『クリエイティブ・マインドセット』(トム・ケリー&デイヴィッド・ケリー)(◯)
著者はIDEOの兄弟創業者。IDEOといえば、世界的なイノベーションとデザインのコンサルティング会社。アップルの初代マウスをはじめとした数々のヒット商品、スタンフォード大学で「デザイン思考」のプログラム「dスクール」を創設するなど、クリエイティブの領域の世界有数の企業を運営するなかで生まれてきた、クリエイティブな人材を生み出す仕組みや観点がまとまった一冊。デザイン思考を学びたい方であれば、とても役立つ一冊だと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯日本の読者へのメッセージより
・世界5カ国の5,000人を対象とした調査によると、日本以外の国の回答者たちは、日本が世界で一番クリエイティブな国だと答えた。
・ところが、日本が最もクリエイティブだと回答した人の割合は、日本人が一番低かった。
◯成功するイノベーション
・成功するイノベーションは、技術的要因、ビジネス的要因のバランスをとるとともに、人間中心のデザインによる調査の要素を何かしら取り入れている。
・顧客の真のニーズや欲求を考慮しながら、技術的実現性、経済的実現性、人間にとっての有用性の交わる点を模索することこそ、IDEOやdスクールで「デザイン思考」と呼ばれている方法論の一部であり、創造性やイノベーションが生み出されるプロセス。
◯恐怖を克服する
・最終的に天才的ひらめきが訪れるのは、他の人よりも成功率が高いからではない。単に挑戦する回数が多いだけ。他の人よりもゴールに向かってシュートを打つ回数が多いということ。
・「真の成功基準とは、24時間に詰め込める実験の数だ」(エジソン)
・新しいアイデアが浮かんだときには「実験」と呼び、ただのテストだと全員に印象づけよう。みんなの期待を下げれば、たとえ失敗しても、キャリアに傷をつけることなく教訓を学べるはず。
・失敗から教訓を学ぶには、失敗に責任を持つ必要がある。
◯クリエイティブな力を伸ばすために日頃から心がけたい方法
①クリエイティブになると決意する
②旅行者のように考える
③「リラックスした注意」を払う
④エンド・ユーザーに共感する
⑤現場に行って観察する
⑥「なぜ」で始まる質問をする
⑦問題の枠組みをとらえ直す
⑧心を許せる仲間のネットワークを築く
◯計画するより行動する
・すぐに最高の結果を出すのは難しい。だからこそ、素早く改良を続けていくべき。
・制約があるからクリエイティブになる。問題点や不具合には、たいていデザインの機会が隠れている。ただ文句を言うのではなく、「どうすればこの状況を改善できるのか?」と自問してみよう。
・制約を素早い行動へ結びつけるには、①問題の実行可能な部分に取り組む、②目標を狭める、③中間目標を定め、社会的な協定と結びつける。
◯場所の持つ力
・仕事の日に活動時間の大部分を過ごす職場環境に、イノベーションの文化を組み込むという視点が抜け落ちている。
・パーティにふさわしい雰囲気が「心の中のパーティ熱」を呼び覚ますのと同じで、職場にふさわしい環境は、時として潜在的な創造力を呼び覚ます。
・オープンスペースはコミュニケーションや透明性を促す。幅の広い階段は別の部門の人々同士の偶然の会話を促す。ホワイトボードのように書き込めるスペースがあれば、自然発生的なアイデア創造セッションを促す。専用のプロジェクトスペースはチームの結束力を高める。だから、職場のスペースを意図的に選ぼう。
本書を読んでみると、クリエイティブになることは、深く考えることというよりは、行動しながら考えること。心のゆとり、脳のゆとりも必要で、行動しているうちに、心や脳の隙間を埋めるアイデアが埋めてくれるようなイメージ。一方、まったくの行動だけでもだめで、ヒントを得たところからどのように実現していくのか、工夫や実行力も試される。右左脳、論理と感性、バランスが試される領域でもあると思います。