『心の疲れをとる技術』(下園壮太)(〇)
自衛隊メンタル教官の著者が、自衛隊で教えている疲労コントロールの方法を一般向けに解説したメンタルヘルス講座です。平易にイメージしやすく書かれている良書だと思います。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ムリを重ねる人の共通点
・それほどムリをする必要がないように思える状態でも、人間は自分を追い込む癖がある。特に日本の社会ではムリをしがちだし、周囲もそれを称える。
・本人は自分がムリをしているという自覚がない。
〇ムリが表れる4つの側面
①体、②人間関係、③行動、④心
〇ムリは3段階で進行する
①第一段階(普通の過労段階)
②第二段階(別人化の始まり)
「2倍モード」‥疲労の回復に普段の2倍の時間がかかるようになる
③第三段階(別人化)
「3倍モード」‥疲労はいつもの3倍感じるし、回復にも3倍の時間がかかる
〇ムリが深刻化しやすいわけ
・ムリが溜まりやすい2つの特徴
①子供の心の強さ
⇒頑張る自分が好き、我慢する、あきらめない、全部やる、一人でやる、完全にやる
②短期目標で頑張るクセ
⇒短期目標を連続させて走り続ける。子供の心の強さと相性が良い
・ムリの深刻化に気付かない4つの理由
①気づきにくい頭脳・感情労働が主体
⇒疲労の質(だるさ、頭の重さ、眠さなど漠然としか自覚できない)
②麻痺するシステム(むしろハイ)
⇒一時的に痛みを感じない人が持つ機能。長くは持たない。
③過去や他人と比較して判断するクセ
⇒他の人も頑張っている、過去はもっと大変だったという気持ち
④2~3倍モード(より負担に)
⇒疲れてくると同じ事でもより多くのエネルギーを消耗する。イベントを避けがち。物事を決められなくなる。
・深まるムリをとめられないもうひとつの理由
別人化(自分を責め、自信低下、しがみつき)
〇個人のムリの防ぎ方
・ムリを防ぐには第2段階までが勝負
第3段階で別人になると、プロの力を借りないとうまく対処できなくなる
・時間で疲労を管理する
作業の時間を決めてやる。疲労はもともと気づきにくいものという発想。
・頑張らない自分を認める
①頑張る自分を捨てるのではなく、状況に応じて頑張らないという選択をする
②なりたい自分を10、現在を0とすると、具体的行動を3~7の間にイメージする
⇒3~7バランスでの目標設定は、結局、自己評価の向上につながっていく
・第2段階以降は、静のストレス解消法
ヨガ、軽い散歩、話をする、森林浴、庭いじり、俳句・短歌、囲碁・将棋、読書、音楽、映画、プラモ、料理、日曜大工など
⇒静のストレス解消法は動のストレス解消法に比べて、瞬間的な快感が少ないが、続けているうちにじわじわその良さがわかる
・第3段階に達した時は専門家の力を借りる
第3段階はこれ以上の努力を要求してはいけないレベル。基本的に休養しエネルギーを回復することを最優先してもらう。仕事を休んだり、人の助けを求めることを本人任せにしてもなかなか進まない。
〇組織のムリを防ぐために上司がするべきこと
・上司は部下を早い段階で戦線離脱させる
部下に変に気遣って、または、職場をいじりたくないという事なかれ主義から対処が遅れると、結局、優秀な部下を失うことになる
・小さなムリは当たり前だが、大きなムリはしっかり予防する
大きなムリはリーダーシップの失敗。リーダーは自らの責任を感じなければならない。
・目標転換をできるのは上司だけ
責任やプレシャーがかかる仕事に対し頑張る社員は、無意識のうちに過大な目標を立てて走り続けることが多い。体調変化、行動変化、単純ミスの増加、無断欠勤や成績の低下に気付くこと。
⇒2段階の目標設定:「必ず達成すべき目標」「達成することが望ましい目標」
・本人が苦境を表現できるために
①言い出せる知恵の提供
②言い出せるきっかけづくり
③言い出しやすい雰囲気づくり
メンタルヘルスは、「気づき」がポイントだと言われますが、じわじわと変化する状況では、なかなか気づきにくいものです。本書では、ムリの3段階モードとして、変化をイメージしやすいように図示して解説されている点が良いと思います。人間関係、ストレス、コミュニケーションなどは永遠に尽きることのないテーマであり、これからも追い続けたいと思います。
自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)
- 作者: 下園壮太??
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/04/01
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