『ビジョナリーカンパニー4』(ジム・コリンズ)(◯)
不確実性の時代を、企業はいかに生き抜くか。10x型企業として、①10x企業へ歩み始めた当初は歴史の浅い中小企業であり、②置かれた環境がきびいにもかかわらず、③15年以上に渡って目覚ましい実績を上げた企業について、研究分析されまとめられています。その存続・継続の背景にあるリーダーシップとは、果たしていかなるものなのか。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯10x型リーダー
・全ての面で優れているわけではない。
・際立っているのが、両極にある「制御」と「制御不能」を同時に受け入れる能力。
・主要行動パターン3セット
①狂信的規律
規律とは本質的には「行動の一貫性」。一貫した価値観、一貫した長期目標、一貫した評価基準、一貫した方法。長い時間を経ても行動が一貫している。
②実証的創造力
実証主義とは、自らじかに観察し、実験を重ね、化学的証拠と向き合うということ。実証的な基盤を築くことによって、10x型リーダーは大胆で創造的な行動に出ると同時にリスクを制御できる。
③建設的パラノイア
様々な危機を直視することで優位なポジションを築き、危機を克服するということ。不安があまりに大きいから周到に準備し、落ち着いて状況判断し、的を得た対応策を打ち出す。
・3セットに命を吹き込むのがやる気の原動力「レベルファイブ(第五水準)野心」
レベルファイブ野心とは、人をとりこにするほど魅力的な野心。個人として謙虚であるとともに職業人として強い意志を持っている。
◯二十マイル行進
・どんな状況下でもペースを維持すること。
・長期にわたって並外れた一貫性を保って「工程表」に準拠しなければならない。
・良い二十マイル更新の7つの特徴
①明確な工程表、②自制心、③企業ごとの独自仕様、④他力本願ではなく自力達成型、⑤ゴールディロックス時間(無理がかからないほどゆっくり進むが、厳しさを伴うほど早く進む)、⑥企業が自らに課す規律、⑦並外れた一貫性
・二十マイル行進は自信を生み出す。どんな困難な道のりを歩んでも、どんな突発性ショックに見舞われても、二十マイル行進を徹底する。
◯銃撃に続いて大砲発射
・銃弾は、①低コスト、②低リスク、③低ディストラクション(気が散ること)の3条件を満たす実証的テスト。
・銃撃に続いて大砲発射という原則を採用するには、次の作業を組み合わせる必要がある。
①銃撃を開始する
②評価:銃弾は何に命中したか
③考慮:何かに命中した銃弾のうち、砲弾へ転換すべき銃弾はあるか
④転換:資源を集中し、制度調整済みの大砲から砲弾を発射する
⑤精度未調整の大砲を使うな
⑥最終的な成功を見込めない銃撃は終了せよ
◯死線を避けるリーダーシップ
・建設的パラノイアの主要三手法
①前もって突発的出来事と悪運に備えるために、十分な資金を手元に積み上げ、「バッファー」を用意する。バッファーとは余分に持ち込む酸素ボンベ。
②リスクを抑える。リスクを抑えることで「時間軸リスク」を上手に管理する。
1)「死線リスク」:深刻な打撃を与えるリスク
2)「非対称リスク」:ダウンサイドがアップサイドより大きいリスク
3)「制御不能リスク」:自力で管理・制御できない不可抗力に直面するリスク
③「ズームアウト」に続いて「ズームイン」。状況変化を察知し、効果的に対応するために徹頭徹尾用心深くなる。
・突発的な変化が猛スピードで破壊的に訪れるとの前提で行動している。状況の変化に過敏に反応し、常時「もしこうなったら?」と自問している。
①事前に準備する
②補給品の蓄えを十分確保する
③非合理的と言えるほど十分に安全余裕率を高くする
④リスクを抑える
⑤良い時でも悪い時でも規律に磨きをかける
を徹底している。こうすることで、強靭で柔軟な体制を維持しながら危機と向き合う。
◯具体的で整然とした一貫レシピ
・SMaC
①具体的である(Specific)
②整然としている(Methodical)
そして(and)
③一貫している(Consistent)
・どんな組織でも、何かを決断する際には道しるべとして具体的なルールを必要としている。具体的なルールを土台にして首尾一貫した枠組みを徐々に構築する。洞察力を働かせてどんなルールが実際に機能するのかデータを積み上げ、そのうえで時間をかけてルールを修正していく。
◯運の利益率(ROL)
・運イベント(次の三基準を満たす)
①組織の主要関係者がどう行動したのかとほとんど無関係に起きている
②良い悪いにかかわらず潜在的に重大な影響をもたらす
③予測不可能の要素を含んでいる
・狂信的規律、実証的想像力、建設的パラノイア、レベルファイブ(第五水準)野心、20マイル行進、銃撃に続いて大砲発射、視線を避けるリーダーシップ、SMaCは全て、高いROL達成に直結する。
・ROL4つのシナリオ
①幸運から高リターン
②幸運なのに低リターン
③不運なのに高リターン
④不幸から低リターン
・「最高の運は誰か」。良き助言者、良きパートナー、良きチームメイト、良きリーダー、良き友人を見つける運のこと。あらゆる種類の運のうち最重要な運の一つ。幸運の流れに乗る最良の方法は、偉大な人たちと一緒に泳ぐこと。あなたが命を懸けてもいいと思える人たちがいる。あなたのために命を懸けてもいいと思ってくれる人たちがいる。そんな人たちと永続的で深い関係を築くということが肝心。
大胆な行動が取れる背景には、リスクを睨み、慎重で基本をきちんと積み上げていく姿勢がある。陽と隠。表と裏。見えないところに核心があるということ。リスクを取っているところだけがクローズアップされがちですからね。改めて基本の大切さに立ち返ること。ただそこで止まっては、突き抜けられない。そこから先、リスクを取って一歩踏み出せる決断が出せるかどうか。そういう意味で、「銃撃に続いて大砲発射」という発想はコアになっているような気がします。
- 作者: ジム・コリンズ,モートン・ハンセン,モートン・ハンセン共著,牧野洋
- 出版社/メーカー: 日経BP社
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