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MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。MBA講座と歩む読書生活。講座関連の書籍、講師お薦め本などを紹介。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、自己啓発本、ビジネススキルなど、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

1940年体制(野口悠紀雄)

グロービス経営大学院 グローバル・パースペクティブ 私のお勧め本

1940年体制』(野口悠紀雄)(3回目)(〇)

 グローバル・パースペクティブのDay6で「日本経済の失われた20年」を学びましたが、失われた20年を学ぶなら戦時~戦後経済も学ばないと!と思い、再読しました。最新版は2010年版ですが、再読した2002年版とは最終章(現時点での1940年体制)が変わっている程度のようです。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇1940年に着目するワケ

・戦時経済体制に向けての諸改革は1940年前後に集中している。これが日本型経済システムとなり、いまだに経済の中核を構成している。

1940年体制の基本的な枠組みは、①日本型の企業構造、②間接金融、③官僚体制、④財政制度、⑤土地制度

 

〇日本型の企業構造

・40年体制以前:株式保有は大株主集中。配当性向が非常に高い。労働市場はかなり自由市場。労働者の勤務年数は短い。労働組合組織率は非常に低い。自家生産方式主体。

・配当規制(1939年:会社利益配当及資金融通令):企業の配当に規制

・物資・物価の統制令施行。生活必需物資の公定価格を定める

・賃金:1939年初任給が公定。賃金統制を実施。定期昇給の仕組みが定着。

・組合:労使関係調整のため、1937年産業報国会が作られ労働者組織率が4割を超える

・下請制度:戦時期の増産対応のための緊急措置として下請方式を採用

 

〇間接金融

・40年体制以前:直接金融の比重が高い。財閥の力が強い。金融市場の統制が希薄。

・1937年臨時資金調整法:設備資金配分の統制

・1937年事業資金調整標準:軍需産業を融資の最優先順位に置くべきことを定める

・1939年会社利益配当及資金融通令:大蔵大臣日本興業銀行に対して融資などの命令を成し得ることを定める(日本興業銀行に強大な権限が与えられる)

 企業の配当規制→株式市場低迷→間接金融システムの発展→メインバンク制度の始まり→金融統制団体令(1942年)により共同融資の拡大→日銀法改正(1942年)で金融統制体制が完成。

・1940年銀行等資金運用令:日本興業銀行以外に対しても融資命令が発せられる

資金軍需産業へ流入。政府は命令融資制度で資金の配分をコントロール可能(1941年は57%が航空機産業向け)。産業構造は軽工業が低下し重化学工業が上昇。

 

〇官僚体制

・40年体制以前:戦前期の日本では、民間経済活動に対する政府の直接的で全般的な介入が行われていたわけではなかった。

・1941年鉄鋼統制会組織要項案、重要産業団体令:業界ごとのカルテルを結成。戦後の政府と業界団体の原型が成立 

  

〇財政制度

・40年体制以前:税収は間接税中心。

・世界で最初の源泉徴収制度、法人税が独立の税となるなど、所得税法人税という直接税を中心に据えた税体系が形成。

・1940年地方税制調整交付金制度:国税を地方に交付し、地方団体間の財政力の調整と財源保障を図る。地方財政が中央に依存するようになった。

社会保障制度も政治体制として整備。1938年:国民健康保険法、1939年:職員健康保険法、1941年:労働者年金保険法→1944年:厚生年金。これらの施策の直接的な狙いは、労働者の転職防止、徴収した保険料を戦費に充てるというもの。

 

〇土地制度

・40年体制以前:借家住まいが一般的で、住居の流動性が高い。賃貸借期間や地代をめぐる借地人と地主の紛争が増加するにつれ、借地人の権利を保護するための提案が国会で議論された。

・1939年地代家賃統制令、1941年借地借家法改正:地主・家主の解約権の制限。正当な事由がある場合を除いては借地・借家人の希望により契約を延長できるようにした。→労働力が農村から都市に引き出され住宅不足が顕著になったこと、世帯主が戦地に応集した後に残された留守家族が借家から追い出されることを防ぐ目的。

→借地については強い意志を持って導入したのではなく、借家法との均衡を保つために導入したもの。しかし、この規定は戦後極めて大きな意味を持つようになった。

 

 本書はここまの骨格部分だけでもまだ第四章。第十一章までさらに細かな分析・解説が続きます。40年体制が現代にどうつながっているのか、変化してきたのかを知ることは、今の日本経済に対する理解が一段と深まると思います。 

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