アカウンティングⅡ(管理会計)の参考図書に指定されているので、久々に読み返しました。言わずと知れた良書です。
「人間として正しいことを行う」という哲学と緻密な部門別採算管理システムをベースとした経営手法である、アメーバ経営。
組織を小集団に分け、リーダーが中心となって計画を立て目標を達成していく全員参加型経営を行う経営システムとして有名です。
アメーバ経営の3つの目的である、①市場に直結した部門別採算制度の確立、②経営意識を持つ人材の育成、③全員参加経営の実現、について詳しく解説されています。
(印象に残ったところ)
〇「売上を最大に、経費を最小に」
この業界では利益率はこんなもんだという暗黙の常識に疑問を投じる。「値決めは経営」であり、お客様が喜んでくれる最高の値段を見つける。経費も「これが限界」とあきらめるのではなく、人間の無限の可能性を信じて限りない努力を行う。
→各製造工程のリーダーが売上を実感できるようにしなければ、売上を最大にしようという意欲が生まれるわけはない。
〇「時間当たり採算」
付加価値÷総労働時間
付加価値=売上高ー労務費以外の経費(材料費、減価償却費など)
〇「品質の関所」
各工程間で決められた品質を満たしていないと、後工程へは流出しない。これにより、各工程で品質が作りこまれていく。
〇立場の変化こそ経営者意識の始まり
小さなユニットに分けて独立採算にすると、リーダーが自分のユニットの状況を正しく把握できる。→自分の経営者の一人だという意識を持つ
〇アメーバの最小単位
①収入を得るために要した費用を算出できること、②ビジネスとして完結できる単位であること、③会社全体の目的、方針を完遂できること
→アメーバの組織作りは、アメーバ経営の要諦
〇アメーバ間の値決め
各アメーバの仕事をよくわかっている経営トップがアメーバにかかる経費や社会的常識から正しく評価するべきもの。だから、判断する人は常に公正、公平であり、みんなを説得するだけの見識を持ち合わせていなければならない。
〇個の利益と全体の利益の葛藤
個として自部門を守ると同時に、立場の違いを超えて、より高い次元で物事を考え、判断することができる経営哲学、フィロソフィを備える必要がある。
→経営トップ、事業部長などは、アメーバ―リーダーたちが納得するような正しい判断基準とすばらしい人格を兼ね備えていなければならない。すなわち、フィロソフィーを体得していることが重要となる。
アメーバ経営は、フィロソフィーと部門別採算が結びついており、一体不可分の仕組みです。特に、部門間の利害を調整する上司の判断力がカギになるこの仕組みを動かしている人づくりが素晴らしいと思います。
仕組みを動かす人づくり。長期間かかり一筋縄ではいかないからこその真似されない競争優位性を築いているのだと思います。