『アドラー心理学教科書』(ヒューマンギルド・出版部)<2回目>
岩井俊憲さんが代表を務められているヒューマンギルドのテキスト(ホームページからでないと購入できません)。アドラー心理学の全体像を理解するのに役立つ一冊です。180ページ弱と読みやすい文量であるところも良い点です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇人間主義
人間を知るとは、人間一般に成り立つ抽象的な法則を発見することではなくて、ひとりひとりの個人を動かしている個別的な法則を知ることを意味する。
〇機能主義
個人の人生を貫くその人独特の運動法則を「ライフスタイル」という。ライフスタイルを知ることによって、その個人のひとつひとつの行動を本当の意味を知ることが出来、さらにはその人の今後の人生を予測することができるようになる。
〇目的論
人間は原因によって後ろから押され生きているのではなく、自ら目標を設定して、それを主体的に追求して生きていく。人間の精神活動を研究するうえで最も重要な問いは、「どこから?」ではなくて、「どこに向かって?」である。
〇実存主義
人間は自分自身の人生を描く画家である。どんな場合でも、人間には自分の生き方を選択し決断する自由意思の余地がある。人間はいつでも自分を変えることができる。性格は変えられる。
〇責任性
人間は運命の主人である。個人の人生の責任は、すべてその個人にある。人は自分を運命の犠牲者だと思い込んでいるだけであって、実際には犠牲者ではない。自分を犠牲者だと主張する人は、そうすることで自分と他人とを欺いて責任回避をしているに過ぎない。
〇全体論
人間の内部には分裂や葛藤はない。意識も無意識もすべてが一丸となって目標を追求する。人間は分割できない相補的な全体。意識と無意識とは、一見矛盾した動きをするように見えても、究極的には、同じ方向に協力して働くもの。自動車のアクセルとブレーキのようなもので、たとえ逆向きの作用をしていても、全体として自動車をスムーズに運動させるために相補的に働いている。
〇対人関係論
人間の全行動は対人関係行動。個人の行動によって相手の行動が変わり、相手の行動によって個人の行動が変わる。人間は相互に影響し合う対人関係のシステムの中に生きている。
〇使用の心理学
重要なことは、常に人が何を持っているかではなく、持っているものをどのように使っているか。性格とは、個人が所有しているもののカタログではなくて、その使用の特徴。したがって、性格を変えるとは、個人の精神的所有物を取りかえることではなくて、そのより良い使用法を学ぶこと。
〇場の理論
人間共同体の中に自分の居場所を見つけだすこと。人間共同体への積極的な所属と参加の感覚を共同体感覚という。共同体感覚が健全な精神の指標。アドラー心理学の実践上の目標は、共同体感覚の育成。
〇現象学
心理学では、客観的に何が起こっているかではなく、起こっていることを個人が主観的にどう体験し意味づけしているかが重要。
〇価値の心理学
正しい価値観とは共同体感覚。共同体感覚が何であるかには、絶対的な基準がある訳ではない。人間の不完全さを受け入れること。絶対的な真理はない。アドラー心理学は科学ではなくて、理論(生きていくための便利な者の見かた)であるに過ぎない。
〇実践主義
人間について知ることが目的ではない。一人でも多くの人を幸福にするのが目的。
徐々に徐々にと理解が進んできたアドラー心理学。私も最初は何を言っているのかよくつかめなかったのですが、コーチングスクールで学び、たくさんの書物に触れることで、理解が進んでいます。特に、目的論、全体論、共同体感覚など、個別テーマも興味が尽きません。