MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

駅をデザインする(赤瀬達三)

 『駅をデザインする』(赤瀬達三)

 著者は、駅施設を中心とした施設のデザインディレクター。正確さと安全で世界に知られた日本の鉄道の駅だから、駅のデザインの水準も高いだろうと、一般的には想像されますが、実は海外に比べ日本の駅のレベルは相対的に低いようです。それに対して、デザインの観点から問題提起をし、工夫事例を紹介していく内容です。

 たまには、普段読まなさそうなジャンルの本を・・・ということで手に取ってみました。

 

(印象に残ったところ‥本書より)

〇利用者にとっての「わかりやすさ」

 「動きやすさ」、「使いやすさ」も重要だが、それにもまして、「わかりやすさ」がまずクリアされるべき課題。

 

〇駅を快適だと感じられるようにするための階層的整備

 安全である⇒楽である⇒居心地が良い⇒満足度が高い

 

〇わかりにくさの原因(代表的なもの)

 駅立地の制約、大規模駅への路線集中、商業施設の複合、駅内の歩行距離の長さ、移動経路の複雑さ、アップダウンの多さ、利用者数と空間容量のアンバランスによる混雑と視界不良、運賃制度の複雑さ、相互直通運転の拡大による列車運行形態の複雑さ。

 

〇これからのデザイン

・パブリックデザイン

 作業の目的は、共通の場にいる人々が、自由に気持ちよく過ごせるように、また誰一人としてサービスから除外されることがないようにすること。パブリックが利用する空間は開かれていることが基本。

・トータルデザイン

 空間構成計画を進めながら、同時に空間内に現われる様々な物品の大きさ、色彩、テクスチャーについて、全体的なバランスを見ながらまとめていく手順が欠かせない。物の形や大きさ、テクスチャーは光によって現れる。光の当て方や光の色によってものの見え方は著しく異なる。

・デザインの検討体制

 建築家が駅のデザインに関わる場合、建物の本体はすでに決まっていて、そのあとの化粧を考えるだけのことが多い。日本の駅づくりの根本的な欠陥は、土木部門が構造を考え、建築部門が内装を仕上げるという、総合的な人間環境のイメージを欠いた検討体制にある。

・ストレスの軽減

 駅で感じるストレスを少しでも軽減する方策は、①自然光を取り入れる、②外の景色を見えるようにする、③地下鉄では地上と連続していることを感じられるようにする、④駅をできるだけ開いてつくる、⑤方向感覚が失われないようにする、⑥できるだけ大きな空間をつくる。

・駅の魅力を高める

 ①駅ごとに固有の雰囲気を持たせる、②地域ある固有のテーマを表現する、③単位空間ごとの雰囲気に変化を与える、④ホームにスクリーンドアを設けてインテリア化を図る、⑤他の交通モードとの複合化を図る、⑥一段とバリアフリー化を進める。

・案内サイン計画の注目点

路線名のユニバーサルコード化

 現在の鉄道ネットワークは複雑だが、表示は輪をかけるように状況を複雑化している。その根本原因は、システム本体は首都圏一円に広がっているのに、ネーミングについては自然発生的なローカルコード(地域限定でしか理解されない名称)にこだわり続けているから。

②多言語表示問題

 むやみな多言語化はせずに、「情報提供はユニバーサルデザインの観点から、日本語、英語、ピクトグラムの3種類による言語を基本とする」のがよい。例えば、トイレを男女の人型で表すなど、シンプルな絵を用いて意味内容を表す。

③ストレスのかからないグラフィックデザイン

 案内サインの画面をデザインするときの留意点。「どこから見るかとい視距離に基づく表示物の大きさ設定」「十分な余白を確保」「わかりやすさを生み出す表現技法

 

 普段知ることのない業界の方の着眼が面白かったです。かなり多くの写真を用いて実例を解説しているので、写真を眺めるだけでも良いかもしれません。普段何気なく利用している駅。表示や空間設計も気にしてみるだけで、ちょっと楽しめそうです。

www.amazon.co.jp

f:id:mbabooks:20150905230043j:plain