『LIFE SHIFT 2』(アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン)(◯)
前作『LIFE SHIFT』は100年時代を生きるというインパクト、続編の本書は、具体性と自分事化。どちらも参考になる良書です。前作で従来型のライフプランで100年時代を生きることは難しく、「学習→仕事→老後」というパターンの仕事の期間が長期化しているという点を学び、本作では、「でどうする?」という観点が問われています。登場人物の例を参考にして、「自分なら100年時代をどう生きるか?」を考えるための一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯寿命の延び
・20世紀はじめにイギリスで生まれた女の子の平均寿命:約52歳
→20世紀末には81歳→2010年には83歳
・中国では、2050年までに65歳以上の人口が4億3800万人を突破する見込み。
・日本では、2050年までに国民の5人に1人が80歳を超すと見られている。
・現在のベストプラクティス平均寿命は、日本人女性の87歳。ここ100年以上、ベストプラクティス平均寿命は、10年間に2〜3年というペースで上昇してきた。
→このペースだと、今先進国で生まれた子供は、100歳以上生きる確率が50%を超す。
・こうした連鎖は、国家を破産させ、年金制度を崩壊させ、医療費を増大させ、経済を弱体化させる。
・新しいテクノロジーと同じくらい、新しい社会のあり方も広く普及し、深く浸透し、大きな変革をもたらす必要がある。
→長寿化の影響に対処する上で、社会的発明が切実に必要とされている分野は、①老後資金の確保、②医療の提供、③世代間の公平。「どのくらいの年齢まで働くのか」「老いるとはどのようことか」について新しい考え方を形作り、企業が根深い固定観念を捨て、高齢の人たちの能力と意欲に関する思い込みを改める必要がある。
◯人生のあり方を設計し直す
・問題へ対処するための3要素
①物語
「私はどのような仕事につくのか」「そのためにどのようなスキルが必要になるのか」「どのようなキャリアを築くのか」「老いるとはどのような経験なのか」という問いに答え、自分の人生のストーリーを紡ぎ、そのストーリーの道筋を歩むこと。
②探索
「長寿化によりキャリアの選択肢が広がる中、どのように選択肢を検討するのか」「そのために必要なスキルは、どのようにして身につけるのか」「どのような変化を試みて、これまでより多くの移行を経験する人生をどうやって歩んでいくのか」という問いに答え、人生で避けて通れない移行のプロセスを成功させること
③関係
「家族の在り方が変わりつつある状況に、どのように対処するのか」「子供の数が減り、高齢者の数が多くなる世界は、どのようなものになるのか」「世代間の調和を実現するために、私や他の人たちは何ができるのか」という問いに答え、深い絆を育み、有意義な人間関係を構築して、維持すること。
◯すべての人が光り輝くために変わるべきこと
①企業
直線的なキャリアを前提にして、下の職階から上の職階へ昇進していく仕組みを採用している場合、長期的にわたり役職に留まる人が増えると、昇進が滞るようになる。企業は垂直的昇進から水平的異動へと発想を転換すべき。具体的には、社員がスキルを活かせる場をいくつも用意したり、同格の役職に移って活躍する機会を作ったりすればいい。
②教育機関
生涯にわたって学び続けることを考えると、人生の序盤で受ける教育では、特定のスキルや知識を身につけることよりも、ずっと学び続けるための土台作りに重点をおいた方がいい。これからの教育に求められるものは、子供のうちから必要な情報を見つけ、曖昧で不確実な状況に対処し、発見したことを分析・評価して問題を解決する力を育むこと。
③政府
失業、劣悪な雇用、所得の不安定、病気といったリスクから人々を守ることが政府の重要な役割になる。
1)「職」ではなく「人」を守る
2)不平等を生み出さない
3)「劣悪な雇用」から人々を守る
4)悪い経済的結果を防ぐ
5)健康面での悪い結果を抑制する
また、長寿化による好ましい結果を促進するために政府が取り組みべき課題は3つ。
1)将来必要となるスキルを身につけるのを助ける
2)健康的に年齢を重ねることを後押しする
3)長寿経済を築く
◯複利の魔法を身につける
・人生が長くなれば恩恵も受けやすくなる。長期投資をすればするほど、複利がたくさん仕事をしてくれる。
・複利の魔法がものを言うのは、資産運用だけではない。複利は、スキルや健康や人間関係の投資など、時間を味方につけられるタイプの他の投資でも有効。