MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

スタンフォードでいちばん人気の授業(佐藤智恵)

スタンフォードでいちばん人気の授業』(佐藤智恵

 本書は書名のとおり、スタンフォード大学で人気の9つの授業の要点をまとめた一冊。大きく、①人間を探求する授業、②人間力を鍛える授業に二分されており、どれも興味ある内容でした。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

1.ストーリーの力

〇「ストーリーの力」の科学的根拠

①記憶に焼き付く

②データや数字よりも人を動かす

③人間の脳に訴えかける

 

〇ストーリーがもたらす3つの効用

①ストーリーは製品や自社のブランドを得るのに大きな威力を発揮する

イノベーションの指針となる

③社員のやる気を刺激するのに最も効果的

 

〇人を動かすシグニチャー・ストーリーの特色

①ストーリーそのものがおもしろい

②人々が素直に信じることができる話

③人を巻き込むことができる

 

〇「人間は何かを購入しようとする時、論理的に決断しているわけではない。まず感情が決断し、その決断をあとからロジックで正当化している」(アーカー教授)

 

2.マーケティング

〇マジカルナンバー7±2の法則

 「私たちのワーキングメモリ(作動記憶)には限界がある。人が一度に覚えられる丹後の数は「7±2」(5~9個)。テクノロジーが進化したからといって、人間の脳が進化するわけではない」(レバーブ准教授)

 

〇決断疲れ

 人間は数多くの決断を下していくと、精神が疲弊し、決断を放棄するか、質の低い決断をしてしまうということが明らかになったが、「決断疲れ」という症状を知っていると、私たち消費者にとって、次のようなメリットがある。

①衝動買いを減らすことができる。

②専門家に任せるという選択ができる。

 

3.イノベーション

〇3つのイノベーション

①破壊的イノベーション

②持続的イノベーション

③効率化のためのイノベーション

 

〇両利きの経営

 持続的イノベーションや効率化のためのイノベーションを起こすことを得意とする既存の組織で、破壊的イノベーションを新たに起こすのはとても難しい。だから、とにかく別会社、別組織をつくって、そこでどんどんイノベーションを起こして、最終的には社会に還元すればいい。「両利きの経営」とは、大規模な成熟事業と、冒険的な新規授業を、同じ企業の中で同時に推進する経営方法。

 

4.社内政治の力学

〇偉大なリーダーの事例から学ぶ際の注意点

 全員が全員、参考になるとは限らない。彼らがトップの地位に登りつめるまで、あるいは地位を維持するためにどんな努力をしたか、に注目する必要がある。

 

〇日本人へのアドバイス

①職場はサソリや毒グモがいるジャングルだと認識せよ

②競争から降りるな

③出る杭になれ

④周りの人からの評価に気を配れ

⑤出世した人の出世方法を研究せよ

 

5.リーダーシップ

〇採用

 信頼関係で結ばれた組織を作るためには、人材の活用が生命線となる。どこそこの大学を卒業したからとか、大学の成績が良いからとか、こういう技術スキルを持っているからといったことではない。顧客のために尽くす精神を持っているか、企業文化に合っているかどうか、信頼できる人かどうか、という基準のほうがずっと大事。

 

〇顧客も従業員も幸せにする会社

 経営陣が現場のスタッフの判断を心から信頼していて、現場に大きな裁量権を与えている。特にカスタマーサービスの迅速な対応には舌を巻く。

 

〇情動感染

 情動感染が起きるのは、人の脳に「ミラーミューロン」という特殊な細胞があるから。ミラーニューロンは、他人の経験や感情をシミュレーションするための細胞であり、無意識のうちに他人の感情に反応して自分の中で再現してしまう特性がある。この細胞は周りの人から楽しい気持ちだけではなく、怒りやストレス、不安なども全部取りこんでしまう。

 

6.スタンフォード流会話術

〇言いにくいこと

 言いにくいことを言うときは本題から入る。そのうえで相手の意見を聞く。それが相手に対する敬意。日本人は、親しい間柄であるほど、「あたためトーク」から会話を始めてしまう。そのほうが相手を思いやっていることになると信じているから。しかし、言いにくいことを最初に言わないのは、かえって逆効果。呼び出しておいて、長々とこちらが話せば、相手をますます不安にさせる。

 

〇多弁

 人は緊張したり、不安になったりすると多弁になる。自分に自信のない人は、ひたすら話し続け、同じことを何度も繰り返す傾向にある。

 

7.スタンフォード流交渉術

〇交渉=戦闘?

 「交渉して負けるのが嫌だ」という考え方をあらためるべき。交渉を避けようとするのは、交渉=戦闘という先入観があるから。交渉とは、相手と共同で問題解決をする手段であり、参加者全員がより良い結果を得るために行うもの。相手と情報を共有することによって、思いもよらなかった解決策や、自分がもっと得する解決策が見えてくることもある。

 

8.コミュニケーション

〇AIM

①Audience(聴衆):どんな属性の人に伝えるのか

②Intent(目的):伝えることによって相手に何をしてほしいのか

③Message(メッセージ):どんなメッセージを伝えれば相手は行動してくれるのか

 

〇プレゼンスピーチ5つのフォーマット

①導入⇒本論⇒まとめ

(本論を細分化)

②問題提起、原因、解決方法、解決策

③過去、現在、未来

④長所、短所、推奨

⑤状況、問題提起、解決策

 

9.マインドフルネス

〇マインドフルネス瞑想

①足の裏を床につけ、イスに腰掛ける

②姿勢をまっすぐ正す

③目を閉じて静かに呼吸する

④呼吸に意識を向ける

⑤雑念が湧いてきたら、湧いてきたなと気づき、手放す

⑥再び呼吸に意識を戻す。

 

 どの項目も、それぞれ1つの科目・領域であり、深めていきたいところですが、まずは自分の興味・関心がどこにあるのか、発見するというような読み方ができる本だなと思いました。社内政治の力学なんかは、専門分野として確立しづらい分野なので、逆に興味が湧きます。

スタンフォードでいちばん人気の授業

スタンフォードでいちばん人気の授業

 

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