『人材育成』(寺沢俊哉)(〇)
コンサルティングノウハウシリーズの第7巻。本シリーズは、いずれも実務に密着し実際に使えることに力点が置かれた良書ぞろいです。本書は、ライブ講師実践会でお世話になっている寺沢俊哉さんの著書です。
「人材育成」の幅広い領域の中から、①戦略と人材育成、②コミュニケーション、③教えるスキル(講師スキル)についてまとめられており、「人を育てることに関心がある方」なら幅広く読者層に入ると思います。また、すぐに実践できるコラムとエクササイズが多数取り入れられているのも魅力です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇自走を促すリーダーの関わり(3ステップ)
①興味:そのテーマに興味をもってもらう
②発見:そのテーマに関して、自分なりの発見や提案をしてもらう
③貢献:そのテーマを使って、具体的に誰か(何か)に貢献してもらう
〇人を育てる「RED」の原則
①Respect:尊敬‥すべてのことに敬意を払い、お互いを高め合う
②Energize:元気‥自らが元気であり、出会う人に元気を与え続ける
③Dialogue:対話‥対話によって学びを深め、行動に繋げる
〇ゴールの先(アウトカム)を意識する
・スタート(現状)→ゴール(理想)→その先のゴール(アウトカム)
実現したらどんな素晴らしいことがあるのか?
〇問題解決9つの質問
①現状はどうだろう
②うまくいっていることは
③うまくいっていないことは
④なぜそうなんだろう
⑤どのようにしたらいいだろう
⑥何の制約もなかったらどうなっていたらいい
⑦最悪のシナリオだったら、どうなっているだろう
⑧もしそれ実現したら、さらにどんな素晴らしいことがあるのだろう
⑨そもそも私たちは何を大事にしているのだろう
〇ライブ講師~つかむ技術、しこむ技術、いかす技術~
①つかむ:参加者の心をつかんで、テーマに引きつける技術
②しこむ:段取り8割、学びのプロセスを企画準備する技術
③参加者や場の資源を引き出し、力づける技術
〇つかむ技術
・大穴:おぉ(驚異)、あるある(共感)、なるほど(納得)
・アイスブレイク:自己紹介、他己紹介、共通点探し・・
・データ(客観性・権威)、物語(エピソード)、実習(ワーク)
〇しこむ技術
・企画書の7項目
①タイトルと日時場所
②実施者
③趣旨・理由
④ビフォー(スタート)
⑤アフター(ゴール)
⑥ストーリーライン
⑦環境・ツール
〇ストーリーライン
・興味→発見→貢献(自走を促す3ステップ)を意識
①項目を付箋紙に書き出す
②大きく3つくらいの領域にくくる
③全体の時間見て入らないものをカットし、120%にする
④エンディングを設計する
⑤かあらず持って帰ってもらいたいものを選ぶ
⑥選び出した項目を再整理して「小見出し」をつける
⑦小見出しごとのゴールを決める
・構成の基本パターン
分野別、時系列順、難易度順
〇いかす技術
・質問対応~基本~
①質問に感謝する
②質問内容を確認する
③結論から答える
④質問を確認して感謝で終える
・質問対応~対話をを全体に広げる~
①一般化して全体に広げる
②さらに追加質問を受ける
③講師から質問を加える
〇エンディング
・必ず振り返りを行う
・感謝と期待を伝える
・約束(行動)を確認する
読んでみて、「とにかく実際にやってみよう!」とその気になりました。講師スキルも職場の対話(1対1、1対多数)に十分応用できる内容であり、コミュニケーション力の底上げにつながりそうです。教える(≒説明する)ということだけではなく、相手にテーマについて発見し、関心を持ってもらい、自ら学んでもらうようにサポートしていく、人材育成の原点はそうした学びを支援することなんだろうなとあらためて感じました。