『GE世界基準の仕事術』(安渕聖司)
あすか会議(グロービス経営大学院のビジネスカンファレンス)に登壇される、安渕聖司さんの書籍を読みました。
三菱商事入社、ハーバードビジネススクール(MBA)修了、リップルウッドの日本法人立ち上げ、UBS証券入社とスゴイ経歴を持つ著者でさえ、06年にGEに入社して体験したGEの社風・制度は衝撃。一体何をスゴイと感じたのかが書かれています。
こういう方の話をお聞きできるのが、あすか会議の良さです。
(本書で印象に残ったところ)
〇年齢は関係ない
50歳になって入社した著者は、入社後1年1カ月でGEキャピタル日本のCEOになる。50歳を超えた新しい人間でも積極的に評価し、登用していく。CEOが手にするパーソナルデータには年齢の欄は無い(年齢は何らかの基準になってはいけない)
〇プレゼンへのこだわり
スピーチは、1時間でも2時間でも一切紙は持たない。伝えるべきことが数字を含めて頭に入っていないとリーダーは務まらない。
〇エレベータースピーチ
パッと聞かれても即座に答える習慣ができている。何年もトレーニングするとできるようになる。
〇バラバラの事業の一体化
オペレーティングプラン作成、着地見込、人事組織計画のタイミング、フォーマットは全世界で同じ。社内のあらゆるビジネスの人が、同じトレーニングに参加し、用語や手法も同じように使われている。
〇リーダーシップに必要な4要素
・リーダーシップスキル
・ビジネス知識・能力
・専門知識・能力
・グロースバリュー(GE社員としての行動規範)
〇グロースバリューの5要素
・外部思考
・明確で分かりやすい思考
・想像力と勇気(アイデアを思いつき、口に出して発信する)
・包容力(多様性の受け入れ)
・専門性
〇評価
業績(3段階)×グロースバリュー(3段階)
業績は本人ではどうしようもない時がある。グロースバリューは自力で何とかできるという発想。評価される側も異議を唱えられる。
〇評価者を評価するシステム
後継者選びをどう考えているのか。なぜこの人材ができると思うのか。なぜこのタイミングなのか。一人ひとりをどのようにコーチングしていくのか。次のバンド昇格候補者は誰か。トレーニングに誰を送り込むのか。こういうことを、組織の長とその上司が徹底的に話し合う。
〇アシミレーション
新任のマネジャーに3~6月後に実施。上司抜きで、「上司に知ってほしいこと、知りたいこと、変わってほしいこと、続けてほしいこと」などを壁一面に匿名で言いたい放題書き、その後上司を呼ぶ。
〇スキップレベル・ラウンドテーブル
上司抜きで、その上司や人事部が部下に話を聞く。部下は言いたい放題言える。
〇ハーバードビジネススクールで得た7つの個と
①世の中は決して公平にはできていない
②複数分野でのエキスパートにはなかなかなれない
③不完全な情報の中で意思決定をしなければならない
④知識はどんどん陳腐化するが、問題へのアプローチや考え方の枠組みは陳腐化しない
⑤人生において一番貴重な資源は、時間である
⑥リスクを取らなければ、リターンはない
⑦アイデンティティは極めて重要
GEは、てっきり、個人戦の集合体で、社内も競争でぎすぎすしているイメージでしたが、全然違いそう。
本書の中で、「ブロードウェイ型」(個人戦。やりたいこと優先。人の移動も多い)、「劇団四季型」(チーム型。チームが成長していると、チャンスが回ってくる)という記載がありました。GEは、劇団四季型だそうです。
この競争の厳しい仕組みで、組織の成長を考えるチーム型であることが矛盾が両立しており、とても興味深い。研究価値あり。こういう点を深堀してみたい‥。