MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ティール組織(フレデリック・ラルー)

ティール組織』(フレデリック・ラルー)(◯)

 買ってから読み始めるまでに挫折の連続で、結局1年近くかかってしまいました。何と言っても500頁超えのボリュームと初めての概念への戸惑いに圧倒されます。。。この突破法としておすすめなのが、①YouTubeで著者の講演を聞く、②本書(イラスト解説版)を読む、③『ティール組織』(本書)を読むという順番です。これでかなり流れができて読み切ることができました。

 著者によれば、「一人のミドルマネジャーが自分の担当部署でティール組織的な観光を導入するのは可能か?」という問いに対しては、「無駄な努力はやめた方が良い」「達成型(オレンジ)の文脈の中で自分の部門になるべく健全な環境を作るよう努力できるかもしれない」とのこと。本書のような組織を作り出すことは難しいかもしれませんが、本書を参考に組織をどのように変化させていくのが良いのかということを考えるきっかけとして、とてもおもしろい本だと思いました。

 

(参考)「ティール組織」著者にによる講演(YouTubeより)


Reinventing Organizations

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯過去と現在の組織モデル

①衝動型(レッド)組織

・狼の群れ、ギャング、マフィア

・高圧的なリーダー

・対人関係に力を行使し続け、それが人と人を結びつける要素。


②順応型(アンバー)組織

・大半の政府機関、公立学校、宗教団体、軍隊など

・家父長的な権威主義

・運営方式に大きな進歩

1)組織は中長期で計画を立てられるようになった

⇨プロセスの発明・適用により過去の経験を未来に複製できる。

2)規模を拡大できる安定した組織構造を作れるようになった

⇨厳格な階層を保つため指揮命令系統がはっきりする。


③達成型(オレンジ)組織

・現代のグローバル企業

・組織を機械に見立て、経営を光学的な視点から眺める。

・3つの突破口

1)イノベーション

⇨まだ起こっていないがいつ起こるかもしれない「可能性」の中に生きている。

2)説明責任

3)実力主義


④多元型(グリーン)組織
・階級を廃止して、全員に平等な権力を与える。「従業員は同じ家族の一員」。

・3つの特徴

1)権限の委譲

2)価値観を重視する文化と心を揺さぶるような存在目的

3)多数のステークホルダーの視点を生かす

 

◯進化型(ティール)組織

・リーダーは父親のような存在ではないし、奉仕する存在でもない。自分の組織を「生命体」や「生物」ととらえている。

・3つの突破口

1)自主経営

 階層やコンセンサスに頼ることなく、仲間との関係性の中で動くシステム

2)全体性

 自分をさらけ出して職場に来ようという気にさせるような一貫した慣行を実践

3)存在目的

 組織のメンバーは、将来を予言し統制しようとするのではなく、組織が将来どうなりたいのか、どのような目的を達成したいのかに耳を傾け、理解する場に招かれる。

 

 

◯自主経営/組織構造(ビュートゾルフの事例)

・チームには、上司・部下といったピラミッド状の序列はない。

・地域マネジャーは存在しないが「地域コーチ」がたくさんいる。

ティール型組織の視点からすると、役職はエゴにとっての蜜のようなもの。

・役職がないということは、全員が平等で全員が同じ仕事をする、ということを意味しない。業務範囲が狭い仕事もあれば広い仕事もある。

 

◯自主経営/プロセス(AESの事例)

・原則として、組織内の誰がどんな決定を下しても構わない。ただし、その前に全ての関係者とその問題の専門家に助言を求めなければならない。決定を下そうという人には、一つ一つの助言を全て取り入れる義務はない。目的は、全員の希望を取り入れて、内容の薄くなった妥協を図ることではない。しかし必ず関係者に助言を求め、それらを真剣に検討しなければならない。判断の内容が大きいほど助言を求める対象者が広がり、場合によっては、CEOや取締役の意見も求めなければならない。

・聞き発生時に助言プロセスを一時的に停止する必要があるときには、2つの指針を顕示すれば自主経営への信頼を維持できる。

トップダウンによる意思決定の及ぶ範囲と時期を完全に透明にする

②危機が去った後も権力を行使し続けるのではないかと疑われるような人物を指名しない

・【解雇】自主経営組織では、人々は解雇される前に自ら辞めていく。会社側は「も十分です」というケースもあるにはあったが例外中の例外。自主経営という仕組みの中では「ここは自分のいる場所ではないかもしれない」と人々が自然に感じるようになるから。

・【報酬・インセンティブ】一年に一度、社員たちは同僚全員についての評価を調査票に記入する。調査票に記載されているのはわずか2問。①この人は私より多く、あるいは少なく会社に貢献している(評価は3〜△3)、②この人には私を評価できる十分な材料または根拠がある(評価は1〜5)。社員は、助言プロセスを用いて周囲の仲間たちからの助言や勧告を求めなければならないにせよ、自分の給与を自分で決めていた。こうすると人々は自分自身の会社への貢献度を評価し、それを同僚たちの前で証明する責任を一身に負うことになる。

 

◯全体性を取り戻すための努力/一般的な慣行

・価値観の日:歌や踊りなどでにぎわうイベント

・価値観ミーティング:2か月に1度話し合う

・年次調査:年1度。価値観と基本ルールの議論。

・沈黙の日:普段とは違う気づき

ストーリーテリング:自分の物語を話す、毎朝good or newを話す。

・感謝の日:毎年1日休日を取り会社から2万円もらって誰かに贈り物をして皆の前で物語を発表する。

・ミーティング:チェックインで始まり、チェックアウトで終わる。

 

◯全体性を取り戻すためのプロセス/人事プロセス

・【採用】面接を行うのはインタビューの訓練を受けた人事担当者ではなく、将来のチームメイト。判断基準は、その候補者と毎日一緒に働きたいと思うか。

・【職務記述書】役職や職務記述書がないと、自己や他者を、何よりもまず一人の人間として捉えるようになる。そしてその自分が、たまたまある期間中に特定の役割を果たすことに情熱を注ぎ込んでいる。そう考えるようになる。

 

ティール組織の特徴

・組織構造:自主経営。必要に応じコーチがいくつかのチームを担当。

・スタッフ機能:大半は各チームや自発的タスクフォースで果たす。

・調整:経営チームによるミーティングはなし。必要が生じたときに調整。

・プロジェクト:極端に簡素化されたプロジェクト管理。マネージャーなし。

・役割:役職なし。流動的できめ細かな役割が多数存在。

・意思決定:助言プロセスに基づき完全分権化。

・危機管理:透明な情報共有。

・購買・投資:誰でもいくらでも使える。助言プロセスを尊重。

・情報の流れ:財務や報酬を含め、あらゆる情報はいつでも入手可能。

・紛争の解決:複数の段階を踏む正式な紛争解決の仕組みがある。

・役割の配分:昇進はない。合意に基づく流動的な役割の再配分がある。

・実績管理:チームのパフォーマンスに注目。個人評価は同僚間の話し合い。

・報酬:他の社員とのバランスを考え自分で決める。賞与なし。利益分配あり。

・解雇:仲介者の入る紛争解決メカニズムの最終段階。

・目的:組織は自らの存在目的を持った生命体

・戦略:自主経営ができる従業員の集団的知性から自然発生的に現れる

・意思決定:組織の存在目的に耳を傾ける、誰もが感知器、大集団でのプロセス

・競合他社:競争という概念は組織行動に無関係。共存追求。

・成長・市場シェア:存在目的の達成に寄与する限り重要

・利益:正しいことをしていると事前についてくる後続指標

・マーケ:インサイドアウト。何を提供するかは存在目的によって定まる

・予算:感じ取ることと反応、予算・予実分析・目標数値なし。

サプライヤー:存在目的への適合度で選択。部外者からの提案歓迎!

・気分管理:どのような気分が組織の存在目的に資するかを常に感じ取る。

・個人の目的:組織目的との交差点を探るために採用・教育・評価制度がある。

 

 正直わかりにくいところもたくさんあると思いますが、組織のあり方に新しい発想を投げかけるポイントが多い一冊でした。これだけでかなり勉強会ができそうな感じです。事例企業に勤めている人が知り合いにいらっしゃれば是非とも捕まえてお話を聞いてみてはいかがでしょうか。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

f:id:mbabooks:20190123000405j:plain