『人はなぜ不倫をするのか』(亀山早苗)
ちょっと興味惹かれるタイトルだけど、なかなか手に取りにくい・・・そんなテーマですね。本書が面白いのは、不倫とは関係ない専門家がそれぞれの専門テーマから不倫について語っている点です。ジェンダー研究、昆虫学、動物行動学、宗教学、心理学、性科学、行動遺伝学、脳科学・・。結論としては、生物としては不倫は自然の行為だが、そこを倫理感で保っているのが人間ということでしょうか。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇第1章:ジェンダー研究から不倫を考える~人はなぜ不倫をしないのか~
・人はなぜ不倫をしないのかのほうが不思議。その前段階として、人はなぜ結婚という守れない約束をするのかがもっと不思議。
〇第2章:昆虫学から不倫を考える~昆虫は恋をするのか~
・著者:丸山宗利(昆虫学者。九州大学総合研究博物館教授)
・社会が発展し、人間が社会に適応しようとするあまり、「本能」は薄れていった。人間は地球の歴史から考えると極めて短いスパンで進化してきた。その過程でヒトは本能をある程度封印し、うまく理性をコントロールできる個体だけが生き残ってきた。そう考えると、封印された本能の発露として「不倫」というものが存在していると言える。
〇第3章:動物行動学から不倫を考える~動物の浮気は倫理では語れない~
・著者:竹内久美子(動物行動学研究科。エッセイスト)
・一夫一妻ととる動物は、哺乳類で3~5%。動物は四六時中一緒にいないと浮気を防げない。
〇第4章:宗教学から不倫を考える~宗教消滅で善悪の基準は変わるか~
・イスラム教もキリスト教も仏教も不倫を禁じている。今、若い人たちは、家族を作る意味も見失っている。宗教もいらない、結婚もいらないとなれば「不倫」という概念もなくなるかもしれない。
〇第5章:心理学から不倫を考える~不倫は心を救うか~
・著者:福島哲夫(心理学者。大妻女子大学教授)
・恋愛は錯覚から始まることが多い。ずっと一緒にいれば相手の悪いところも合わないところも発見しやすいが、不倫はずっと一緒にいるわけにはいかない。ある意味でいいとこどりの関係でいることも可能。だからなかなか不倫から抜け出すことができない。
〇第6章:性科学から不倫を考える~人は一生、同じ相手とセックスし続けられるか~
・著者:宋美玄(産婦人科医)
・人間は基本的にフリーセックスなのではないかと思う。婚姻制度というものは、人間がこの世に誕生してすぐにできたものではないはずだから、制度が整うまでは、男女関係は緩いものだったのではないか。
〇第7章:行動遺伝学から不倫を考える~恋愛は遺伝子に左右される~
・著者:山元大輔(理学博士。東北大学大学院生命科学研究科教授)
・人はなぜ不倫をするのかという答えは「しちゃうから」。しちゃうようにできている。ただ人間はいろいろ考える。それによって誰が何を失うのか、自分も失うものがあるのか、何が大事なのか・・・。
〇第8章:脳から不倫を考える~すべては「脳のバグ」である~
・人は本来不倫をするものだと考えるのは違うと思う。ヒトの特徴から言えば、一夫一妻でやっていくほうが合理的。
- 作者: 亀山早苗,上野千鶴子,丸山宗利,竹内久美子,島田裕巳,福島哲夫,宋美玄,山元大輔,池谷裕二
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2016/08/06
- メディア: 新書
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