『カオスの帝王』(スコット・パタースン)
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の記者として20年以上のキャリアを持つ著者が、不確実性が増し、存亡リスクさえも高まる世界にどう適応すべきか。カオスを制したファンドの帝王たちからその原則と思考法を学ぶ一冊です。パンデミック、テロ、暴動、政治紛争、サイバー攻撃、気候変動、破壊的技術の出現など、市場を混乱に陥れる予測できない極端な減少(ブラックスワン)に気づき、行動を起こすための視点が書かれています。ポイントがまとまっているというよりは、何があり、関係者がどう動いたかという点に焦点を当てて読みやすくまとめられたという印象でした。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ファンドマネジャーの価値観
・ファンドマネジャーは普通、投資家のために利益を上げるかどうかではなく、ベンチマークとなる同業のファンドマネジャーに比べてどれだけ成績が良いかで判断される。
・テクノロジー系のファンドマネジャーが10%の損失を出したとしても、ベンチマークが12%の損失を出していれば、2ポイント上回ったのだからと多額のボーナスがもらえる。
・ファンドマネジャーが仲間同士で模倣し合うことに強いインセンティブを持ち、同じ方向に移動する動物の群れ同然の行動をとるのだから、投資家にとっては不利益になる。群れの中にいれば安全であり、市況が悪い年に一人だけ目立ってしまうリスクを冒すインセンティブはほとんどない。プロの投資家のほとんどは狼の皮を被った羊のようなもの。
◯シカゴ商品取引所で長く活躍するトウモロコシトレーダーからの学び
・「成功するトレーダーは負けを愛し、勝つのを憎む」「喜んで損をしなければならない」という哲学。「そして儲けようと思わないこと。これは人間の本性に逆らうことだから、克服せねばならん」
・つまり、ポジションから損がで始めたらすぐに売れということ。そのうち値を戻すと思おうが関係ない。市場の判断が間違って思おうが関係ない。その日の朝の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がなんと書いていようが関係ない。損切りせよ。喜んで負けろ。そして次に行け。「バカと思われる行動をとってバカを見た気持ちになれ。
・この戦略のキモはトレーダーの損失リスクを限定するところにある。多少は損をするかもしれないが、すべてを失うことは絶対にない。
・越えなければならない山は、続けることのとてつもない難しさ。人間の本性に逆らっていた。一度でも守れなければ大損をする。
株式だけでなく商品先物のトレーダーなど、プロ中のプロの投資家が何を考えているか。ブラックスワンと言われるごく稀なカオスの時ほどその進化が試され、大きな損失を避け、むしろ莫大な利益を獲得している人もいて、この世界にいる人たちの一面が垣間見れます。自分にはない価値観や世界観に触れる良い機会でした。

