第十巻「すべての道はローマに通ず」は、単行本全15巻の中でも異色の1冊。
通常の時系列の物語ではなく、ローマ帝国を支えたインフラにスポットが当てられ、ハードインフラとしての街道、橋、水道、ソフトインフラとしての医療、教育がまとめられています。
すべての道はローマに通ず、の「道」とは、道路の意味だけではない、そしてそれが、ローマ人の真の偉大さであることが分かる興味深い内容です。
(第十巻のポイント‥本書より)
〇街道
・ローマの街道とは、幹線となればことごとく、一面に大石を敷き詰めた4メートルを越える車幅と両側3メートルずつの歩道の計10メートルを越える幅を持ち、深さも、4層から成る1メートル以上にもなるよう設計されていた。「水平」であるこの街道を「垂直」に立てさえすれば、堅固な防壁に一変する。
・長城を建設した支那人と街道網を張り巡らせたローマ人の違いは、国家規模の大事業とは何であるべきかという一事に対する考え方の違いにあった。防壁は人の往来を断つが、街道は人の往来を促進する。自国の防衛という最も重要な目的を異民族との往来を断つことによって実現するか、自国内の人々の往来を促進することによって実現するか。
・ローマ街道はどうあるべきかのモデルを示したのがアッピア街道。
①軍団の敏速な移動を目的にした、軍用道路としての機能を十分満足させた
②政略道路でもあらねばならない。ローマ街道の特色の一つは、町の中央を通り抜けていく点。勝者による敗者の同化、つまり両社がともに参加する運命共同体の形成に、他のどの手段のよりも貢献したのがローマ街道。征服したとたんにそこまでの街道を通してしまうのがローマ人の一貫したやり方。
〇橋
・ローマ人は、橋を「街道の弟」と呼んでいた。互いに助け合う中であらねばならない。
・ローマ時代の橋の特徴
①石造りの橋
②タイコ橋のような上がって下りる橋ではなく、水平にかけられた橋
③橋であろうと街道の延長線上に建設された
④橋もそれに通ずる街道同様の舗装がなされている場合が少なくない
⑤橋の上も車道と歩道は厳然と区別されていた
⑥橋の両端には、凱旋門型のアーチの門が立っている場合が少なくなかった
〇印象に残った言葉など
・ インフラストラクチャーくらい、それを成した民族の資質を表すものはない。
・良きリーダーは、マキャヴェッリによれば2種に分かれる。一方は自分に何でもやれる能力があるところから、何でも自分一人でやってしまう人。他方は、自分には何でもやれる能力がないことを知っていて、それゆえに自分にできないことは他者に任せる人。ユリウス・カエサルは前者であり、アウグストゥスは後者であった。