MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

二宮金次郎に学ぶ生き方(中桐万里子)

二宮金次郎に学ぶ生き方』(中桐万里子)

 二宮金次郎七代目子孫の著者が、祖母から伝え聞いた二宮金次郎の姿や考え方をまとめた一冊です。二宮金次郎って「薪を背負って、本を読んでいる銅像」は知っているけど何やった人?っていう方が多いのではないでしょうか。私も企業家リーダーシップの授業で学ぶまではそうでした(農民出身で600以上の農村を再建した方です)。

 本書は、二宮金次郎を理解するための1冊目ではなく、他で1冊読んでから、後日談的に「実はね・・」と裏話を知る感覚で読むと面白いと思いました。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇万兵衛伯父さん

 孤児になった金次郎は16歳から20歳まで親戚に引き取られていました。逸話として有名な、金次郎が勉強していたら、伯父さんから「養っているのだから勉強せずに働け!」とか、「灯りに使う油がもったいないから勉強するな」と言われた話しについて。

 →金次郎の両親は裕福でしたがお人よしで、農民がなまじ学問が好きだったために身分不相応なことに精を出して失敗した。伯父は金次郎が同じ道を歩んでいると危惧して農業に集中させたかったという背景があった。

 

〇前妻との関係

 前妻との間の子供が生後十五日で死去。金次郎は我が子を亡くした悲しみに向き合うこともなく、妻の悲しみに気付くこともなく、ただ夢中に働いていた。これが離婚の原因となり、再婚した金次郎は驚くほどの子煩悩ぶりを発揮し、完全なマイホームパパに変身。

 

〇表彰制度

 金次郎は若き日の自分が、忠真公の目にとまって表彰を受けた体験や、その時に感じた大きな誇りや喜びを人生の宝と語っている。憧れの存在から自らの行為への信頼や期待が注がれることがどんなにやる気を活性化するか、身をもって体験した。これが、村おこしで一貫して表彰制度を取り入れた背景になっている。

 

〇銅像で大切なのは一歩踏み出している「足」

 「忙しくても勉強が大事」と思われている金次郎の銅像。祖母から伝え聞いたのは、「あの姿で一番大切なのは、背負っている薪と、一歩踏み出している足。あの像は、本を読むことも、理想を追求することも大事だけれど、でも、どんな時も行動することを忘れてはいけない。どんな状況でも一歩を踏み出すことを忘れてはいけないというメッセージ」。つまり、「口だけの人間にはなるな。実践することを大切にしなさい」ということ。

 

〇現実の豊かな暮らしを目指す

 金次郎が役に立たないと思ったのは、マニュアルときれいごと。金次郎は道徳論者でも精神論者でもなく、具体的な現実を大切にしてい。「貧しくても清く正しく美しく生きよう」とは絶対に言わず、「現実的に豊かに幸せに生きよう。体制な人生を満ちて生きよう」「口だけ、頭だけの理想など意味がない」という考えを貫いた。地道なまでの小さな現実観察を重ねること。現実にこそ、目を向け、それらを尊ぶ。それが現実をよく見るということ。現場に慣れてしまわず、日常を当然視してしまわず、現実への丁寧な眼差しを持つように呼びかけている。

 

〇積小為大

 「小さなことを我慢してコツコツやらなければ、大きなことは為し得ない」という根性論や精神論とは違う。日常の小さな変化、小さな気づき、地道な現実観察。それらを積み重ねることが、大きな決断や行動を生むための大切にして確かな根拠になるという、極めて現実的で合理的な実践のための知恵や方法を述べたもの。

 

〇余談

 金次郎は、182cm、94キロ。当時の男性平均身長が155cmであったことを考えると巨漢であった。公式記録上「金次郎の指導」となっているものも、半ば「金次郎の脅迫」に近い体験だったのではないか・・・

 

 一族に伝えられるリアルな話は、説得力がありますね。努力タイプの方であることには間違いないと思いますが、思った以上に現実的で合理的な方だなと思いました。しかし、薪を背負ったあの銅像、、ホントは182cmもあったのかと思うと、ちょっと見方が変わりますね。。。

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