『反社会的勢力排除の「超」実践ガイドブック』((株)エス・ピー・ネットワーク)
本書は、危機管理実務の支援企業である著者が、反社会的勢力排除をめぐる動向、反社チェックの本来的なあり方と限界、グレー認定先の継続管理のあり方、排除における具体的な注意点について、まとめた実務書です。
(ポイント‥本書より)
〇情勢
・平成26年度の暴力団員、準構成員数は53,000人。偽装離脱の増加、偽装解散といった面を考慮する必要があり、暴力団という枠にこだわらない反社排除の考え方を明確にする必要に迫られている。
〇暴排条項
企業の対策で最も多いのが、「契約書等に暴排条項を盛り込む」。たたし、平成22年以前に導入した暴排条項には、「共生者」や「元暴力団員」が含まれていない可能性が多く、現時点における排除実務においては問題になる可能性がある。
〇休眠会社や会社分割制度が悪用されるケース
休眠会社が簡単に売買されたり、ペーパーカンパニーや偽装のハコとして利用されるケースがある。登記情報を精査すると、ある時点でまったく別の企業に様変わりしている状況がみられるため、反社チェックにおいては、相手方企業の来歴を丁寧に過去に遡って確認していくことも重要。
〇本人確認の脆弱性
犯罪者側がスキームを熟知してすり抜けるものと、事業者側が形式的な確認にとどまり、背後の犯罪組織の関与を見抜けないものとに二分される。
暴力団関係者が自らの名前で直接契約を申し込むことはあまり考えられない。審査段階で申込人について、偽名・借名・なりすまし等の犯罪スキームの可能性を疑う観点から、厳格な本人確認手続きや実質的な受益者等の把握が行わなければ、見抜くのは難しい。
→厳格なリスク管理を通じて問題の存在を察知し、現場に「問題を見つけに行く」「問題の解消を図ろうとする」という明確な意思、不作為とは真逆の姿勢が必要。
〇介在者
反社勢力の企業への侵入には、必ず仲介者が存在するように、反社勢力の関与する犯罪インフラには、媒介者(加盟店・決済代行会社)の存在が組み込まれている。
〇実効性の確保(「認知」「判断」「排除」)
現場レベルの暴排意識やリスクセンスの自発的な発露が最も重要。
そのうえで、反社勢力が入り口をすり抜けて入り込んでいる可能性を意識した業務運営を行うべき。例えば、現在の商号だけでなく、以前の商号、退任した役員、重要な取引先、株主、主要従業員、顧問・相談役などをチェックに入れる。
〇データベースの限界
・警察や暴追センターの提供情報が全ての反社勢力をカバーしているわけではない
・共生者やグレーゾーンに関する情報はあまり期待できない。
・警察からの情報提供も内部通達に基づいたもので、条例上の義務の履行に必要な範囲で情報提供するため、相談しても結果的に情報提供が認められないケースもある。
〇排除の流れ
(端緒の把握~証拠固め)
・端緒の把握→実体把握→リスク評価→弁護士相談→一時判断→警察相談
(排除実務)
・事前準備→最終決定→相談・共有→社内対応→排除実施→モニタリング
実態を掴んだら、とにもかくにも弁護士・警察へ相談する
最近はこの手の書籍の内容が充実してきているなと感じます。基本的な考え方を理解すれば、あとは実務に落とし込む。入口対策はだんだん難しくなってきている。そして、現実的に排除のケースに直面すれば、弁護士・警察に相談しながら進めるしかないでしょう。そういうことに気付く内容です。