『シリコンバレー式 最強の育て方』(世古詞一)
本書は、最近取り入れる企業が増えている1on1ミーティングについてまとめられた一冊です。シリコンバレーでは、上司と部下とのコミュニケーションで1on1ミーティンというカルチャーがあたりまえになっている。上司と部下が週に30分〜1時間程度「必ず」1対1の面談を行う。自由に話し合うことで上司が部下の考えや今の状態を把握して関係構築を図っており、それがマネジャーの重要な役割になっている。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯個人に焦点を当てた対話
・会議の場や部下からの報連相はコミュニケーションをしているというより、結果を出すための情報交換をしているだけ。
・1on1では、「部下との信頼関係づくり」「部下の不安解消」「部下の心身状態の確認」など部下自身に関することを話す。
◯1on1での対話の特徴
①テーマが抽象的
・結果を出すための情報交換の場では、個別案件の話など具体的なものがテーマになる。
②1on1の対話では共感的な姿勢で熱心に聞いて判断を引き出す。
・情報交換の場では、上司は助言をして論理的に判断を下す。
◯1on1ミーティングで実現する8つのこと
①上司と部下の間に揺るぎのない信頼関係が生まれる
お互いの歴史や考え方を知って共感していく。
②心身が不調で休職になるところだった部下が、早期の対策で生き生き働きだす。
③やる気のなかった部下が自発的に動くようになる
3つの基本欲求が満たされること(エドワード・デシ)
1)関係性への欲求(相手に受け入れられている)
2)有能さへの欲求(自分にはできる)
3)自律性への欲求(自分で決めた実感)
④評価査定の後、不機嫌になる部下がいなくなる
⑤仕事に飽きてきた優秀な上位2割が再び情熱を持って業務にチャレンジを始める
上位2割は自立して手がかからならいので、下位2割に手厚くマネジメントの時間を取る事態から脱却。
⑥後手の対応から先手の対策への人材マネジメントが変わる
⑦部下からの「ちょっといいですか?」のミーティング時間が本当に「ちょっと」になる。
「上司に話しかけやすくなる」「ちょっといいですか?がとってもいいやすくなって問題が未然に防げる」
⑧びっくり退職がなくなる
◯1on1で話し合う7つのテーマ
■信頼関係づくりステージ
①プライベート相互理解
②心身の健康チェック
③モチベーションアップ
■成長支援ステージ
④業務・組織課題の改善
⑤目標設定・評価
⑥能力開発・キャリア支援
⑦戦略・方針の伝達
◯1on1で話すこと
①雑談でも良いが雑談だけではダメ
②業務の細かい進捗の話はしない(部下がどうしても話したい場合で時々ならOK。毎回はダメ)
③話すテーマのゴールは決める必要はない。
客観視点で今全体のどこ(Where)の何(What)を話しているのか?という意識は必要。ゴールへ誘導するコンパスは必要ないが地図は必要。
◯4つのレベルの雑談
①内容を話す(世間話)
②内容を聞く(部下自身の話)
③感情を聞く
④価値観を探る
◯どう「自然に」話を切り出すか
①さも「今」思いついたような調子で以下の言葉を枕に話す
「そういえば」「ちなみに」「今思いついたんだけど」「全然関係ないけど」
②まず自分から情報を話す延長で相手からの話を聞き出す
「昨日寒かったねー。外で買い物していたから凍えたよ。◯◯さんは昨日何してたの?」
③言いづらいことを言うときはクッション言葉を
「差し支えなければ」「大丈夫だったらでいいけど」「心配だから言うんだけど」
④部下のプチ情報を収集しておく
「そういえば週末イベント行っていたみたいだね。◯◯さんが話してたよ」
⑤今の変化を捉える
「そのネクタイ珍しいね」「髪切った?」
◯心身の健康チェック
・心身の状態や業務量、業務時間などを確認する
◯モチベーションアップ
①マイナス面を最小化すること→モチベーションを下げる要因を取り除く
・主に行うこと:聞ききる
・テーマ:漠然とした不安
②プラス面を最大化すること→モチベーションを上げる要因を高める
・主に行うこと:褒める、承認する
・テーマ:ぶ家に変化があった言動や良かった行動
◯成長支援ステージ
・仕事の内容については教えるが、仕事のプロセスで生じる気づきや学びについては、ほとんど触れない。
・業務を自立して行い、自ら改善を繰り返しながら中長期的に結果を出し続ける人を育成したいのならば、この時間は必須。
◯業務・組織課題の改善
①業務改善:現状業務の把握、現状業務の改善
②組織改善:組織への貢献
◯目標設定・評価
①MUST:会社として行わなければならない目標
②GET:目標を通して部下が得られること
③CAN:目標を達成できるという感覚
◯能力開発・キャリア支援
コルブの成長支援モデル
①具体的経験:実際の業務をする
②内省的観察:1on1で振り返る
③抽象的概念化:1on1で気づきを教訓・学びにする
④能動的実験:現場で新たなチャレンジをする(1on1で計画する)
本書では上記の流れで、具体的なやり方や留意点がまとめられています。1on1は通常ブラックボックスですが、著者は1on1へ参加・録音して取材を重ねられており、中身がイメージしやすい内容になっています。私も1on1でお話しするのが好きで、まさにコーチングが活かせる場だと思います。
シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1 on1ミーティング―
- 作者: 世古詞一
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2017/09/13
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