『プラットフォーム革命』(アレックス・モサド、ニコラス・L・ジョンソン)(◯)
良書です。現在の経済を支配しているプラットフォームビジネスに関する一冊です。プラットフォームビジネスの仕組みをと実例がうまく組み合わさっていて、全体像を理解しやすい内容になっています。直線的なビジネスとされる製造・販売型のタイプに対し、プラットフォームビジネスは、ネットワーク型。しかも、製造にあたるコアビジネスを構成する商品・サービスの供給側と消費者側がともに社外にいるため、自社内でコントロールできる部分がとても少ないビジネスです。60年前のS&P500種の構成企業の平均寿命が50年だったのに対し、今は15年以下。移り変わりが激しい中で市場支配のカギを握っているプラットフォームはこれからのビジネス知識としては、必須かと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯プラットフォームとは
・相互に依存する複数のグループを結びつけ、すべてのグループが恩恵を得られるようにするビジネス。生産手段を所有するのではなく、つながる方法を作っている。消費者とプロデューサー(モノやサービスやコンテンツを作ったり提供したりする人)を結びつけて、モノやサービスや情報の交換を可能にする。
・近年アップルがとてつもない成長を遂げているのは、モノやアプリを作る会社から、プラットフォーム企業に移行したから。もはやアップルは、ハードウェアとソフトウェアを作るだけの会社ではない。iOSやiTunes、App Storeを通じて、ありとあらゆるデジタル製品の売り手と買い手を結びつけるプラットフォームを提供している。
◯直線的ビジネスとプラットフォームビジネス
・直線的ビジネスは、典型的なプロダクトカンパニーやサービス業。企業はプロダクトを作り、それを販売業社に売る。販売業社はさらに消費者に販売するという一方向の流れ。
・プラットフォームは、消費者とプロデューサーに囲まれており、そのネットワークによってプラットフォームの形が決まる。新しいユーザーが加わると、そのユーザーはたった一つの関係だけでなく、そのプラットフォームにいるユーザー全員との関係を構築し、指数関数的に成長する。その結果、プラットフォーム・ビジネスモデルは、直線的ビジネスモデルよりもはるかに費用対効果に優れ、はるかに大きくなる可能性を秘めている。
◯プラットフォームの構造
・究極的には、プラットフォームは取引を円滑にすることによって、価値を創造する。直線的なビジネスが、商品やサービスを作ることで価値を生み出すのに対して、プラットフォームはつながりを作り、取引を「製造する」ことで価値を生み出す。
・創造する⇨結びつける⇨消費する⇨対価を払う
◯プラットフォームも4つのコア機能
・どうすれば無数のユーザーを、思い通りに動かせるか。それにはユーザーをネットワークに参加させ、そのマッチングを助け、取引をしやすくする技術を提供し、信頼を醸成して質を維持するためのルールを作ることが必要。
①オーディエンス構築
②マッチメーキング
③中核的ツールとサービスの提供
④ルールと基準の設定
◯プラットフォームのタイプ
・すべてのプラットフォームは、消費者とプロデューサーを結びつけることに注力するが、交換型とメーカー型のどちらのプラットフォームを選ぶかによって、そのプラットフォームがもたらす中核的な価値は根本から変わってくる。この選択は、非常に異なるコア取引につながり、プラットフォームの設計に重大な影響を与える。
◼︎交換型プラットフォーム
②プロダクトマーケットプレース(Amazon、イーベイなど)
③決済プラットフォーム(PayPalなど)
④投資プラットフォーム
⑤ソーシャルネットワークプラットフォーム(facebook、Twitterなど)
⑥コミュニケーションプラットフォーム(Skype、Dropboxなど)
⑦ソーシャルゲームプラットフォーム
◼︎メーカー型プラットフォーム
⑧コンテンツプラットフォーム(iTunes、YouTube、インスタグラムなど)
◯価値エコシステム
・直線的な企業と同じように、プラットフォームにもユーザーに直接価値をもたらす主活動と、その価値創造をサポートする副次的活動がある。それらをひとまとめにすると生まれるのは、価値連鎖ではなく、価値エコシステムだ。
・プロデューサー/消費者
1)創造→コネクト→消費→支払い
2)オーディエンス構築→ルールと基準→マッチメーキング→ツールとサービス
◯プラットフォームの基本的な4つのアクション
・プラットフォームは、ネットワーク内の潜在的なつながりを利用して、4つのステップを取引に帰る方法。どんなプラットフォームを構築するときも、最初にやるべきことは、このプロセスの設計。製造工程を設計してから工場を建てるのと同じ。
①創造する
プロデューサーが価値を創造し、プラットフォーム経由で提供する。
②結びつける
どんな取引でも、一人のユーザーが相手方とコネクトすることによって交換のきっかけが生まれる。
③消費する
消費者は自分の要望にマッチしたものを見つけると、プロデューサーが作った価値を消費できる。
④対価を支払う
消費者は、自分が消費したものと引き換えに、プロデューサーに価値をもたらす。
・プラットフォームの場合、この最適化は直線的な企業ほど簡単にはいかない。プラットフォームの「工場」は内部資源ではないため、外部ユーザーのアクションを微調整して最適化を図らなければならない。
◯プラットフォームの4つのコア機能
①オーディエンス構築
消費者とプロデューサーをクリティカルマス以上獲得して、流動的なマーケットプレイスを構築する。
②マッチメーキング
正しい消費者を正しいプロデューサーと結びつけて、取引と交流を円滑化する
③中核的ツールとサービスの提供
取引費用を下げ、参入障壁を取り除き、データによって長期的にプラットフォームの価値を高めて、コア取引を支援するツールとサービスを構築する。
④ルールと基準の設定
どのような行動が許されるか、どのような行動が禁止され思いとどまるよう促されるかを定めたガイドラインを提供する。
◯ネットワーク効果のはしご(質を高めるためのフレームワーク)
・あるプラットフォームにおけるネットワーク効果の質は、コネクション、コミュニケーション、キュレーション、コラボレーション、コミュニティという。はしごの5つの「ステップ(階段)」によって決まる。どんなネットワークも、プラットフォームが成熟するに従い、これらのステップを上昇して、質を高め、コミュニティー参加を高めることを目指すべき。
◯参加価値を高める3つの方法
①金銭的な補助(紹介料、値引きなど)
②機能による補助(貴重なユーザーグループを取り込むために、彼らがそのプラットフォームを愛し、活発に利用したくなるような付加価値を提供する)
③ユーザー・シーケンシング(ユーザーの順位づけ)
◯ニワトリとタマゴの問題を解く7つの方法
▪️金銭的な補助
1)大規模な初期投資で安全を確保する
2)業界の既存社と協力する
▪️機能による補助
3)プロデューサーの仕事をする
4)既存のネットワークを利用する
▪️金銭的な補助と機能による補助
5)価値の高い、または「セレブ」ユーザーをつかまえる
6)両方の役割(プロデューサーと消費者)を果たせるユーザーグループを探す
7)シングルユーザー・ユーティリティーを提供する
盛りだくさんな内容です。骨格だけでもかなりのボリュームがあります。本当に大切なプラットフォームビジネスのポイントは細部にありますので、本書を読み込んで、事例と照らして何が大切なのかをつかんでいく必要があります。私も、再読しないと追いつかない情報量でした。読むのもそこそこ時間がかかります(私は5日くらいかかりました)。
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
- 作者: アレックス・モザド,ニコラス・L・ジョンソン,藤原朝子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本
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