『日本企業のコーポレートファイナンス』(砂川伸幸ほか)<2回目>(〇)
昨年4月のファイナンス基礎受講時以来、2回目。ファイナンスⅡのDay3がM&Aの事例なので、M&Aを中心に復習してみました。
ファイナンスを勉強していて感じるのは、基礎理論は勉強したけれど、いざ事例にあたって、手を動かして企業価値を計算する際に、「あれ?どの数字を使って計算するんだっけ?」という、実務レベルでの具体的な作業ですぐに止まってしまう。
ということもあり、「ファイナンスはある程度、基本的な考え方を勉強したら、事例に当てはめながらさらに理解を進める」という勉強に重点を移しています。
本書は、事例に基づいて実際に企業価値を計算している事例が紹介されており、実務上どのように考えて、どんな数値をどのような根拠で使って企業価値を算出しているのか、実務に近い感覚で読める点が優れています。
(備忘‥本書より)
〇株式資本コストの推定(CAPM:キッコーマンの株式資本コスト推定事例)
①リスクフリーレート
【定義】元利金の返済が確実な金融商品の市場レート
【何を使うか】
国債10年物レート。過去1年間の実績平均レートを使用。
②β(ベータ)
【定義】株式市場が1%変化したときに株式リターンが何%変化するのかを表す。個別株式の相対的なリスクを示す係数。
【何を使うか】60ヵ月のデータから算出されるキッコーマンの対TOPIX未修正β(週次)を使用。
③マーケットリスクプレミアム
【定義】株式市場の期待リターンと無リスク利子率とのかい離幅。株式は元本返済の保証がないため、期待収益率は高くなる。
【何を使うか】TOPIX収益率と10年国債利回りの差額の過去35年間平均。
〇 EVAのエッセンス
EVAは、企業活動が生み出す成果と資本コストの差額。「企業活動の成果」が「資本コスト」を上回るとき、価値が付加される。企業活動を高めるためには、資本コストを上回る成果を出すしかない。採用している企業によりアレンジがあります。
【大阪ガス:SVA】税引後営業利益ー総資本コスト
【Panasonic:CCM】(営業利益+受取配当)ー投下資産コスト
【三菱商事:MCVA:】事業収益ー(最大想定損失ー株主資本コスト)
〇EVAによる撤退基準
【キリンビール】EVAのマイナスが続くと事業の見直しを検討
【Panasonic】3年でCCMを黒字化できない事業は撤退候補
【日立製作所】2年でEVAを黒字化できない事業は撤退・売却対象
〇M&A
・M&Aは、「地の利(シナジー効果、合理化効果)、人の和、天の時」+「売り手と買い手の価値評価」
・価値評価
■(最低価格)現状のもとで事業が生み出すFCFの現在価値
■(最高価格)買い手企業のもとで事業が生み出すFCFの現在価値
〇EBITDAマルチプル法
DCF法と異なり、マルチプル法には、将来のキャッシュフローを予測したり、割引率を推定したりする作業が必要ない。そのため、マルチプル法は企業価値評価の目処を付けるのに適している。
・企業価値評価=EBITDA×EBITDA倍率(マルチプル)
・EBITDA=税・利子・償却前利益。→実務上は、営業利益+償却費で算出
・EBITDA倍率=企業価値(営業資産の評価額)÷EBITDA
・企業価値(営業資産資産の評価額)=(有利子負債-金融資産(現預金・有価証券))+株式時価総額
現預金と有価証券を控除するのは、金融資産を控除し、純営業資産(企業価値)を算出するため。
①業界平均EBITDA倍率を算出する(例:13倍)
②対象企業のEBITDAを算出する(例:390億円)
③営業資産:390億円×13倍=5000億円
④5000億円(営業資産)ー2000億円(純有利子負債)=3000億円(株式時価総額の推定値)
⑤3000億円÷34000株=@880円(推定)
→市場価格@400円台
→業界平均のマルチプルで見ると割安だったことが分かる。
(ただし、セグメントごとの売上が異なる関西私鉄企業の平均が妥当かは疑問が残る)
基礎理論を終えたら、次は、事例を見て、どうやって計算しているのかを読み解いて、頭を整理してみる・・。時間が経てば、忘れてしまうのですが、また次の事例を読み解いて、考え方を整理してみる。ファイナンスの勉強は、この継続のような気がします。
ファイナンス基礎(2014/4~6)、ファイナンスⅠ(2014/7~10)、ファイナンスⅡ(2015/1~)と受講してきたこともあり、前回読んだ時に比べてスピードアップしているのは確か。徐々に前に進んでる!