MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

コーチングに燃える(マックス・ランズバーグ)

コーチングに燃える』(マックス・ランズバーグ)

 2004年に発行された本書は、著者が25年かけて集めたコーチングのヒントとテクニックが詰まった一冊です。本書は、物語形式で進められ、節目節目でポイントをまとめるという形式で書かれています。同僚や部下の能力開発を助けるだけでなく、リーダーである自分自身の能力を高めることにもつながるコーチング。日本に入ってきてから時間も経ち、最近では1on1も広まってきていると思いますが、そのやり方はまちまち。考え方やテクニックはネットで調べれば、たくさん出てくると思いますが、本書ではGROWモデルなども含めて、基本的なポイントがまとめられています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯優れたコーチを巡る4つの真実

①追随者のいないリーダーは、リーダーではない。

②独裁的なボスは排除される。

コーチングに10分費やせば、あとで1時間節約できる。

④偉大なコーチになるのは、信頼を勝ち取り、影響力を行使できる人である。

 

コーチングのエッセンス

コーチングの目的は、相手の仕事の成果や学習能力を高めること。

②そのためには相手の行動についてフィードバックを与える、相手のモチベーションを高める、効果的な質問を発する、といったテクニックが必要。マネジャーがコーチ役を兼任する場合には、部下の意欲と能力を見極めることも欠かせない。

③コーチは、最終的には相手が自分で答えを出せるようにする。コーチングとは、一方的な指導や指図ではなく、ダイナミックな相互作用。

 

コーチングされる側のスキル

・意見を聞きたい時、評価して欲しい時は、妙に遠慮せずはっきりとそう言うこと。忌憚のない意見を言ってもらえれば本当にありがたいと言う気持ちを表すことも大切。

 

コーチングを巡る5つの誤解

コーチングは人助けのためにするものである。

⇨自分の時間を作れる、対人能力が向上するなど自分が得るものが大きい

コーチングをするには相手をよく知らなければならない。

⇨自分自身をよく知ること

コーチングとは相手に意見や助言を与えることである。

⇨効果的な質問を発するなどレパートリーは広い

コーチングには膨大な時間がかかる。

⇨わずかな時間でも効果が上がる

⑤仕事をしていない人にはコーチングは関係ない。

⇨生活のあらゆる場面で役立つ

 

◯フィードバック

・ある場面での行動を再現すること。

・相手の行動が及ぼす影響に注意を促し、改善の方法を考えることまでを含める。

①前向きなフィードバック

 仕事ぶりを褒めるいのもフィードバックの一つ

②建設的なフィードバック

 どうすればうまくいくかを助言するフィードバック

③後ろ向きなフィードバック

 解決の方向性を示唆せず、悪い印象だけを指摘する

 

◯GROWアプローチ

①話し合いのテーマや目標を決める(Goal)

②現在の状況を把握する。実際の行動を振り返り、典型的な例をあげる(Reality)

③思いつく限りの対策を考え、実行可能なものを選ぶ(Options)

④次に着手すべきことを具体的に決め、期限を設定し、障害を乗り越える方法を探る(Wrap-up)

 

◯タイプ指標(MBTI)

①外向型vs内向型・・・エネルギー源

②感覚型vs直観型・・・ものの見方

③思考型vs感情型・・・判断基準

④判断型vs認知型・・・対処の仕方

 

◯即席コーチングの手順

①現状の問題点を明らかにする。

 現在の問題点、具体的な例、背景説明をしてもらう。

②本来あるべき姿を明確にする

 問題点がないとしたらどんな結果になるはずなのかを、具体的に言ってもらう。問題の解決方法を考えるのではなく、どうなって欲しいのかを話してもらうこと。

③現状とあるべき姿の間のギャップ、障害物を洗い出す

 ①と②を隔てる障害物を一緒に考える。

④その障害物を取り除くための具体的な方法を考える

 列挙された障害物についてブレーン・ストーミングを行い、次にできることを探す。何をいつまでにどうするかを決める。

 

◯能力・意欲マトリックス

・このマトリックスは、コーチングとマネジメントのスタイルを部下の能力・意欲に合わせて柔軟に帰るという発想から設計されている。

・意欲×能力

①意欲(高)×能力(高)=任せる

②意欲(低)×能力(高)=刺激を与え、やる気を引き出す

③意欲(高)×能力(低)=助言・示唆する

④意欲(低)×能力(低)=指示・指導する

・ステップ

①部下に割り当てた仕事だけを対象に、能力と意欲を評価する。

②適切なコーチングのスタイルを決める。例えば、やる気はあるが能力に乏しい場合には、助言を与えたり、トレーニングを提供したりする。

③部下とコーチングのスタイルについて話し合い、同意を得る。

 

◯やる気を引き出す秘訣

①現状では、やる気をなくす「悪循環」にはまり込んでいるのか、やる気の高まる「好循環」に入っているのかチェックする。

②悪循環にはまり込んでいる場合、直接話し合って自信をつけさせるのが一番。好循環に入っている場合は、上手に褒める。

③何か手助けや訓練が必要か、見極める。

④相手の意欲を最も刺激する要素は何かを見極める。モチベーションが高まる要因は人によって様々なので、注意すること。

 

◯メンターの7つの役割

①相手のやる気を引き出す

②悩み事を聞く、相手の気持ちを聞き、整理する

③必要に応じて情報を提供する

④解決策を考える手助けをする

⑤仕事を任せ、権限を委譲する

⑥好ましくない行動を指摘する

⑦手本を示す

 

コーチング・プラン 3つのフェーズ

①環境を整える

・能力と意欲を見極める

コーチングの方法について確認する

・信頼関係を築く

・モチベーションを高める

②実行する

・GROWアプローチを使った話し合い

・タイムリーなフィードバック

・1分間の褒め言葉

・実地の手本

③締めくくる

・反省

・コーチへのフィードバック

・次のステップにつなげる

 

 主にビジネスシーンを意識した内容で、要点がコンパクトにまとまっているので、とても読みやすいと思います。コーチングは頭での理解だけではもちろん足りず、どれだけ実践を重ねているかが大切ですね。また、いろいろなコーチングスタイルを実際に見て幅を広げたり、自分のスタイルを改善したり、とにかく机上でできることは限られているので、こういったコンパクトな本を読んだら、コーチングの実践の世界に飛び込んでみるのが一番だと思います。実感として。

駆け出しマネジャー アレックス コーチングに燃える

駆け出しマネジャー アレックス コーチングに燃える

 

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