MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

十字軍物語Ⅲ(塩野七生)

『十字軍物語Ⅲ』(塩野七生)(〇)

 シリーズ最終巻。第三次~第八次十字軍までの約100年間が描かれています。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

■第三次十字軍

・1190年:リチャードとフランス王フィリップ二世、ヴェズレーで合流、第三次十字軍として中近東に向け出発。

・1191年:フィリップ、アッコンに到着し、攻防戦に参加。リチャード、キプロスを5日間で攻略。十字軍、ヤッファとアスカロンを再復。

・1192年:ルジニャンに代わり、モンフェラート候コラードイェルサレム王に即位するが、イスラム側に暗殺され、跡をシャンパーニュ候アンリが継ぐ。

・1193年:サラディン死去。

・1198年:インノケンティウス三世がローマ法王に即位。

 

■第四次十字軍

・1199年:リチャード死去。シャンパーニュ伯、ブロア伯、フランドル伯らフランス諸侯が第四次十字軍結成を誓う。

・1201年:第四次十字軍の使節、ヴェネツィアを訪れ協力を要請、受諾。

・1202年:第四次十字軍とヴェネツィア海軍が出発するも海上輸送の費用を支払えないために十字軍は主導権を握れず、ヴェネツィアの思惑に従って、アドリア海沿いの都市ザーラを進攻、制圧。ビザンチン帝国の息子からの要請により、父を殺害して帝位についていた叔父を打倒すべく行先をコンスタンティノープルに変更。

・1203年:十字軍とヴェネツィア海軍、コンスタンティノープルに到着。

・1204年:コンスタンティノープル陥落。新たに、ラテン王国が樹立される。

・1212年:少年を中心にした「少年十字軍」の動きが起こる。

 

■第五次十字軍

・1218年:ローマ法王に促された当時のイェルサレム王ジャン・ド・ブリエンヌが第五次十字軍を組織。エジプトのダミエッタに進攻。

・1220年:第五次十字軍、ダミエッタを制圧。

・1221年:第五次十字軍、ナイル河の氾濫を受け、撤退。

 

■第六次十字軍

・1227年:法王グレゴリウス、再三の十字軍遠征を要請するも、先延ばしにし続けるフリードリッヒを破門。

・1228年:法王、再びフリードリッヒを破門。フリードリッヒ、第六次十字軍を組織し、中近東に向け出発。

・1229年:フリードリッヒ、アル・カミールの3カ月の交渉の末、講和を締結。戦闘を経ないでイェルサレムの奪還に成功し、自領に帰国。

 

■第七次十字軍

・1244年:シリアの一部族がイェルサレムを占拠。15年にわたって守られてきた講和が破られる。

・1248年:法王インノケンティウス四世の要請を受けたフランス王ルイ9世、第七次十字軍を組織。

・1249年:第七次十字軍、ダミエッタに上陸。マンスーラへと軍を進める。

・1250年:第七次十字軍、元奴隷の兵士たちであるマメルークの軍勢との戦闘に敗れ、中心となる騎士たちが全滅。ルイ自身を含む第七次十字軍全体が捕虜になる。ルイ自身は莫大な保釈金を支払い、釈放される。

 

■第八次十字軍

・1270年:ルイ、再度の十字軍遠征を決意。第八次十字軍としてチュニジアへ向かう。第八次十字軍、チュニジアに上陸するも、疫病が蔓延しわずか1カ月で撤退。ルイ自身も現地で落命。

・1291年:マメルーク朝のスルタン、カリルがキリスト教側に唯一残されていたアッコンに総攻撃を仕掛け、アッコンが陥落。中近東のキリスト教側の領地はすべて失われる。主だった残存勢力キプロスへと避難。

・1306年:聖堂騎士団、フランスへと本拠を移す。フランス王フィリップ四世が法王クレメンス五世と教皇庁そのものをアヴィニョンへと移す。アビニョン捕囚の始まり。

・1307年:聖堂騎士団の弾圧が始める。

・1309年:病院騎士団、ロードス島に本拠を移し、以後ロードス騎士団を名乗る。

・1312年:法王、聖堂騎士団の解散を決断

 

〇「内政」と「外政」は、同じく政治ではあっても性質が違う。国内の政治では、まじめに心を込めて行えば、多くの場合結果は良と出る。外政の担当者には、内政を担当する者以上の賢明さが求められてくる。悪賢さ、悪辣、と言っても良いくらいの知力が求められるのである。

 

 約200年に渡った十字軍が何を残したのか。現代から見てみれば、イェルサレムを巡る複雑なパレスチナ情勢をつくるきっかけ。宗教対立を色濃くしてしまった時代。しかも、最初は巡礼目的から始まったが、その後、「神がそれを望まれるから」という大義名分のもと、宗教・政治・商人たちの思惑が入り込み、時代の流れを作った出来事。宗教対立の時代の節目を理解するうえでイメージが湧いたシリーズでした。 

十字軍物語〈3〉

十字軍物語〈3〉

 

   f:id:mbabooks:20170902202630j:plain