『ナラティブ・セラピーって何?』(アリス・モーガン)
ナラティブ・セラピーは、「再著述」の会話、「リ・ストーリング」の会話として知られているカウンセリング手法です。人は人生を生きる時、経験に意味を与え続けている。ストーリーは特定の出来事を一つひとつ順につなげ、それらに対して意味を与えることによって作り上げられています。本書では、ストーリーを通して、人生を理解し人生を生きるナラティブ・セラピーの読みやすい入門書です。
(印象に残ったところ‥本書より)
〇ストーリーとは、
・①出来事が、②(過去・現在・未来の)時間軸上で、③連続してつなげられて、④プロットになったもの。
⇒セラピストは、相談者の興味が何か、そして、ストーリーの旅がいかに相談者の好みと一致しているか理解する。そのため、絶えず好奇心を持ち、セラピストが答えを知らない質問をしていく。
・質問例
■この会話はあなたにとってどんな感じがしますか?
■このことについて続けて話をしましょうか?それとも〇〇について話した方がいいですか?
■あなたはこのことに興味を感じますか?このことは、時間を割いて話した方がいいでしょうか?
■このことについて、私がさらに質問をすることにきょうみはおありですか?それともXかYかZについて焦点を当てたほうがいいでしょうか?
・相談者自身によって同定され、相談者自信が生きていきたいと考える人生に沿ったストーリー。「私は〇〇だ」と考える、その人の自己像。
・数多くある意味付けを覆い隠してしまう「薄い結論」が確立すると、問題のしみ込んだドミナント・ストーリーを支持する証拠集め(過去の事実集め)が容易になる。
・ある人が「悪い人」でも「絶望的」でも「トラブルメーカー」でもなかったことがあったとしても、それらは目に入らなくなる(視野が狭くなる)。
ナラティブ・ストーリーとは異なるもうひとつの型にはまらないストーリー。
〇外在化する会話
・外在化する会話は、人が援助を求めている問題をその人のアイデンティティから切り離して話す手法。
・人はセラピストに援助を求めるとき問題が本人の一部ないしはその人の内部になるとみなしたうえで、問題について語るもの。
⇒「私はウツっぽいんで、どこへも出かけたくありません」「私はやる気がなく、何をするにも気力が湧きません」「私は心配性です。何か新しいことをするときはいつも不安になります」
⇒これらの「内在化する会話」は、問題をその人の内部に位置付けるもので、たいていの人々の人生に悪影響を及ぼし、「薄い結論」を招いてしまう。
⇒問題を外在化する
■「問題があなたのエネルギー・レベルに影響を及ぼしているのですね」
■「うつが外に出かけることを難しくしているんですね」
■「心配性は、あなたの新しい試みにストップをかけてるのですね」
⇒問題を部屋の中のどこか、例えば人の肩の上とか、空いているイスの上などにある「物体」として想像してみるとよい。
⇒問題を擬人化する(問題に名前を付ける)
■「あなたが問題に名前を付けるとしたら、どんな名前がいいと思いますか?」
■「あなただったら、この問題をなんと呼ぶでしょうね?ウツか心配、それとも罪、自己不信というように呼ぶのでしょうか?あなたが話している間に、頭に浮かんだものですけど、どう思いますか?」
〇何を外在化できるのか
不安・心配・恐怖・罪悪感・ウツなどの感情は、外在化する会話の焦点となる。外在化により、問題はもはや、アイデンティティであるとか、自分という人間についての「真実」をその人に語りかけることがなくなる。
問題が独立したものと考えられるにつれ、誰を非難すべきという論争はあまり意味のないものとなる。誰のアイデンティティにも問題が位置付けられないとき、協力や挙動作業がより可能になる。
■「結局、罪悪感は、あなた自身について何を思いこませようとしているのでしょうか?」
■「となると、恐怖はどのようにして、あなたが外に出かけるのは安全ではないと説得したのですか?」
■「妬みはどのくらいの期間、あなたと友人の仲を邪魔しているのですか?」
■「パートナーとしてのあなたに、ケンカは何を思いこませたのですか?」
■「二人の関係において、非難はあなたたちに何をさせたのですか?」
■「葛藤は、お互いの関係についてあなたに何を信じ込ませているのでしょうか?」
■「口論は、あなたの会話をどの程度邪魔しているのですか?」
〇影響相対化質問
・影響相対化質問は、問題の歴史をたどるうえで有効。
■「6カ月前にあなたの人生10のうち、問題に支配されていた領域はどれくらいでしたか?」⇒「1週間前は、問題がどれだけ人生を支配していたと言えますか?」
・人生における問題の歴史をたどることによって、問題に対する別のストーリーを考慮する余地が開かれれる。問題を時間という文脈の中に置くと、問題が変化するものと考えられ固定されたもののようには感じられなくなる。時々に応じて問題の影響が大小様々であることが認識される。問題が時に応じて変化しているものだと気づいたとき、人はホッとするもの。
半ば自分の思い込みで過去の事実をつなぎ合わせて出来上がっている、ドミナント・ストーリー。それは一つの見方であって、別の見方(ストーリー)もあるということに気付くことが、未来への行動の変化に繋がるという考え方。事例を追いながら読んでいくと、自分にもあるなあと実感を持って読めました。まだまだ、難しい領域ですが、掘っていくと自分の人生にも活かしていけそうです。
- 作者: アリスモーガン,Alice Morgan,小森康永,上田牧子
- 出版社/メーカー: 金剛出版
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
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