『プロセスエコノミー』(尾原和啓)(◯)
最近売れている本なので読んでみました。著者は、フューチャリストで、これまでにも『アフターデジタル』『モチベーション革命』『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』など、ベストセラー多数の著作家でもあります。本書は、SNSで流行しても、瞬く間にコピーされ、似たようなもので溢れてしまう世の中において、最終成果物ではなく、コピーされない、プロセス自体を売るという着眼からプロモーションを考える一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯なぜプロセスに価値が出るのか
・「幸せの5つの軸」(マーティン・セリグマン)
①達成
②快楽
③良好な人間関係
④意味合い
⑤没頭
・役に立つより意味がある
コンビニの店頭。ハサミは1個あれば十分だが、タバコは何十種類もある。それは、「役に立たないけど、意味があるから」。役に立つものは1つでいいが、意味があるものは、ストーリーに応じて1つでなくても構わない。むしろ多様性があり、価値が高い。
・圧倒的に高いグローバルハイクオリティを目指すか、特定のコミュニティにおいて支持されっるローカルロークオリティを目指すかの2択で中途半端はない(チームラボ:猪子寿之さん)。
・なぜアウトプットよりもプロセスに価値が生まれるのか?「あらゆるものは6Dになる」(イノベーターの虎の穴)
①Digitized(デジタル化)
②Deceptive(潜在的)
③Disruptive(破壊的)
④Demonetized(非収益化)
⑤Dematerialized(非物質化)
⑥Democratized(民主化)
→6Dの進展によって、あらゆる生産コストは一気に下がり、2035〜2040年にはアウトプット(成果物)の売買だけの経済は終わりを迎えるだろう。
◯人がプロセスに共感するメカニズム
・「Yes,we,can」「Change」(オバマ元大統領)
自分がここにいる理由を語り、私たちがここにいる理由を聴衆に投げかけ、今行動を起こすべき理由を訴える。理論で人生のプロセスを共有するうちに、自分の中にあるストーリーが、他者のストーリーにどんどん重なる。自分のプロセス(生き様)を開示し共有することで、個の熱狂が集団の熱狂へと広がっていく。
・「Me We Now」理論(堀江貴文さん)
自分の話をして距離を縮める(Me)、共通点を見出して連帯感を作る(We)、自分のやりたいことを説明する(Now)。まずこの「Me We Now」の骨格を考えて、エピソードを書き足していく。
・「システム1」(直感的プロセス)「システム2」理論(論理的プロセス)(ダニエル・カーネマン)
人間が新しい変化を起こす時には、理屈や正論を並べて論理的にアプローチしても簡単にはいかない。ワクワクを共有し、キュンと動く感情脳にアプローチした方が効果的。感情脳に訴えるのは、ストーリーであり、ナラティブ(話術、語り口)。
・ファンの支持を強くする3つのアップグレード(佐藤尚之さん)
①共感→熱狂
②愛着→無二
③信頼→応援
◯プロセスエコノミーをいかに実装するか
「effectuation」
①Bird-in-Hand(自分の手の中にいる鳥)
変化が激しい時代は、最初からゴールを決めると選択肢を狭めてしまい、大きな成功から遠ざかる。だから自分の手の内にある、楽しいこと、幸せだと思うことから始めよう。
②Affordable Loss(許容範囲内の失敗)
失敗は当たり前。最初から許容範囲の中で失敗を設計する。
③Patchwork Quilt(パッチワーク・キルト)
普段であれば握手しないような人と握手し、コラボする。パッチワークのように新しいムーブメントが広がっていく。
④Lemonede(レモネード)
偶然が味方し予期せぬ成功に辿り着くこと。レモン単体ではあまり使い道がないが、ハチミツや氷水と混ぜることで美味しいレモネードができあがる。
⑤Pilot-in-the-plane(飛行機のパイロット)
祭りの中心で操縦桿を握るお調子者がいるおかげで、周りの仲間は「踊らにゃ損損」と思い切り楽しめる。
・情報をフルオープンにして旗を立てる
もはや「新しい情報を自分だけが見つけた」と過信すること自体がアウト。情報それ自体に価値はない。むしろ手持ちの情報をシェアして仲間を作り、プロセスを惜しみなく開示してしまった方が、結果的に更なる情報が集まってきて、自分にとって得。
◯プロセスエコノミーの実践方法
・Why(なぜやるのか、哲学、こだわり)を曝け出すこと。What(アウトプットの内容)だけでは差別化できない。
・正解が見えない中で大事なのは、Whyへの腹落ち感。
・楽天で人気店になるための3つの法則
①マイクロ・インタレスト(自分ならではのこだわり)
②コミットメント(やりきる責任感)
③弱さの自己開示(ちょっとした失敗)
・共感には、シンパシーとコンパッションの2種類がある
①sympathy:つらそうにしている人に同情して応援する。
②compassion:「たとえ自分の身を焦がしても、この目的を実現したい」という人に、「私も一緒に歩きます」と伴走してくれる人が現れる。
・ジャングルクルーズ型(挑戦プロセスの目撃者にする)、バーベキュー型(みんなで共にプロセスを作り上げる)
なかなか、アウトプット(成果物)至上主義から抜け出す意識が作れませんが、意識をプロセスに置いてみたいと思う内容です。価値がないと思いがちなプロセスに実は価値があると思えるだけで、発想が転換する面白い着眼だと思います。