MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

論語の活学(安岡正篤)

論語の活学』(安岡正篤

 日常遭遇する現象や問題がことごとく原理的に説明されている論語。本書は、安岡正篤人間学講話シリーズの一冊。「利の本は義」「利は義の和なり」。本当に利を得ようとすれば、「いかにすることが義か」という根本にたちかえらなければならない。ここに気がついて初めて論語が「活きた学問」となる。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯健全と頽廃

 人間というものは、苦難の中から成功するのであるが、いざ成功すると、容易に頽廃・堕落して、やがて滅亡する。これはいつの時代でも同じことであって、人間は性懲りも無くこれを繰り返している。

「成功は常に苦心の日に在り、敗事は多く得意の時に因る」

 

◯達人と聞人

・達人というものは、性質が真っ直ぐで、名や利を好むのではなくて、人間がいかにあるべきか、また為すべきか、という義を好み、人の言うこと・主張することをただ言葉どおりに聞くのではなくて、よくその言葉の奥を察して真実を見極め、万事心得たうえで謙遜に人に下るのである。だから国家の職におろうが、王室や大名の家老職におろうが、どこにおろうが、必ず達する、立派に用いられる。

・聞人というものは、世にいわゆる名士というものは、いかにも表面では仁を取るが如く見え、世のため、人のためというような仁らしい上手いことをいうが、実際の行いはまるで仁とは違う。しかも自分では一向に良心の呵責もなく平然とその地位におって、うまく人心に投じ、時に乗じて、要領よく世渡りをしていくから、国家の職におっても王室・大名に仕えておっても、どこでも有名になる。

 

◯40歳

・子曰く、年四十二して悪まるるは、其れ終わらんのみ。

リンカーン「人間は年の四十にもなれば、己の面に責任がある。」

・面は面相、人相。全てが人相に現れるのだから、その人間を知るのに人相ぐらい的確なものはない。だからリンカーンの言うように、人は四十にもなったらその人なりに、人相ができていなければならない。

 

◯45歳

・やはり人間というものは、四十五にもなったら知己〜己を知ってくれる者を持たなければいけない。また、あるのが本当で、それがないというのは、その人の不徳である。そういう意味から言って、世にすねるような生き方は本当の道ではない。

 

◯驕慢でケチな人間は論ずるに足りない

・子曰く、如(も)し周公の才の美有るも、驕(きょう)且つ吝(りん)ならしめば、其の余は観るに足らざるなるのみ。

⇨たとえ周公のような才能の美があっても、人に驕り且つ吝嗇であったならば、そのほかのことは観るまでもない。

・驕かつ吝であるということは、つまり徳がないということ。だから徳がないような人間は、ほかのことがいくらよくできても、論ずるに足らないということになる。

 

◯人間の悪に対する5つの態度

①弱肉強食型

 泣き寝入り型。長いものには巻かれろというわけで、あきらめて泣き寝入りしてしまう態度。

②復讐型

 殴られたら殴り返す。野蛮で人間としては低級である。

③偽善型

 蹴られても蹴り返すことができない人間が、己が良心の呵責やら、負け惜しみなどから、立派な理由をつけてその意気地なさをごまかそうとする。

④宗教型

 俗世間の一切を超越して、全てを平等に慈愛の眼で視るという態度。これは人間として最も尊い在り方であるが、しかし人間の中の極めて少ない勝れた人たちにして初めて到達しうる境地。

⑤神武型

 人間の道を重んずるが故に、悪を憎んで断固としてこれを封ずるという態度。人を憎むと言っても、人間を憎むのではない、その人の行う悪を憎むのである。

 

◯気力・生命力・志気・志操

・人物たるに、まず一番根本的に具わっておらなければならないものは何かというと、「気力」。身心一貫した「生命力」。

・次に大切なものは「志」。志気・志操・志節というべきもの。これは当然気力から出てくるものであって、そもそも気力というものは、その人の生を実現しようとする絶対者の創造的活動であるから、必ず自ら実現しようとする何物かを念頭に発想するわけ。これが理想あるいは「志」。理想・志を抱くということは、生命力・気力の旺盛な所産。

 

◯学んで時に之を習う〜「時」の真意

・「時」を「時々」ではなくて「その時代、その時勢に応じて」と訳せば良い。そもそも学問・学習というものは、時々これを習うのではなくて、その時代、その時勢に適切に勉強してこそ、学問・学習と言えるので、時代・時勢を離れて学問したのでは、空理・空論になってしまう。

 

 論語の解説版というよりは、論語を中心にしながら、他の東洋哲学や現代(当時)の社会情勢に対する考え方も含めた講義録というテイストです。安岡正篤人間学講話シリーズは、奥深く、早く全巻制覇して全体像を掴んでみたいものです。

[新装版]論語の活学―人間学講話 [新装版]人間学講話

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