの戦略本を読みたくなるところですが、そこでお薦めしたいのが本書です。あらためて読み直しましたが、やはり良書。『競争の戦略』(マイケル・ポーター)などはボリュームも有り、一気にハードルが上がりますが、本書はその理論のエッセンスが凝縮されており、しかも、マイケル・ポーター氏の言いたいことが解説されているので、分かりやすいです。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇戦略
・好業績を持続的にもたらす優れた競争戦略のこと
・戦略は、競争にさらされていた組織がいかにして卓越した業績を達成するのか、その方法を説明する。
〇競争
・たいていの事業には「最高」なるものは存在しない。スポーツは勝者は一つだけだが、ビジネスの競争はもっと自由で多面的な、「独自性を目指す競争」
・最高を目指して競争する企業は、模倣を通して成長する。独自性を目指して競争する企業は、イノベーションを糧にして繁栄する。
〇5つの競争要因(5フォース)
・①買い手の交渉力、②売り手の競争力、③新規参入者の脅威、④代替品や代替サービスの脅威、⑤既存企業同士の競争。
・5つの競争要因を分析することで、業界がどのように「機能」し、どのように価値を創造、共有しているかがわかる。業界の魅力度を判断するために用いられることが最も多い。
・5つの競争要因分析を正しく行うことで、複雑な競争の本質を見抜き、業績を改善するための様々な措置がとれるようになる。
⇒「収益性を支える要因は何だろう?」「収益性は今後どのように変化するだろう?」「自社が生み出している価値の取り分を増やすにはどういった制約要件を克服しなくてはならないだろう?」
〇競争優位
・競争優位とは、企業が実行する活動の違いから生じる、相対的価格又は相対的コストの違い。
・業務効率を高めるだけでは、堅牢な競争優位は得られない。「ベストプラクティス」の優位が持続することはめったいないから。
・ベストプラクティスで競い合うことは、実質的に全参加者のハードルを上げることになる。業務効果は絶対的に向上するが、誰も相対的向上を実現できない。
・割高な価格を要求できることが差別化の本質。
〇価値創造
①特徴ある価値提案
・「どの顧客を対象にするのか?」「どのニーズを満たすのか?」「相対的価格をどのように設定すれば、顧客にしかるべき価値を提供しつつ、しかるべき収益性を実現できるのだろうか?」
・戦略の第一条件は、価値提案がライバル企業のものと異なること。ほかと同じ顧客に対応し、同じニーズを満たし、同じ相対価格で販売する企業に戦略はない。最高を目指して共創しているだけ。
②特別に調整されたバリューチェーン
・競争の第二条件は、独自の価値提案を実現するのに必要な特別に調整されたバリューチェーン
・バリューチェーンは、企業を戦略的に意味のある活動に分解する強力なツール。
・戦略と競争優位の核心は、活動にある。競争優位を確立するには、特徴あるバリューチェーンを通して、特徴ある価値を提供しなくてはならない。つまり、競合他社と異なる活動を行うか、同じような活動を異なるやり方で行うか。
・価値提案の選択を通して企業の行動に制約を課すことが、戦略には欠かせない。制約があるからこそ、異なる提供価値を選択した競合他社とは違う、独自のバリューチェーンを構築できる。
③トレードオフ(戦略のかすがい)
・トレードオフとは、戦略おける道路の分岐点のようなもの。どちらか一方の道を行けば、同時にもう一方を行くことはできない。
・トレードオフが生じる状況は、1)製品の特性が両立しない場合、2)活動そのものにトレードオフが生じる場合、3)イメージや評判の不一致が生じる場合
・トレードオフはその性質上、戦略を持続可能にする選択。なぜならトレードオフは対抗するのも、無力化するのも難しいから。トレードオフがなければ、優れたアイデアは簡単に模倣される。
・トレードオフは、「何をやらないか」の選択を「何をやるか」の選択と同じくらい重要なものにする。難しいのはこの決定を守り抜くこと。「多いことはよいことだ」の哲学にあらがうのは難しい。お馴染みの理屈が「機能の自己増殖」を招く。これは最高を目指す競争へと続く、転落の坂道。何かを万人に提供しようとすると、競争優位を下支えしているトレードオフを緩和してしまうことが多い。
・競争優位を構築し続けさせるには、独自性を曖昧にする様々な計画に、断固ノーと言い続けなくてはならない。
④適合性
・優れた戦略は多くの物事の繋がりに、つまり相互依存的な選択を行うことによって成り立っている。
・価値提案とバリューチェーンについて行う一連の選択が競争優位をもたらす。こうした選択がトレードオフを伴うとき、戦略は価値を増すとともに模倣しにくくなる。適合性は、これら2つの効果をさらに高める「増幅装置」。コストを下げ、顧客価値を高める。
・適合性の仕組みは、1)基本的な一貫性、2)活動が高いを補完または補強するときに生じる、3)代替
・適合性は模倣への障壁。何を模倣すべきか分かりにくくなり、たとえ重要な相互関係を理解できたとしても、全てを模倣するのは至難の業。
⑤継続性
・継続性は企業のアイデンティティを強化する
・継続性があればこそ、サプライヤーや販売店など社外の関係者が、企業の競争優位に貢献できる。
・継続性は個々の活動を改善するとともに、活動全体の適合性を高める。
・唯一必要なのは、今後5年ないし10年間で相対的に堅牢なのはどの顧客やニーズかという大まかな感覚
・戦略の代わりに柔軟性を方針にすることの問題点は、組織が何の主義主張も、何のとりえも持たなくなること。
まだまだポイントは多い本書ですが、ポイントは、「最高」を目指すのではなく、「独自性」を目指すこと。また、しばらく時間を置いて、本書に戻って来たいと思います。
- 作者: ジョアン・マグレッタ,マイケル・ポーター(協力),櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: 単行本
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